クレイショーンのクリエイションなレクリエーション
ぐちぐちるいるいふぇんりふぇんりぷらだ〜♪ そんなフックも印象的な“Gucci Gucci”の動画が公開され、一躍脚光を浴びたのは昨年5月のこと。そこでブランド志向の女性たちをディスっていた当時21歳のインターネット・ギャングがクレイショーンであります。
89年生まれの彼女はサンフランシスコ出身で、ロシア系の母親は90年代初頭に活躍したガレージ・パンク・バンド、トラッシュウィメンのギタリストでした。そんなわけでクリエイティヴな環境に育ったクレイでしたが、ティーン時代に母が交際相手とカナダに移住してしまい、オークランドに戻った彼女は友人との生活をスタート。学校をドロップアウトしてからは興味を抱いた映像制作を学びはじめ、やがてリルBらローカル・ラッパーのMV監督などを手掛けていくことになります。
自身初のミックステープ『Kittys × Choppas』を発表したのは2010年秋のこと。そこから約半年で発表されたのが“Gucci Gucci”だったのです。公開から2週間で200万回超の動画再生数を記録した同曲の評判を受け、ファッション/カルチャー系の大手メディアは挙って絶賛。彼女はすぐにコロムビアと契約を結びます。が……そこからが長かった。今年4月には〈SPRINGROOVE〉での来日もあったものの、待たれていたアルバムから2チェインズを迎えた先行カット“Breakfast(Syrup)”が出たのはその翌月でした。そして今回のファースト・アルバム『Somethin 'Bout Kreay』がやっとリリースされたのです。
“Gucci Gucci”や“Summertime”を手掛けたDJトゥー・スタックスも招きつつ、基本のプロデュースはフリー・スクールとジョナス・ジェバーグが担当。そこにキッド・カディやボーイズ・ノイズ、ディプロらが関わってくるという陣容になっています。ベース・オリエンテッドで簡素なビートがズラリと並ぶ様子は、参加メンツの近さやエレクトロ〜バウンス成分の導入もあって、昨年のスパンク・ロックのアルバムを思わせる感触。ただ、いわゆるラッパーともまた異なるクレイの個性は、あくまでもトッピングとして楽曲全体のムードを司る役割だったりして、そんなところがカラフルな気分を気ままに着こなす彼女の新しさなのかも。2010年代のガール・ギャングはまだまだこれから。結果が出るのはまだ先です。
▼『Somethin 'Bout Kreay』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、2チェインズの2012年作『Based On A T.R.U. Story』(Def Jam)、キッド・カディの属するWZRDの2012年作『WZRD』(Universal Republic)、ボーイズ・ノイズの2012年作『Out Of The Black』(Boysnoize)、ディプロの2012年のEP『Express Yourself』(Mad Decent)