マック10の発掘したグラッシーズ・マローンに早速コンタクトしたぜ〜
「マック10はいつも、俺を見てると昔の自分を思い出すって言うんだ。俺はもっと荒んでて、彼はもっとフライな感じだと思うけどな」。
そう語ってくれたのはグラッシーズ・マローン。ああ、オレらがここ数年期待してるコンプトン出身のラッパーさ。ゲームの率いるBWSで活動した後、メジャー契約するもレーベルが消滅、西海岸のレジェンドであるマック10主宰のフー・バンギン(HB)入りした苦労人なんだ。が、キャッシュ・マネー経由で出るはずのアルバムはずっと延期してやがって……そんなところにマック10とのコンビで『Money Music』を出したんだから盛り上がるしかねえよな!
79年生まれでラップを始めたのが22歳というからこの界隈では遅咲きだが、ハスリングの深みにハマりすぎて、ガキの頃はラップするなんて考えがなかったんだって?
「最後に逮捕された時は4〜5年ブチ込まれそうになったけど、神様が不思議な力で助けてくれた。その後に出会ったドクター・ドレーに、〈いままでやってきた悪事は一生分に足りるはずだぜ〉って言われて足を洗ったんだ」。
ジェイ・Zやスカーフェイスらを参考に腕を磨いてきた成果は、紆余曲折を経た『Money Music』にも現れてるぜ。タイトルは2人のイニシャルと掛けているのか?
「そんなふうに考えたことなかったけど、それもクールだな。このアルバムはマネーに関する内容をベースにしてる。〈俺はリッチだ!〉とかハンパな意味じゃなく、カネにまつわる真実を突いてるんだ。ディーラーやドープ中毒、稼いでる時だけ寄ってくる女、カネが各々の人生にどんな影響を与えちまうか、カネがどんなに破壊的か……みんなが思ってるよりディープな内容になってると思うぜ」。
サウンド面では渋みのあるオーセンティックなトラックが中心。ネフューやフィンガズのような大物もいるけど、半分ほどの楽曲を手掛けているドラスティック・メジャーズ・プロダクションズって連中の腕前が気になったぜ。
「彼らは俺のプロデューサー兼エンジニアのトミー・ガンズを中心としたチームで、みんなライヴで楽器を弾いてスペシャルな音を作ってくれた。ラッパーはブラッズとクリップスでも、演奏してるのはエイジアン、メキシカン、それに白人。誰がキーボードを弾いてようが、それがイイ音を出してればいいって話でさ。いまはHBお抱えのプロデューサーだぜ」。
今回もコラボしてるリッチー・リッチをはじめ、LBCクルー、イグジビットを迎えて、HBの動きも活発になりそうだな。
「間違いないぜ。今回は2人の思ってることに特化しようと思ってイグジビットとやった曲も収録しなかったけど、HBにはウェストを代表する粒揃いの連中が結集してるよ」。
それはそうと、ソロ作『Beach Cruiser』はいつ出るんだ? みんな待ちくたびれてるぜ!
「誰よりも俺がそう思ってるよ(笑)。リリースは7月らしいぜ。延期はキャッシュ・マネーの事情だけど、本当にキッチリ完成された内容になるよ。俺の育ったフッドやカリフォルニアのライフスタイルをしっかり表現してるし、音楽的にも成長できた。ずっと延期してて、前は何の呪いだよ!?とか思ってたけど、いまは恵みだったと思う。昔より腕を上げて20倍良くなった俺を聴いてもらえるはずさ」。
7月って……信じていいのかよ? あと、マック10のほうはどうなんだ?
「マックはソロ作に乗り気じゃねえんだ。だからコンビでもう一枚作ろうって話はあるよ。ただ、俺はとにかく時速100マイルの速さで作品を作っちまいたいタイプだけど、マック10はしっかり時間をかけて作っていきたいタイプなんだ。彼はレーベルのエグゼクティヴってポジションにあるから、俺がハッパかけなきゃラップする気にならないみたいだし。でも一度マイクの前に立てば、彼はスゲエのをカマしてくれるんだけどな!」。
……オッサンの世話はお前に任せたぜ!
▼マローンの客演作を紹介。
左から、ブラック・ミルクの2008年作『Caltroit』(Music HOuse)、Mrカポーン・Eの2009年作『Diary of A G』(Hi Power)、TQの2010年作『Kind Of Blue』(Affiliated)
▼フー・バンギン構成員の作品を紹介。
左から、リッチー・リッチの96年作『Seasoned Veteran』(Def Jam)、LBCクルーの未発表音源集『Haven't You Heard...』(Death Row)、イグジビットの2007年作『Full Circle』(eOne)