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KARL WOLF

これこそが〈ワールド・ミュージック〉? 自由に越境していくアーバン・ポップの広がり

連載
360°
公開
2011/08/18   13:08
更新
2011/08/18   13:51
ソース
bounce 335号 (2011年8月25日発行)
テキスト
文/轟ひろみ


ドレイクにジャスティン・ビーバー、メラニー・フィオナ、ソマリア出身のケイナーンなど世界的な成功を収めているカナダのアーバン系ポップ・アーティストは数多いですが、カール・ウルフが〈モントリオールの狼〉と呼ばれないのは、やはりドバイ育ちという経歴が日本から見てユニークに思える部分だからでしょうか。

とはいえ、人種や国籍の背景や支持基盤が多彩なアーティストがアーバン・ミュージックで支持を集めるアーティストは近年ますます増えてきています。その代表例はパンジャブ系イギリス人で、USでもブレイクしたジェイ・ショーン。彼の歌った〈AFCアジアカップ2011〉の公式テーマソング“Yalla Asia”には、同じアジア系という縁でカールもフィーチャーされていました。また、ジェイと同じパンジャブ系のアニー・ハリドは〈パキスタンのブリトニー〉を自認する人気者ですが、生後すぐに移住したUKからネットで発表した音源が故郷で人気を博し……という経歴はイマっぽいですね。他にもシェネルは、マレーシア生まれのオーストラリア育ち、日本でブレイク……とキャリアの築き方は本当に多様です。

さらに日本でもセクシー系の売り出しが記憶されるトルコ系のハディセは、ベルギーを拠点にトルコ音楽とR&Bにラテンやレゲエをミックスした音を披露。ケニア出身のノルウェー育ち、ステラ・ムワンギもカールに近いレゲエ色のアーバン・ポップですし、彼女のアルバムに参加したモホンビについては言わずもがなでしょう。便宜上〈ワールド・ミュージック〉と括られていても同じような音楽性の人は多いはずです。

このようにグローバル云々という言葉を用いるまでもなく、人種や国籍、拠点では個々の属性を規定できないほど、アーバン・ポップの世界では多様なバックグラウンドとサウンドが入り乱れています。レバノン→UAE→カナダときて日本、そしてUSへと歩を進めるカールの姿は、そんな現代の象徴なのかもしれませんね。



▼関連盤を紹介。
左から、ケイナーンの2009年作『Troubadour』(Octonr/A&M)、ジェイ・ショーンの2009年作『All Or Nothing』(Jayded/Cash Money/Universal Republic)、アニー・ハリドの2010年作『Kiya Yahi Piyar Hai』(Hi-Tech/Fire)、シェネルの2011年作『Luv Songs』(EMI Music Japan)、ハディセの2011年作『Ask Kac Beden Giyer?』(Seyhan)、ステラ・ムワンギの2011年作『Kinanda』(EMI Norway)、モホンビの2011年作『MoveMeant』(2101/Island)

 

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