この名義での活動終了を宣言し、締め括りのベスト盤が登場! 日本のハウス・シーンに影響を与えた楽曲を振り返りながら、半沢武志の次なる展開に期待しよう!
2000年代の日本にクラブ・ミュージックのサウンドを浸透させ続けてきた半沢武志が、FreeTEMPO名義での活動に終止符を打つことを宣言。唐突すぎて困惑している間もなく、キャリア総括盤『FreeTEMPO BEST ALBUM "TENSE"』が届けられます。というわけで、ここでは彼の10年に渡る足跡を振り返ってみましょう。
仙台出身にして現在も同地を拠点に活動するFreeTEMPOは、2001年にイタリアはイルマ発のコンピ『La Douce Party 5th Anniversary』へ提供した“Montage”で注目を集めます。その後2002年にミニ・アルバム『Love affair』でCDデビューを果たし、クラブ・サウンドをベースにしつつ美しいメロディーを織り込む聴き手を選ばないポップセンスが評判を呼んで、クロスオーヴァーな人気を獲得しました。当初はソウルやブラジル音楽からの影響が色濃い、いわゆるクラブ・ジャズ的なサウンドを展開していましたが、作品リリースを重ねるごとに4つ打ちの比重を高め、エレクトロの要素も導入。当時のハウス・ブームとシンクロしながら独自の地位を確立しました。
また、昨年DJ活動を一旦止めたが、その時期と前後して自身の作品でもダンスに縛られないアプローチが目立ちはじめ、活動のフィールドにおいても音楽性においてもクラブ・ミュージックの枠から脱却。それまで以上に広い地平へ向かっているように感じられました。プロデュース・ワークの幅も広がり、近年では2008年にSAWAの作品を全面的に手掛けたほか、映画音楽の分野にも進出しています。
さて、今回のベスト盤ですが、こちらは各作品からまんべんなく選ばれた楽曲がほぼ時代順に並んでおり、サウンドの変遷が明快に浮き彫りになる一枚になっています。先述したこの名義での処女曲“Montage”を本人の作品に初収録しているほか、初回盤には未発表曲も登場。これが非常にシンプルな歌ものとなっており、FreeTEMPO封印後に半沢が進む道を示唆しているようにも思えますが……果たして?