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KARL WOLF

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360°
公開
2011/08/18   13:08
更新
2011/08/18   13:51
ソース
bounce 335号 (2011年8月25日発行)
テキスト
文/池谷昌之 構成/編集部


夏だけじゃない! 世界にかぶりつくカール・ウルフの現在地



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〈夏の狼〉ことカール・ウルフが2年ぶりに帰ってきた。TOTO“Africa”のリメイクを2008年に大ヒットさせて脚光を浴びた日本でのデビュー作『Karl Wolf』に続き、2009年にはマイケル・センベロを換骨奪胎した“Maniac Maniac”を引っ提げての『Nightlife』もヒット。そしてこのたびリリースされた待望のニュー・アルバム『Ghetto Love』からの同名先行シングルでも、暑い季節に似合う爽快なダンスホール・トラックに乗せる〈大ネタ〉は一貫して80年代ポップスだ。

「“Ghetto Love”では、子供の頃から大好きだったピーター・セテラの“Glory Of Love”を使っている。(同郷カナダの)カーディナル・オフィシャルも参加しているよ。俺はああいう曲をいまのリスナーたちにも聴かせたいんだ。キッズは自分の趣味じゃないものはまったく聴こうとしないから、彼らの理解できるアーバン・ミュージックを媒介にして聴いてもらおうと思ってるよ」。

レバノンはベイルートの生まれだが、内戦を避けてアラブ首長国連邦のドバイで育ち、大学進学に伴い移住したカナダの音楽業界で経験を積んだというカール・ウルフ。USを中心とする現行アーバン・シーンのトレンドをベースにしつつ、自身の出自を活かした中東風味などのエキゾティックなテイストも武器にした多様な音楽観は、そんな複雑なバックボーンとそれに対する自覚があるからこそ生まれたものなのだろう。

「今回のアルバムでは、これまで同様にR&Bやダンスホール・レゲエのほか、ハウス・ミュージックの要素も採り入れている。俺はリスナーのみんなと同じように音楽を心から愛していて、ただ自分の聴きたい曲を作っているだけなんだ。リスナーのみんなと俺の唯一の違いは、みんなは聴きたい曲を探して聴くと思うんだけど、俺は自分で作ってしまえるってことだね」。

また、同じくアラブ系であり、スヌープ・ドッグとの仕事などでも知られるUS西海岸のプロデューサー、フレッド・レックの参加についてはこのように語る。

「フレッドは多くのスターを手掛けてきたプロデューサーだから、ようやくいっしょに仕事ができて嬉しかったよ。彼とは、同じ北米に住むアラブ人として仲間意識があるんだ」。

〈ドバイの狼〉や〈夏男〉なる惹句を纏い、大ネタ使いのキャッチーな曲をヒットさせてきたことで彼を一発屋的なイメージで見る向きもありそうだが、そういったふうに消費される類いのアーティストでないことは強調しておきたい。実は、この後にはセルフ・タイトルを冠したユニバーサルからの全世界デビュー作が控えているし、何より、〈一発〉で終わらずこうして日本でも3作目がリリースされるのだから。

「EMIアラビアとEMIジャパンは俺をずっとサポートしてきてくれたから、この2つのテリトリーはユニバーサル・カナダのワールドワイド契約からは除外してもらったんだ。日本の人たちには凄く良くしてもらったし、震災後の日本を支援するためのチャリティー・イヴェントがあったら必ず出演するようにしているよ。それほど特別な国なんだ」。

こんなことを言う義理堅い男でもある彼は、日本盤のためだけに“Wasabi”なるボーナス・トラックも作ってくれている。アラブの誇りを胸に世界規模のポップ・シンガーとしての飛躍を果たすであろう狼に、これからも注目しておくべきだろう。



▼関連盤を紹介。
“Glory Of Love”の原曲を収録したピーター・セテラの86年作『Solitude/Solitaire』(Warner Bros.)

 

▼カール・ウルフのアルバムを紹介。
左から、2006年作『Face Behind The Face』(Lone Wolf)、2007年作『Bite The Bullet』(Lone Wolf/EMI Arabia)、前2作を日本向けに編集した2008年作『Karl Wolf』(EMI Music Japan)、2009年作『Nightlife』(Lone Wolf/EMI Arabia/EMI Music Japan)

 

▼『Ghetto Love』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、カーディナル・オフィシャルの2008年作『Not 4 Sale』(KonLive/Geffen)、スリー6マフィアの2008年作『Last 2 Walk』(Hypnotize Minds/Columbia)

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