NEWS & COLUMN ニュース/記事

フライブルク・バロック・オーケストラ

公開
2011/12/12   17:28
ソース
intoxicate vol.95(2011年12月20日発行)
テキスト
文:Nick Asano

創設20年余、バッハを自分の声で語る

CDでは「ヤーコプスのオケ」の印象が強いフライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)だが、実際には、本拠フライブルクのコンツェルトハレ、シュトゥットガルトのリーダーハレ、ベルリンのフィルハーモニーという三会場での定期演奏会と、それらを上回る数の国外公演の中で、指揮者を招くのは4分の1に過ぎない。楽団員による室内アンサンブル(FBコンソート)も常設し、創設メンバーである二人のコンマスの下、全員ソリストがモットー。

その特徴がわかるのがブランデンブルク協奏曲のDVD。立って演奏する弦(チェロを除く)と木管の奏者たちは体全体で大きくスウィングしているが、そのスウィングぶりが「一糸乱れず」というのではなく各人各様だし、ソロをとった人も即興風に遊んでしまう(ように見える)。見た目に反してアンサンブルの精度が犠牲にされることはないが、さすがに世界一とも言えない。

しかし、彼らの演奏には独自の魅力がある。それは響きと情感の豊かさ。通奏低音とトゥッティの奏者たちが生み出すビート感は、停滞せず疾走せず、心地よく絶妙な推進力を生む。各人が楽器をしっかり鳴らし、丁寧にフレージングしているので、常に豊かな表情が立ち昇って楽しい。バッハの管弦楽組曲第3番や第4番の冒頭における、トランペットを中心とした朗々として急がない音楽、第3番アリアでの落ち着いたテンポとむやみに装飾しない品の良さ。これは「息もつけない快速テンポときついアタック」を競うかのような演奏から明瞭に一線を画す、大人の音楽である。私の好きな第1番も温かく優雅な演奏。異彩を放つのが第2番で、フルートの超絶ソロは、実演ならば手に汗握る見ものとなるだろう。

私の手元には1987年創設のFBOが89年から90年にかけて録音した2枚のCDがある。ヨハン・ベルンハルト・バッハの組曲集と、ヨハン・ルードヴィヒ・バッハ、ゼレンカ他の組曲集。古楽が隆盛へ向かいつつある時代だったが、新進団体には王道曲目の録音は許可されなかったのだろう。最新盤のバッハとテレマン:ターフェルムジーク全集のディスクは、FBOが20年余りかけて築き上げた評価と人気によって、録音においても「自分たちの声」で語り始めた記念碑である。先鋭さで売ろうとしない分、試聴機のチョイ聴きでは部が悪いかもしれないが、末永く、繰り返し、耳傾けるに足る演奏になっている。

© Marco Borggreve