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4AD evening ~ARIEL PINK'S HAUNTED GRAFFITI、DEERHUNTER、BLONDE REDHEAD @ 渋谷O-EAST 2011年1月24日(月)

連載
ライヴ&イベントレポ
公開
2011/02/02   18:02
更新
2011/02/02   18:52
テキスト
文/小泉いな子

 

4AD evening
Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

80年にロンドンを拠点として設立され、31年を経過していまや世界屈指のインディー・レーベルまで成長した4AD。80年代はバウハウスやコクトー・ツインズらゴシック・バンドを輩出し、90年代はピクシーズやステレオラブらオルタナティヴ勢が活躍。2000年代からはTVオン・ザ・レディオやギャング・ギャング・ダンス、ベイルートら旬のUSバンドが在籍している。常にアート寄りの審美眼に適ったバンドを推していく姿勢を貫き、しまいには〈インディー・レーベルの良心〉とまで言われる素敵なレーベル。そんな4ADを背負って立つ3バンドがここ日本で共演したという夢みたいなイヴェント〈4AD evening〉をレポートします。

 

ARIEL PINK'S HAUNTED GRAFFITI

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

トップバッターはアリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティ。〈きっと10分は開演が遅れるだろう〉という予想を裏切り、19時ちょうどにメンバーが登場。ちょうどUSで「Late Night With Jimmy Fallon」という番組に女装で出演し、“Round And Round”を歌ったという衝撃的な映像を観た直後だっただけに、心のどこかで期待していたら、なんとメンバーがスパンコールや派手色を纏った女装で登場! レーベル担当者によると、番組出演後NYからLAの空港に直行してそのまま大阪に来たため、女装の衣装しかないとのこと(笑)。

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

1曲目は80年代のAORを彷彿とさせるナンバー“Beverly Kills”!! 突如始まった、場末のスナックのような濃ゆいステージに呆気にとられる。アリエルなんてパンツからはみ出したぽっこり腹をサスペンダーで無理矢理押さえた芸人顔負けの出で立ちで、神経質にステージをチェックしながら落ち着きなく歌う姿は、変人そのもの。続く“L’estat”では、ししおどしのように指をポンッと口から出したりと芸コマな一面も。

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

3曲目からは宅録時代の曲へ。まずは『House Arrest』からの“Gettin' High In The Morning”をプレイ。意外と演奏がしっかりしているうえ、キーボード兼ギターのケニー・キーズのコーラスが冴えていたりとパフォーマンスは上々だ。その合間のMCで、アリエルは「4ADフリーク・ショウ!」とみずからを解説(?)するも、〈自分で言っちゃうのかよ〉と会場はややウケ。

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

その後は最新作『Before Today』を中心に演奏。お待ちかねの〈ナァ~ナナ~ナァ~♪〉こと“Round And Round”では嬉しすぎて、気恥ずかしい気持ちに。もちろん黒電話の音も入りつつ、メンバー全員によるサビのハーモニーは忘れられないほどグッときた。間髪入れずに“Bright Lit Blue Skies”へ流れたのが彼らのステージの最大のハイライトで、アルバムの名曲を続けざまに演奏するなんて反則!! 最後はまだメンバーが演奏しているのに、貴重品が入っていると思わしき黒のトートバッグを肩に掛けて、なぜかキレ気味に退散していったアリエル……かなりナゾだよ!!

 

セットリスト

1. Beverly Kills
2. L'estat
3. Getting' High In The Morning
4. Credit
5. One On One
6. The Spain City
7. Fright Night
8. Menopause Man
9. Round And Round
10. Bright Lit Blue Skies
11. Butthouse Blondies
12. Little Wig

 

DEERHUNTER

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

そしてセットチェンジをしている間に客席前方はどんどん人口密度が増し、この日の集客率No.1と想像されるディアハンターが登場。1曲目は新作『Halcyon Digest』から“Desire Lines”。ロータス・プラザとしてソロでも活躍しているロケット・プントがヴォーカルを取る。繊細で温かい旋律を奏でるミッドテンポのギターと、美しいメロディーに乗せたピュアな歌声が重なっていき、気付かないうちに白昼夢のようなディアハンターの音世界に飲まれていく。音がデカいせいか、前回の来日と比べてスケールがケタ違いに大きく感じる。

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

そしてハイライトは“Nothing Ever Happened”のノイジーな轟音ギターのループから“Helicopter”への流れ。優しい旋律とブラッドフォード・コックスの純真無垢な歌声は会場全体を癒すかのように優しく包み込み、もうあの瞬間はわれを忘れるほどに感動して、生きてて良かったと泣きそうになった。ちなみに翌日のアリエル単独公演ではアンコールにブラッドフォードが参加。そしてロケット氏にライヴの感想を伝えたところ、「夏にフェスで来日するかも」とのこと。前回の来日公演と比べてここまで成長していたなんて予想外だったし、今回逃した人はぜひ!

 

セットリスト

1. Desire Lines
2. Hazel
3. Don't Cry
4. Revival
5. Little Kids
6. Memory Boy
7. Nothing Ever Happened
8. Helicopter
9. He Would Have Laughed
10. Circulation

 

BLONDE REDHEAD

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

ラストは結成18年(!)を迎えるNYのアート・ロック・バンド、ブロンド・レッドヘッド。USのフェスではレッチリの裏でライヴするほどの大御所です。炎のように見えるライトをステージの至るところに配置したミステリアスな演出がトリに相応しく、そこへ白い衣装で揃えたメンバーが登場。新作『Penny Sparkle』から2曲披露し、〈今日は昔の曲をやらなそうだなー〉と予想していた矢先に “In Particular”“Falling Man”を投下。『Melody Of Certain Damaged Lemons』『Misery Is A Butterfly』の曲が聴けるなんてツイてる!

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

全体的に暗い会場のなかで神秘的に灯る炎の照明が幻想的で、美しくも儚いサウンドと相まってもう感無量。ミニスカートでくねりながら踊るヴォーカル兼ギターのカズ・マキノの妖艶な美脚には女の私もつい見入った。ライヴ中盤で「ここ2か月間、ずっと声が出なかったんですけど、日本に来てある人に会ったら声が出たんです。その人はいま、会場に来ています」と言ったのがバンドの大事な場面を見たようで印象的だった。

 

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Photo by Tadamasa Iguchi(Qetic)

 

とどめは切ないピアノの旋律で始まる“23”。文句なしにこの日の真骨頂で、退廃的なのにドリーミーな楽曲には全身が持ってかれたほど。早くも〈今年のベスト〉と言い切れる素晴らしいステージでした。だってもう、セットリストが神すぎる!! 終演後、どんどん人が帰っていくなかでもアンコールは鳴り止まず、最後に“Spain”を特別に披露。

出演した3バンドとも、予想を遥かに凌駕した素晴らしいライヴでした。名付けて〈4ADフリーク・スペタクル・ショウ〉。企画してくれたcontraredeさん、ありがとう!

 

セットリスト

1. Black Guitar
2. Here Sometimes
3. Dr.Strangeluv
4. Spring & By Summer Fall
5. Oslo
6. Will There Be Stars
7. In Particular
8. Falling Man
9. Not Getting There
10. Melody Of Three
11. 23

―アンコール―

12. Spain

 

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