ROCKIE ROBBINS 『You And Me』 A&M(1980)
タヴァレスと同じくボビー・マーティンやロン・カーシー絡みの一枚で、サムのペンによる曲を4曲収録。“After Loving You”“For The Sake Of A Memory”はまぎれもなくサム節と言えるバラードで、“Hang Tough”もサムらしいジャンプ曲だが、モダンな音に包まれたそれらは実に親しみやすい。サムの唱法を手本にしたような情熱的な歌もいい。ラリー・グラハムと共作した“Girl I'm Gonna Get Ya”はステッパーズ調の好曲だ。*林
LARRY GRAHAM 『One In A Million You』 Warner Bros.(1980)
80年代のサムが得意とする、良い意味でベタな名曲群の先駆けとなったのが本作の表題曲。朗々と野太く響く主役の歌唱にハマる誠実なバラードで、後にテディ・ペンダーグラスやフレディ・ジャクソンも取り上げた宝石だ。サムはGCS調の“Stand Up And Shout About Love”や“There's Something About You”を共作、以降のアルバムにも参加している。*出嶌
ARETHA FRANKLIN 『Love All The Hurt Away』 Arista(1981)
ついに女王に曲を献上することに……。ジョージ・ベンソンとのデュエットでヒットした表題曲はサムのペンによるロマンティックなバラードだ。包容力のある優美なメロディーにアリフ・マーディンの弁えたアレンジも相まって80年代のアレサを代表するナンバーに仕上がっている。サムは次作『Jump To It』にも“If She Don't Want Your Lovin'”を提供。*出嶌
GLADYS KNIGHT & THE PIPS 『Visions』 Columbia(1983)
南部から都会に進出した彼らもサムと相性が良かった。コロムビア時代最大のヒットとなった本作にサムは4曲を提供/5曲をプロデュース。“Save The Overtime(For Me)”などのアーバンなダンス曲が見事なうえ、サムらしい愁いを帯びたバラード“Heaven Sent”がグラディスのディープな歌声と見事にマッチし、聴く者の胸を締めつける。ロリータ・ハロウェイなどが歌っていたミディアム“Seconds”もグレイト。*林
BEAU WILLIAMS 『Stay With Me』 Capitol(1983)
身長が加入規定に満たずテンプテーションズに入れなかったシンガーながら、そのテンプスを従えて歌ったのがサム作の“You've Been”だ。もともとバーケイズが歌い、ラリー・グラハムも取り上げたスロウ・バラードだが、これをボーは西海岸の洗練された音をバックにエモーションを込めて歌い上げる。アルバムを制作したロン・カーシーとの共作曲“When My Love Starts Coming Down On Me”もバラードで、こちらも上出来。*林
THE MANHATTANS 『Forever By Your Side』 Columbia(1983)
後にホイットニー・ヒューストンが取り上げる“Just The Lonely Talking Again”を先に歌っていたのが、このマンハッタンズだった。サムが楽曲提供をしたこともあるタイロン・デイヴィスを手掛けていたレオ・グラハムのプロデュースで、静かに心を揺さぶるこのメロウなスロウ・バラードを優しく歌い上げるジェラルド・アルストンが素晴らしい。*林
DENNIS EDWARDS 『Don't Look Any Further』 Gordy/BBR(1984)
80年代半ば頃までジェフリー・オズボーンやカール・カールトンら多様なタイプの男性シンガーとの仕事が続いたサムは、テンプテーションズを去った雄々しいシンガーのソロ・デビュー作に情熱的なスロウ“(You're My)Aphrodisiac”をライティング。テンプス在籍中の前年にもグループでサムの“What A Way To Put It”を取り上げている。*出嶌
REGINA BELLE 『All By Myself』 Columbia(1987)
マンハッタンズとも縁深いシンガーのデビュー作。マイケルJ・パウエルの手腕でクワイエット・ストーム系の都会的なクールネスが強調されるなか、サム作の“After The Love Has Lost It's Shine”はひときわ壮大なバラードで、彼女の歌唱ポテンシャルを最大に引き出す結果に。同時期のサム曲ではアトランティック・スター“All In The Name Of Love”も併せて必聴。*出嶌
WHITNEY HOUSTON 『I'm Your Baby Tonight』 Arista(1990)
前作で取り上げたサム曲“Just The Lonely Talking Again”の好評にプロデューサーのナラダ・マイケル・ウォルデンが気を良くしたのか、改めてサムのペンに期待を託されたのが、本作収録のウォームフルで粋なミディアム“Lover For Life”だ。80年代ブラコンと90年代R&Bの橋渡しをした本作が、サムにとっては最後のメジャーでの大仕事となった。*出嶌