STEPS AHEAD 『Steps』 Elektra Musician/ワーナー(1983)
当時の〈クロスオーヴァー〉というジャンルの呼び名がもっともよく似合う、ステップス・アヘッド最後のアコースティック・セット作品。マイケル・ブレッカー~エディ・ゴメス~マイク・マイニエリ~ピーター・アースキンが、表面上は涼やかなサウンドの下で丁々発止とやり合う。そのなかを優雅に舞い、時に男たちを制するイリアーヌ・イリアスのピアノ……本作には無名だった彼女の才能を世に出したという功績もある。名曲“Islands”をはじめとする粒揃いの楽曲も魅力。
STEPS AHEAD 『Modern Times』 Elektra Musician/ワーナー(1984)
キーボードにウォーレン・バーンハートを擁し、シンセサイザーのシーケンスも多用するエレクトリック化へとバンドの方向性をシフト。アレンジに注力して、各人のインタープレイを美しいメロディーとアンサンブルの表現に集約させ、まさにその後流行するフュージョンらしいサウンドを作り上げたマイク・マイニエリの手腕が光る5作目。スムース・ジャズ界の筆頭ギタリストにして、現在はフォープレイで活動するチャック・ローブのゲスト参加もあり。
GAYLE MORAN 『Loved You Then...I Love You Now』 Warner Bros./ワーナー(1979)
70年代中期マハヴィシュヌ・オーケストラの名曲“Smile Of The Beyond”で美声を聴かせたキーボーディスト兼ヴォーカルのゲイル・モランが残した初のリーダー作。スタンリー・クラーク、ヴィクター・フェルドマン、そして夫君のチック・コリアが参加し、作品の要所を彩るコーラス・ワークにはメリサ・マンチェスター、アル・ジャロウも名を連ねる。しかしここで表現されているのは、ジョニ・ミッチェルにも通じる、孤高のポップ・ヴォーカル世界だ。
ARIF MARDIN 『Glass Onion』 Atlantic/ワーナー(1969)
アレサ・フランクリンからノラ・ジョーンズまでをプロデューサーとして手掛けたアリフ・マーディン、初のリーダー・アルバム(この日本盤リリースが記念すべき世界初CD化!)。マッスル・ショールズのリズム・セクションをメイン・バンドに迎え、グルーヴィンなアレンジが冴え渡る当時のヒット曲のインスト・カヴァーが満載。同じマーディンの手によるラスカルズのアルバムあたりの熱烈ファンならば必聴! 共同プロデューサーとしてトム・ダウドも参加している。
ARIF MARDIN 『Journey』 Atlantic/ワーナー(1974)
74年にリリースされた2枚目のリーダー作(今回が日本初CD化)。カヴァー・アルバムだった前作から一転、こちらは全曲をマーディン自身が作曲したコンセプト・アルバムとなる。〈都市〉と〈旅〉をテーマに、超豪華な凄腕セッション・プレイヤー多数を配したサウンドで表現された、まるで映画音楽のように映像喚起力の高いクロスオーヴァー・ミュージック世界。スティーリー・ダンの同時代作品にも通じるハイセンスなポップ・アルバムだ。
DARYL HALL & JOHN OATES 『Whole Oats』 Atlantic/ワーナー(1972)
アリフ・マーディンのセンス溢れるプロデューシング~ホーン&ストリングス・アレンジもピカリと光る、後のモダン・ポップ・デュオが72年に残した記念すべきファースト・アルバム。フィリー・ソウル・マナーとフォーク・ロック・スタイルをブレンドしたブルーアイド・ソウルの味わいは、キャリア最初期のこの時代ならではだろう。名盤の誉れ高い次作『Abandoned Luncheonette』(73年)がお気に入りという人なら迷わずゲットを!