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小泉今日子

KYON2のカッティングエッジな30年を、全オリジナル・アルバムで振り返るよ!――(2)

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女性アイドル
連載
360°
公開
2012/10/31   17:59
更新
2012/10/31   17:59
ソース
bounce 349号(2012年10月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/久保田泰平、桑原シロー、澤田大輔

 

『BEAT POP』 ビクター(1988)

思いっきりハジけてるKYON2を楽しみたいならコレ。〈スーパーセッション〉という副題が示すように、ここでは小室哲哉や布袋寅泰、パール兄弟など多彩な作家/演奏者らとライヴ映えしそうなビートの効いたポップ・チューン作りを実践。全編に渡って派手なヴォーカルを轟かせている。*桑原

 

『ナツメロ』 ビクター(1988)

ドラマの主題歌に起用されたフィンガー5“学園天国”をはじめ、KYON2にとってのナツメロ(選曲が実にマニアック)を、野村義男やデーモン小暮たちとワイワイやりながらカヴァーしたゴキゲンな一枚。“アクビ娘”のようなアニソンもたまらなくキュートで、流石の出来栄えだ。*桑原

 

『KOIZUMI IN THE HOUSE』 ビクター(1989)

〈ハウス・ミュージックを大胆に導入〉なんて謳い文句はいまとなっては珍しくないが、時は89年。まだこのジャンルが一般化する前の粗野でドープなサウンドをフィーチャーしている点で稀少だし、それゆえに全ディスコグラフィー中でも屈指のオルタナティヴな作品となった。なにはともあれ、アシッド・ハウスと演歌を結び付けた近田春夫作“Fade Out”が凄すぎて……。KYON2版〈女性上位時代〉といった趣の初期ピチカート風ナンバー“男の子はみんな”も、小西康陽のベスト・ワークに数えられるであろう名曲。*澤田

 

『N°17』 ビクター(1990)

プロデュースは藤原ヒロシと屋敷豪太。クラブ・ミュージックを通過した地点からウェルメイドなポップスに挑んだような作品となっており、スウィートなラヴァーズ“La La La...”やスカパラをフィーチャーした歌謡スカ“丘を越えて”など、落ち着いたトーンのメロウでピースフルな楽曲が揃っている。*澤田

 

『afropia』 ビクター(1991)

KYON2にとって最大のヒット曲であり、90年代の彼女を代表するであろう名曲“あなたに会えてよかった”を収録。藤原ヒロシや朝本浩文、元JAGATARAのOTOとEBBYといった多様なフィールドのメンツがガッチリと参加しつつも、自然体で親しみやすいポップス集としてまとめられた作品だ。前2作での格闘を経て、ハウスと歌謡曲とを見事に融和させてみせた“プロセス”のような楽曲がある一方で、ホーン・セクションが美しい“最後のkiss”などスウィートなバラードの数々も印象深い。*澤田

 

『TRAVEL ROCK』 ビクター(1993)

ヌード・ジャケに度胆を抜かれた本作は、いわゆる渋谷系ムーヴメントが盛り上がりを見せて旧譜のリヴァイヴァルが進むなかで、ヴィンテージでグルーヴィーなロックに焦点を当てた一枚。かまやつひろし“やつらの足音のバラード”のカヴァーなど、中盤のリラクシンな楽曲群も美しい。*澤田

 

『otokonoko onnanoko』 ビクター(1996)

アシッドでロッキンな前作から一転、マイルーム感が漂う優しい風合いのポップ・アルバムで、全曲が本人の作詞。ジャケのセンスもさることながら、にわかに注目されはじめていた菅野よう子をプロデューサーに迎えるあたり、さすがの眼力だなあと。*久保田

 

『KYO→』 ビクター(1998)

iMac元年、インターネットを通じて行われた(早っ!)アマチュア対象の楽曲コンペによって生まれた、KYON2自身による企画盤。高浪慶太郎、キハラ龍太郎、佐橋佳幸、高野寛らのアレンジャー陣によってまとめられた本作は、KYON2の歌声が持つ叙情的な一面が際立つ仕上がりに。*久保田

 

『KYO→2〜Anniversary Song〜』 ビクター(2001)

KYON2が媒介となってアマチュア作家をフックアップ──という時代先取り企画の第2弾は、タイトル通り〈記念日〉をお題に募った楽曲からセレクト。aikoでお馴染みの島田昌典をはじめ、河野伸、村山晋一郎、鈴木俊介ら売れっ子アレンジャー陣が好サポート。*久保田

 

『厚木I.C.』 ビクター(2003)

7年のインターヴァルを経て届けられたのは、ヴォーカリストとしての彼女の魅力を前面に押し出したアルバム。高野寛や曽我部恵一、宮沢和史らが手掛けたメロウでたおやかな楽曲を、アコースティック編成の洗練されたサウンドで堪能することができる。SUPER BUTTER DOG“サヨナラCOLOR”のカヴァーも収録。*澤田

 

『Nice Middle』 ビクター(2008)

前作の大人仕様で成熟した風合いを受け継ぎながらも、さまざまなスタイルの楽曲を並べてみせた自由奔放な一枚。TOKYO NO.1 SOUL SET“Innocent Love”のカヴァーで幕を開け、ご機嫌なビッグバンド・チューン“小泉今日子はブギウギブギ”に藤原ヒロシによるフォーキーな“美しい世界”、大橋トリオが手掛けたメロウ・ソウル“あなたと逃避行”──ここからは、40代に入り、自分のスタンスで音楽活動を楽しむKYON2の姿が浮かび上がる。名曲揃いだが、特にナイーヴなドラマを丁寧に描く“samida-rain”が息を呑む美しさ。*澤田

 

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