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第60回――忘れられた名匠、HDM

秋の訪れと麗しいリイシュー

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2012/09/05   00:00
更新
2012/09/05   00:00
ソース
bounce 347号(2012年8月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次


まだまだ暑い日が続くのでしょうか……ってところで、本連載ものんびり60回を迎えましたが何のお祝いもありませんな。そんななかでも自分自身へのプレゼントにしたいリイシューは山ほどありますよ。まずはケントのモータウン復刻シリーズから、スピナーズの『Truly Yours: Their First Motown Album With Bonus Tracks 1963-1967』(Kent)を。これは67年に出た彼らの初作『The Original Spinners』に、完全未発表の10曲を含む14曲のボートラを加えたもの。どうも“It's A Shame”の頃かアトランティック移籍後ばかり語られがちですが、まだテンプスらの模倣も垣間見えるこの時代にも初々しくて未完成な魅力があると思うのです。

続いてはジャクソン5フォロワー的なLAの兄弟姉妹グループ、シルヴァーズがキャピトルに残した75&77年作の2in1盤『Showcase/New Horizons』(Soulmusic)! モータウンの名匠フレディ・ペレンがJ5メソッドで仕上げた前者からは明快なディスコの“Boogie Fever”が全米No.1ヒット。セルフ・プロデュース作の後者は商業的には失敗したものの、ATCQ“Hot 4 U”で使われた表題曲を筆頭にライトなメロウ・ファンク〜スムース・ディスコの連発がヤバすぎて最高ですよ。

ファンクといえば、クエイザーの78年作『Quazar』(Arista/BBR)もボートラ入りで再復刻されました。Pファンクのグレン・ゴインズが急逝する直前に手掛けたニュージャージーのバンドによる唯一のアルバムで、グレンの弟であるケヴィンの圧倒的な歌唱に痺れたい佳作であります。

そして、もう少しロッキッシュな意味のファンクをお好みなら……レア・グルーヴ的な観点から復刻されたシンガポールのバンド、ファンクガスによる74年作『Man With A Gun』と76年作『Funkgus II』(共にBaal/Pヴァイン)をオススメです。ドス黒く妖しいゴッタ煮サイケの前者、スライ化したタイトなミクスチャー・ファンク皿の後者。どっちもカッコイイ!



▼文中に登場した作品を紹介。
左から、『Truly Yours: Their First Motown Album With Bonus Tracks 1963-1967』(Kent)、『Showcase/New Horizons』(Soulmusic)、『Quazar』(Arista/BBR)、『Man With A Gun』『Funkgus II』(共にBaal/Pヴァイン)

 

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