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「DOJIMA WINTER LIVE 2011」

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公開
2011/12/09   18:18
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text:松山晋也

大阪で注目のライヴ〜ニコラ・コンテと、アナ・マリア・ヨペックが出演!
「DOJIMA WINTER LIVE 2011」

多目的ホールやギャラリー、カフェなどを備えた大阪の複合商業施設〈堂島リバーフォーラム〉は、これまでしばしばキレ味鋭い独自イヴェントを開催してきた が、この12月に行われるライヴ企画〈DOJIMA WINTER LIVE〉がまたまた要注目だ。ニコラ・コンテとアナ・マリア・ヨペックという現代ヨーロピアン・ジャズ・シーンを代表する人気者が連続で登場するから。

ニコラ・コンテといえば、なにはともあれ、90年代のイタリアでクラブ・ジャズ・ムーヴメントを巻き起こした【スケーマ(Schema)】レーベルの主宰 者として日本にも多くのファンを持つ大物DJ/プロデューサー/ギタリストである。そう、確かに彼は、ジャイルズ・ピーターソンなどと並び、ヨーロッパの クラブ・ジャズ・シーンの牽引車ではあった。が、そのままずっと今日まで〈クラブ・シーンの貴公子〉の地位に甘んじてきたわけではない。

イタリア南部のバーリに生まれ育ち(現在もそこを拠点に活動を続ける)、95年にスキーマを設立したニコラが、デビュー・アルバム『Jet Sounds』をリリースしたのは2002年のこと。クラブ/ラウンジ・ジャズの決定打として、それは世界中のクラブ・ピープルに熱狂的に受け入れられ、 日本でも一気に名が広まった。しかし彼は、その成功にあぐらをかくことなく、【ブルーノート】からリリースした2作目『Other Directions』(04年)では早くも、ぐっとラウンジ色を薄め、ジャズの肉体感にフォーカスした音作りを目指している。従来のシックさ、スムース さは残しつつも、生演奏やヴォーカル曲を増やしたパッショネイトな手触り。そこには、編集/プレゼンの妙を競うクラブ・ジャズからの脱却と前進の意志が はっきりと見てとれる。そしてその意志は、続く『Rituals』(08年)、『Love &Revolution』(2011年)でもはっきりと継承、強化されてきた。

『Rituals』では、キアラ・シヴェロやアリーチェ・リチャルディ、キム・サンダースといった女性シンガーだけでなく、ホセ・ジェイムズ(ジャイル ズ・ピーターソンとのコラボで有名)やフィリップ・ワイスなど男性シンガーまで招き入れ、全14曲中なんと12曲がヴォーカル曲になった。ディラン・トー マスやラングストン・ヒューズなどからの影響が色濃いコンテ自身の手になる歌詞も興味深い。グレッグ・オズビー(sax)とマイケル・ピント(vib)の 参加によってぐっと深まったアフロ・ジャズ色も重要なポイントだろう。

そして、そんなアフロ・ジャズ色とヴォーカルの偏重という路線を一段と深化させたのが、『Love & Revolution』である。今回も、全17曲中14曲がヴォーカルもの。前作参加のホセ・ジェイムズなどの他、ナイラ・ポーターやナイジェリア系のブ リジット・モファー、2011年グラミーにもノミネートされた新進気鋭のグレゴリー・ポーターなどシンガー陣の顔ぶれがより多彩になり、全体に温かさと オーガニックな感触が広がっている。ひとことで言えば、ソウルフル。そしてそれは同時に、サウンド・プロダクションにおいても言えることだ。グレゴリー・ ポーターをフィーチャーした冒頭曲《Do You Feel Like I Feel》なんて、ほとんど【カデット・レーベル】のニュー・ソウルそのもの。ナイラ・ポーターの歌うアシッド・ジャズぽい《ブラック・スピリット》から は、まさに黒々とした妖気が立ち上ってくる。これが、復活した名門【インパルス・レーベル】からのリリースというのも、なにやら感慨深い。

クラブDJとしてのセンスとスキルをフル回転させながら、黒人音楽の神髄、旨みを鮮やかに抉り出してしまうコンテの手さばきは、コンテンポラリー・ジャズの一つのニュー・ディレクションとして、日本の聴衆をも魅了するはずだ。

そして、もう一人のアナ・マリア・ヨペック。1970年ワルシャワ生まれのこのポーランド人女性ジャズ・シンガーの名を初めて知ったのは、パット・メセ ニーとの全面コラボ・アルバム『Upojenie』(02年)によって、というジャズ・ファンは少なくないと思われる。が、97年のデビュー作以来今日ま で15枚近くリリースされてきた彼女のアルバムは、ほとんどが母国ではプラチナ/ゴールド認定されるほど絶大な人気を誇り、05年の『Secret』から は日本盤も発売されてきた。スタジオ録音作品としては最新の『ID』(09年)は、ブランフォード・マルサリス、クリスチャン・マクブライド、リチャー ド・ボナ、マヌ・カッチェ、オスカー・カストロ・ネヴィス他、ジャズ界の世界的トップ・プレイヤーたちがこぞってバックを固め、それでもやはりポーランド 語で歌いとおすという相変わらずの独自路線を追求。時にエスニック(ポーリッシュ・フォークやアフロ)色も交えつつ、【ECM】系にも通ずる深遠でハイ パー・クールな世界は、ユーロ・ジャズ最前線と呼ぶにふさわしいものだ。堂島では、カーリン・クローグ以来ともいっていい彼女の実力と存在感をしっかりと 確認できるはずだ。

DOJIMA WINTER LIVE 2011

12/21(水)20:30開場/21:30開演
出演:ニコラ・コンテ

12/22(水)20:30開場/21:30開演
出演:アナ・マリア・ヨペック

会場:堂島リバーフォーラム
http://dojimariver.com/