己のギタリズムに立ち返るテン年代のカルロス・サンタナ
往年のファンにとってはむせび泣くギター・ヒーロー、近年のリスナーにしてみれば豪華なゲストの横でソフトに伴奏するコラボおじさん……という感じでしょうか。そんな物言いはいささか失礼にしても、時代ごとに作品の舵取りが違うわけですから、カルロス・サンタナという人やサンタナというプロジェクトの意味合いが世代によって違うのも無理はないかもしれません。しかしながら、このたび登場したニュー・アルバムは、そんなある種のギャップに見事な橋を架ける試みとなるものでしょう。
そのタイトルは『Guitar Heaven: The Greatest Guitar Classics Of All Time』。ギター映えするクラシック・ロックの名曲にそれぞれ豪華なゲスト・ヴォーカリストを迎えてカヴァーするという、企画モノとしては最高のコンボが実現したのです。もちろん主旨が主旨だけあってカルロスの奏でるギターもいつも以上に歌いまくり、泣きまくり。往年のファンもエモーショナルなプレイに酔いしれるに違いありません。全体の統轄は40年に渡ってカルロスをバックアップしているクライヴ・デイヴィス、サウンド・プロデュースはハワード・ベンソンとマット・セレティックが半分ずつを手掛けるという安定感バリバリの体制。これだけでもう完成度の高さは言わずもがなでしょう。
注目すべきポイントはゲストの顔ぶれであり、同時に取り上げられている楽曲でもあります。それもただ安直なコピーの垂れ流しではなく、楽曲ごとにカルロスならではの繊細なフレージングが加味されているのも素晴らしいんです。例えばビートルズ(というかジョージ・ハリソン)の“While My Guitar Gently Weeps”ではあのフレーズを弾いていなかったり、新しい驚きも組み込んだリアレンジの手腕も聴きどころでありましょう。さらに日本盤ボーナス・トラックとして、浅井健一がZZトップ“La Grange”のカヴァーに挑んでいるのも贅沢すぎる! 別項に掲載されているジャケの1枚にでもピンときたらチェックしてみましょう!