ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!
【今月のレポート盤】RIP RIG & PANIC 『God』 Virgin/ディスクユニオン(1981)
穏やかな風が吹く5月終わりのある日。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。おや、ジョンとまりあの新2年生コンビに加え、先月に続いてまたしても見慣れない顔が……。
杉田俊助「Hi! ユーが噂になっていた3人目の新入部員だネ。ミーは杉田。みんなからはジョンって呼ばれてるヨ!」
鮫洲 哲「自分は鮫洲哲っす! よろしくお願いしやす!」
杉田「ところでユーのリーゼントはサイドがユニークだネ」
鮫洲「剃り込みのことっすか? 自分の地元じゃこれが定番っす。ぶっちゃけヤンキー上がりなんすけど、ロックを愛する気持ちは誰にも負けないっすよ!」
杉田「Hot Boyだネ! でもロックへのパッションならマリーアも負けないヨ!」力
鮫洲「マジっすか? 正直、ロックに命張っているようには見えないし、自分は女になんて負けたくないっすよ」
汐入まりあ「性差別ですか!? そもそも私は勝負する気なんてありませんし!」
杉田「ところでテツはコレ好きかな!?」
鮫洲「おおおっ、リップ・リグ&パニックのファースト・アルバム『God』じゃないっすか! ついにリイシューしたんすね!」
杉田「オフィシャルでのCD化が切望されていた、ニューウェイヴ最後のビッグネームって感じだよネ!」
汐入「中古市場ではブート盤すら結構な値段が付けられていましたからね」
鮫洲「当然っすよ! 元ポップ・グループのギャレス・セイガーとブルース・スミスを中心に、アリ・アップやネナ・チェリーも参加した、ブリストル産コールド・ファンクの至宝っつうか、伝説っすからね!」
汐入「同じポップ・グループから派生したピッグバッグやマキシマム・ジョイもファンクやジャズの影響が濃いけれど、とりわけリップ・リグの初作は混沌としたフリーキーな音塊が強烈ですよね」
杉田「Yes! プリミティヴでアンチ・コマーシャルなサウンドがSo Good! テツもそう思わない!?」
鮫洲「そ、そりゃもちろんレジェンドっすから!」
生麦 温「みんな、お茶を煎れたよ〜」
鮫洲「何っすか、ここは会長がお茶汲みをやるんっすか!?」
生麦「あはは、いつものことだから。それにしても、リップ・リグってようやくアルバム単位でちゃんと聴けたって感じだよね。ポスト・パンクの話になるとしょっちゅう名前が挙がるわりには、ずっと入手困難だったもんね」
汐入「逆に言うと、名前だけが一人歩きしていた部分はありますよね。彼らの音を知っているとか、盤を持っていることが、リスナーとしてさも特権的であるような錯覚に陥ったりして」
鮫洲「(ギクッ!)」
生麦「あとブリストル・サウンドの信者って、何でもかんでも伝説に祀り上げる傾向があるような(苦笑)」
鮫洲「(ギクギクッ!)」
杉田「ミーは何にも考えてないけどネ。!!!やアルバム間近のメルト・ユアセルフ・ダウンを聴くのと同じスタンスだヨ。カッコ良ければオールOK!」
生麦「うん、そうだよね。ところで今回は彼らの残した3作品がすべてCD化されたんだよね?」
汐入「はい。しかもリマスタリングが施されているのと、アルバム未収録のシングル曲などが追加されているので、これで全貌が知れるって感じですよね」
杉田「7インチや12インチのソースはアルバムとはまたちょっと違ってエクセレントだったヨ、Ha! Ha! Ha!」
汐入「妙に肥大化していた評価から解放され、ようやく音そのものを楽しむことができるようになったわけですから、とても意義のあるリイシューだと思います」
鮫洲「せ、先輩方、すんません! 実は自分、ネットで聴きかじったことくらいしかなくて。それでもナメられたらイケねえと思って、つい知ったかブチかましました!」
汐入「そんな……土下座なんてしなくていいですから!」
鮫洲「いや、まりあ先輩の見解はごもっともっす! お見それしやした! で、折り入ってお願いがあるんすけど、先輩、いや姐御、どうか自分を舎弟にしてください!」
汐入「姐御? 舎弟? 絶対にイヤです!」
杉田「Oh〜! ジャパニーズ・マフィアみたいでクールだネ! ミーが特別に許可するヨ、Ha! Ha! Ha!」
鮫洲「あざっす! 姐御、さっそくお茶をお注ぎしやすよ!」
汐入「勘弁してください」
やたらとアクの強い1年生が入部したようですね。これでようやく新体制の〈ロッ研〉がスタートしたようです。さて、どうなることやら……。 【つづく】