NEWS & COLUMN ニュース/記事

ODD FUTURE

連載
NEW OPUSコラム
公開
2012/05/02   18:00
更新
2012/05/02   18:00
ソース
bounce 343号(2012年4月25日発行号)
テキスト
文/高橋芳朗

 

ユニークな佇まいと膨大なリリース量に裏付けられた、目まぐるしいばかりの大躍進!! 2012年も話題の中心にいるのはこいつらだ!!

 

 

昨年2月、オッド・フューチャーのTV初出演となった「Late Night With Jimmy Fallon」におけるタイラー・ザ・クリエイター狂乱の“Sandwitches”のパフォーマンスから1年が経過した。カオスと化したスタジオのなか、興奮したモス・デフがカメラに向かって〈Swag! Swag!〉と叫ぶ姿に、以降さらに激化していくオッド・フューチャーの悪ノリぶりがオーヴァーラップする。あれから1年、現在の彼らはニューヨークやシドニーなどでポップアップ・ストアを開くほどのブランド力を誇るまでに成り上がり、写真集「Golfwang」を出版して、アダルト・スウィム(成人用ケーブル・ネットワーク)でコメディー・ショウ「Loiter Squad」を持つまでになった。

こうしたなかで、オッド・フューチャーというコレクティヴを以前よりもぐっと立体的/多角的に楽しめるようになってきたのも事実だ。この1年の彼らはタイラーの『Goblin』を筆頭に、ジェット・エイジ・オブ・トゥモロー(マット・マーシャンス+ハル・ウィリアムス)の『The Journey To The 5th Echelon』、フランク・オーシャンの『Nostalgia, Ultra』、メロウハイプ(ホッジ・ビーツ+レフト・ブレイン)の『BlackenedWhite』、ドモ・ジェネシスの『Under The Influence』、マイク・Gの『Award Tour EP』、インターネット(シド・ザ・キッド+マット・マーシャンス)の『Purple Naked Ladies』、そしてコンピレーションの『12 Odd Future Songs』などをリリース(フリー・ダウンロード作品含む)。なかではやはり『Goblin』を全米ポップ・チャート5位に送り込んだタイラーの存在感が際立っているが、その一方で連中の不敵な佇まいに深みをもたらしているのが、(インターネットの諸作はもちろん)リトル・ドラゴンやラナ・デル・レイのリミックス・ワークでコンポーザーとしての評価を着実に高めているシド・ザ・キッド、そして『Nostalgia, Ultra』が主要音楽メディアの2011年ベスト・アルバム選で軒並み上位に選出されたフランク・オーシャンだ。特に『Nostalgia, Ultra』の評判を受けてビヨンセ『4』やジェイ・Z&カニエ・ウェスト『Watch The Throne』に参加したフランクの台頭は、オッド・フューチャーの音楽的ポテンシャルに懐疑的だった向きの認識を改めさせるのに十分なインパクトがあったはずだ。

こうして〈個〉の魅力や役割が明確になり、推しメンを選ぶ楽しさにも幅が出てきた状況下、オッド・フューチャーのこの1年を総括する意味でも彼らの今後の動向を占ううえでも重要なコンピレーション『The OF Tape Vol. 2』(2008年の『The Odd Future Tape』の続編)は、まさにベストなタイミングでのリリースといえる。ここにきて行方不明だったアール・スウェットシャツがカムバックを果たすというドラマも重なって、俄然盛り上がってきたオッド・フューチャーの新展開。10分を超える軍団総出のマイク・リレー“Oldie”のラフなPV(テリー・リチャードソンのフォト・セッション中に撮影した代物!)を鑑賞しながら、まもなくリリースされるであろうタイラーの新作『Wolf』に思いを馳せたい。

 

▼正規のフィジカル作として入手できるオッド・フューチャー作品。

左から、タイラー・ザ・クリエイターの2011年作『Goblin』(XL)、メロウハイプの2011年作『BlackenedWhite』(Fat Possum)、インターネットの2012年作『Purple Naked Ladies』(Odd Future)

 

 

▼タイラー・ザ・クリエイターの客演作を一部紹介。

左から、キャシー・ヴェジーズの2011年作『Sleeping In Class』(Delicious Vinyl/Traffic)、ゲームの2011年作『The R.E.D. Album』(DGC/Geffen)、プッシャTの2011年作『Fear Of God II: Let Us Pray』(G.O.O.D./Decon)

 

RELATED POSTS関連記事