DWELE
一途なデトロイト・ソウル
ドゥウェレは頑なにネオ・ソウル道を歩む男だ。極めてスタイリッシュかつメロウであるのと同時に、それ以外は出来ない不器用ささえ漂うのも魅力なのだが……そんなデトロイトの一途なソウルマンが放つこの5作目『Greater Than One』にも彼らしさが充満している。初期のスラム・ヴィレッジやJ・ディラとの関係はもちろん、2010年の前作『W.ants W.orld W.omen』以降もカニエ・ウエストやDJクイックやビッグ・ショーンをはじめとするヒップホップ勢に求められ続けてきたものは、彼の持つ抑制の効いたスムースネスや甘美さなのだろう。
それらはマイク・シティ作の先行曲“What Profit”や、前作に続くラヒーム・デヴォーンとの共演“What You Gotta Do”などで見事に表れており、持ち前の美学は今回も貫かれている。それ以外はできないのではなく、やらない——完全に確立された〈ドゥウェレらしさ〉は、より研ぎ澄まされ続けるはずだ。*池谷昌之
KARRIEM RIGGINS
一途なデトロイト・ビーツ
ジャズ・ドラマーとしてハービー・ハンコックやデトロイト・エクスペリメントのバックを務め、最近はポール・マッカートニーの作品でも叩いているカリーム・リギンス……と書けば、このページを見る人には不十分な紹介となるだろう。そう、彼は演奏活動の傍らヒップホップのトラックメイカーとしても非凡な才能を発揮し、同郷のJ・ディラにも比肩する才能と目されてきたデトロイトの要人なのだ。コモンやルーツの諸作はもちろん、ドゥウェレが脚光を浴びる契機となったスラム・ヴィレッジのヒット“Tainted”(2002年)はカリームの代表作でもある。
で、近年はエリカ・バドゥのプロデュースやマッドリブとのコラボなどで知られる彼が、LA のストーンズ・スロウからついにファースト・アルバム『Alone Together』をリリースした。その内容は20秒〜4分までのトラックが34曲詰め込まれたインストのビート・アルバムで、これはまさにディラが同レーベルから出した『Donuts』へのオマージュとも解釈できるもの。彼ならではのジャズ・フィーリングも融和しながらLAシーンとデトロイトを繋ぐ黒いセンスは、この才能の煌めきによって、未来にも受け継がれていくに違いない。*出嶌孝次
▼ドゥウェレとカリーム・リギンスの両名が揃って参加した作品を一部紹介。
左から、ドゥウェレの2003年作『Subject』(Virgin)、スラム・ヴィレッジの2002年作『Trinity(Past, Present And Future)』(Virgin)、J・ディラの2001年作『Welcome 2 Detroit』、J・ディラの2006年作『The Shining』(共にBBE)、コモンの2007年作『Finding Forever』(G.O.O.D./Geffen)