ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!
【今月のレポート盤】ZAINE GRIFF 『Ashes And Diamonds』
ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。何やら来るべき文化祭の準備で大忙しのようですよ。
弘明寺素子「オハヨー! あれ、まりあちゃんはまだ来てないかな?」
子安翔平「ジョンとエージさんと3人で買い出しに行ってますわ」
戸部伝太「今年もまた焼きそばの屋台だとか。まるでロックと関係ありませんな」
弘明寺「代々ウチは焼きそばって決まってるの! 〈鉄板のモコ〉が腕を振るうよ〜!」
子安「確かに去年の名古屋風ドテ焼きそばは絶品やった! 期待してまっせ! ところで、まりにゃんに何か!?」
弘明寺「うん! モコの王子様、デヴィッド・ボウイに見た目も声も凄く似た人を見つけたから、イケメン好きのまりあちゃんにも教えてあげようと思って! ほらこの人、美形でしょ!?」
戸部・子安「あっ、ザイン・グリフ!?」
弘明寺「知ってるの? 2人もイケメン好き?」
戸部「何をおっしゃる! グリフは80年代に突如登場した、正統派グラム・ロックの最後の貴公子とも言うべき存在ですぞ。ついに初CD化されたのですな!」
子安「そりゃ違うわ。デュラン・デュランほどの知名度はあらへんけど、グリフはヴィサージらと並んでニューロマンティック・ムーヴメントの黎明期を華麗に飾った男やで! むしろニューロマ王子や!」
戸部「笑止。彼を軽薄なニューロマ連中などといっしょにしないでいただきたい」
子安「何やと! お前の眼鏡は曇っとるで!」
弘明寺「ちょっと〜! 男子2人でイケメンの取り合いなんて……たまらないよ!」
生麦 温「あのモコさん、腐女子発言は控えましょう。お茶を煎れましたよ」
弘明寺「よ〜し、お茶飲みながらザイン様を聴こう!」
戸部「彼について興味深いのは、ボウイやケイト・ブッシュも師事したリンゼイ・ケンプの元で、舞踏の修行を積んでいることですな」
弘明寺「へ〜。(ライナーを読みながら)ねえねえ、ザイン様はデンマーク系のニュージーランド人なんだって! 何だかエキゾティック!」
子安「ニューウェイヴ全盛期の80年にこの『Ashes And Diamonds』で華々しくデビューしたんやけど、そのあと82年に2作目『Figures』を残して姿を消してしまい……つくづく惜しまれるわ」
戸部「本作のプロデュースを、ボウイやT・レックス仕事で名高いトニー・ヴィスコンティが手掛けたことも注目ですな。これぞグラムの継承者たるに相応しい」
子安「そんなん言うたらヴィスコンティはブームタウン・ラッツやアダム・アントらとも仕事しとるわ。それより本作の邦題〈灰とダイヤモンド〉やけど、沢田研二に同名曲があるのはデータも知らんやろ!?」
弘明寺「ジュリー様!? あの美麗なルックスとお化粧はまさに〈日本のデヴィッド・ボウイ〉って感じだよね!」
戸部「モコ殿は顔の話ばかりですな〜。ふん、確かに小生は存じませんが、そもそも〈灰とダイヤモンド〉は、ポーランドの有名な小説のタイトルですからねえ」
子安「嫌味なやっちゃな〜」
弘明寺「データには焼きそば食べさせないからね!」
戸部「ジュリーはともかく、グリフの2作目に高橋幸宏が参加していることくらいは押さえておきたいですな」
子安「そのお返しに、幸宏のソロ作『What, Me Worry?』にはグリフが参加しているんや」
生麦「あの〜、僕はいま初めて聴いたんだけど、耽美で妖しいグラムっぽさと、ダンサブルで煌びやかなニューロマっぽさの両方を備えていると思うよ」
戸部「そう言われると身も蓋もありませんがね」
生麦「いま聴いてもフツーにカッコイイよ! 例えばマック・デマルコあたりが好きな人ならド真ん中じゃないかな〜」
子安「そやな! デマルコがあと20%ほどデカダンスと化粧っ気を増せば完璧や」
弘明寺「はっ! お化粧!! オンちゃん、いまからグリフ様をお手本にお化粧しよ!」
生麦「え!? 何で僕が?」
弘明寺「それで文化祭のイケメン・コンテストに出場するのよ!」
子安「おお! 顔だけなら〈ロッ研〉No.1やしな、そりゃおもろいで!」
弘明寺「やっちゃおー! 2人はオンちゃんを押さえててね!」
生麦「え、いや、うわ、ダメだってば!!」
汐入まりあ「ただいま〜。いろいろと買い…って、ちょっと何してるんですかっ!」
いつにも増して騒がしい〈ロッ研〉ですが、はてさて文化祭はどうなることやら……。 【つづく】