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(第10回)韓国インディー・バンドのスタジオ事情

連載
長谷川陽平のソウルで勝手に生きてます。
公開
2013/03/05   13:30
更新
2013/03/05   13:30
テキスト
文/長谷川陽平


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チャン・ギハと顔たちでギタリスト/プロデューサーを務める日本人メンバー・長谷川陽平が、ソウルは弘大(ホンデ)に集まるミュージシャンの生態に迫る連載! 今回は韓国インディー・バンドのスタジオ事情について



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1月の次は2月、その次は3月ですよね。あたりまえですけど。しかしまあ、もうすでに3月じゃないすか……年末年始って、あったっけ?という感じですよ、もはや。上半期も半分が過ぎようとしておりますなあ……油断も隙もありゃしないです(笑)。

で、われわれチャン・ギハと顔たちはサード・アルバムのレコーディングに入っているワケです。ボチボチと録っていますが、録音中にふと思いついたんです……今回は韓国インディー・バンドのスタジオ事情について書いてみようかなと。

実は、今回のアルバムは自分たちのスタジオですべて録音することになりそうなんです。われわれのスタジオを今年に入って改装しまして、防音をしっかりやったんです。ブースを作ったりして。



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2人とも後ろ姿ですが……左がイ・ジョンミン氏(キーボード)、右がチャン・ギハ氏



こんな感じなんですよ、真っ赤! いまのところは大丈夫ですが、これで集中できるんかと(笑)。まあとにかく、ドラムもベースも鳴らせるので一発録りも可能になりました。

〈何て贅沢な!!〉とお思いでしょう?――でもこちらのバンドたちはある程度成熟してくると〈練習室〉という物件(ほとんどが地下)を借りて、自分たちの練習場所とし、さらにはコンピューターを持ち込んでデモ制作作業~レコーディングができるようにするパターンが多いんですよ。もちろん、こちらにもいわゆる〈貸スタジオ〉はありますし、料金も日本と比べたら安いのですが……活動が軌道に乗ると〈じゃ、スタジオ探すか!〉という言葉が自然と出てくるんです。



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まあ、いまはコンピューターがありますから〈ホーム・レコーディング〉という言葉もよく耳にしますが、メンバー全員で一発録りできるようなスタジオを持っているバンドなんて、インディーではなかなかいないですよね。だから、日本と韓国のインディー・バンド同士で交流している人たちは、状況の差にビックリすることが多いと聞きました。そりゃそうですよね、〈僕らスタジオあります〉って言ったら、日本の人たちはビックリするでしょうから。

私にとっても、日本で活動していた時には〈自分たちのスタジオを持つ〉なんて夢のまた夢みたいな話でしたからね。最初にトゥゴウン・カムジャに加入して、〈われわれのスタジオです〉って招待された時は本当にビックリしました。で、セカンド&サード・アルバム、そしてシンガー・ソングライターのカン・サネさんのアルバムもそこで録ったんですよねえ……もう10年近く前の話ですけど(笑)。

時間の制約がないぶん、じっくり制作に打ち込めるという点は良いのですが、一方でズルズルと作業をしてしまったりなど悪い方向にも行きかねない。やはりそういう部分は、ギタリストでもありますがプロデューサーとして気を付けたいところですね。自分たちのスタジオでの初作品、どうなるかはまだわかりませんが……現時点で言えるのは、〈前作に負けずとも劣らない曲たちである〉ということでしょうか。そして最後に一言……4月に何かがあります!! それでは!!



PROFILE/長谷川陽平



韓国のバンド、チャン・ギハと顔たちのギタリスト兼プロデューサー。95年に韓国へ移住し、トゥゴウン・カムジャやサヌリム、ファン・シネ・バンドなどで活動。現在は他にもミミ・シスターズや美男美女の〈美男〉ギタリストを務めたり、若手パンク・バンドのLook & Listenのプロデュースなども手掛けている。いつもここでつぶやいてます→https://twitter.com/lghopper_Yohei