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第62回――唯一無二な〈ダズ〉を貫く男たち

ダズ・バンドと周辺の名盤を紹介!

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2012/12/25   00:30
更新
2012/12/25   00:30
ソース
bounce 350号(2012年11月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次


KINSMAN DAZZ 『Kinsman Dazz/Dazz』 Expansion

前身バンドのアルバムが2in1でCD化されたもの。マーヴィン・ゲイとの制作予定がご破算となり、78年の『Kinsman Dazz』をEW&Fのフィリップ・ベイリー&ラルフ・ジョンソン及びトミー・ヴィカリが、翌年の『Dazz』をトミーとパット・グラッサーが制作し、ジャズ出身らしいフュージョン・ファンクを展開した。ホーンズを従えた小気味良いサウンドや出世曲“I Might As Well Forget About Lovin' You”などにおける清涼なヴォーカル/コーラスには、やはりEW&Fからの影響が色濃く滲む。 *林

 

THE DAZZ BAND 『Invitation To Love』 Motown(1980)

ダズ・バンド名義での初作となるモータウンでの第1弾。水面下でレジー・アンドリュースの協力も仰ぎ、ユニゾンを中心としたヴォーカルで歯切れ良く強靭なボトムのファンクや美麗なスロウ〜ミディアムを聴かせる。白眉はスキップ・マーティンが熱くネットリ歌い込むスロウの表題曲。モータウン時代ほぼ恒例となる女性ジャケはオハイオ・プレイヤーズを意識した? *林

 

DAZZ BAND 『Keep It Live』 Motown(1982)

全米5位まで上昇した“Let It Whip”の勢いに乗り、R&Bチャートで首位に輝いた最大のヒット作(3作目)。昼下がり系バラード“Gamble With My Love”などスキップの伊達男ぶりが映えるA面、ボビー・ハリスの歌う表題曲など四者四様のリードで魅せるB面、どちらも洒脱にしてソウルフル。ドラムマシーンのタイトな響きを強調しながらも汗臭さを失わないグルーヴがしなやかでカッコイイ。 *出嶌

 

DAZZ BAND 『Hot Spot』 Motown(1985)

モータウンでの最終作。前作を最後にレジー・アンドリュースの元から巣立った彼らは、レジーの教えをもとに進化を遂げていく。マーロン・マクレインがギター/リズム・アレンジで加わったせいか、ゲイリー・テイラー作の“If Only You Were In My Shoes”を筆頭に、ファンクはロック的なエッジを伴ったハードでタイトなものに。スロウはいつも通りロマンティックに迫る。 *林

 

LOU RAGLAND 『Understand Each Other』 S.M.H./Pヴァイン(1978)

ホット・チョコレートを率いていたクリーヴランドの名シンガーによるソロ作。ここにトランペット奏者として参加していたのが、当時地元のバンドに在籍し、ダズ・バンド全盛期の中核を担ったピエール・デマッドだった。アルバムそのもののモダン・ソウル的な評価とは別に、70年代クリーヴランドのローカル・ファンク事情を伝える一作としても興味深い。 *林

 

SWITCH 『This Is My Dream』 Motown(1980)

デバージの兄貴分で、ダズ・バンドにとってもモータウンの先輩にあたるヴォーカル&インスト・グループの4作目。レジー・アンドリュースがアレンジで参加しているため、ファンクにもスロウにもダズ・バンド的な洗練と快活さが感じられ、ダズの同年作の競合盤といった趣もある。ボビー・デバージとフィリップ・イングラムの軽妙で爽快なダブル・リードもダズ風か。 *林

 

SKIP MARTIN feat. O.D.B. 『For Women Only』 Pヴァイン(1995)

クール&ザ・ギャング加入〜脱退を経たスキップが、ダズ復帰前に日本主導で作った実質的なソロ・デビュー作。アーロン・ホールやR・ケリーへの対抗意識も覗かせながら、軽くハネた“You Send Me”などまろやかなスムーヴ系ファンクをアダルトな余裕で乗りこなしている。なお、ODBとはもちろんアノ奇人ラッパーではなく、オリジナル・ダズ・バンドのこと。 *出嶌

 

MYSTIC MERLIN 『Sixty Thrills A Minute』 Capitol/BBR(1981)

ダズ・バンドとは特に関係ないが、故郷から西海岸に出向いてファンクを進化させたという意味で、先頃CD化されたNY出身のバンドの2作目を挙げておく。〈ミニEW&F〉感はキンズマン・ダズっぽく、スレイヴに似たオハイオ・ファンク的な猥雑さもある。シェリル・リンがペンをとって歌声も交えたスウェイ・ビート曲“Got To Make It Better”も強力だ。 *林