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ア・フィレッタ

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o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2010/07/21   13:20
更新
2010/07/21   13:29
ソース
intoxicate vol.86 (2010年6月20日発行)
テキスト
text:松山晋也

地中海の伝統を受け継ぐア・カペラグル―プがいよいよ来日

地中海のコルシカ島の男声合唱グループ、ア・フィレッタが、この8月下旬から9月にかけて日本公演を行う。コルシカの音楽といえば、20年ほど前にちょっとしたブームになったことがあった。折からのワールド・ミュージック・ムーヴメントの中、〈内なるワールド・ミュージック〉としてフランスで「再発見」され、Silexなどのレーベルから立て続けにCDが出たのだ。

商業的成功も含め、その象徴的として挙げられるのが、Les Nouvelles Polyphonies Corsesなるプロジェクトの同名アルバムだ。これは、かのエクトール・ザズーが、地元の伝統歌手の歌を素材にあれこれと手を加えたもので、ジョン・ハッセルや坂本龍一なども参加していた。もちろん、そういった作り物ではない、素の伝統音楽作品やグループもそれ以前から存在している。60年代後半から70年代にかけて高まったローカリズムの中、コルシカでも、コルシカ語や伝統音楽の復興運動が起こり、島の若者たちの合唱グループが次々と結成されていく。男声グループのイ・ムヴリニやタヴァーニャ、女声だとドンニスラーナなどがよく知られているが、ア・フィレッタ(コルシカ語での発音はア・ヴィレット)もそうした気運の中で生まれた一つである。

結成は1978年。中心人物は、なんと当時まだ13歳だったジャン=クロード・アクアヴィヴァ。グループによっては、ギターやシンセなど楽器を用いるものもあるが、ア・フィレッタの場合は、結成以来一貫して、無伴奏だ。81年のデビュー作から08年の最新作『Bracana』まで、これまでに発表されたアルバムは10数枚にも及ぶ。コルシカの伝統合唱は、牧羊での作業歌をベースに、グレゴリオ聖歌などのキリスト教音楽、更にはマグレブ/アラブ系の装飾やコブシが加味されてできあがったものと考えられているが、ア・フィレッタは、そうした伝統的スタイルの根幹を維持しつつ、オリジナル曲も作り、また実験演劇やモダン・ダンス等とのコラボレイションにも積極的だ。まさに、進化する伝統の良き見本と言っていいだろう。

ア・フィレッタ来日公演2010

8/25(水)銀座・王子ホール
8/27(金)愛知・三井住友海上しらかわホール
8/28(土)兵庫・伊丹アイフォニックホール
8/20(金)~22(日)新潟・佐渡島
    アース・セレブレーション2010出演
http://www.plankton.co.jp/