宏実とCIMBAのベスト・パートナー(?)同士が語るラヴソングの極意!!
宏実とCIMBA、この二人が初めて声を重ねたのは、2007年に発表されたCIMBAの“香水”において。以降も“香水 Part 2”(2009年)、“奇跡”(2010年)で両者のデュエットは人気を博してきた。それから歳月を重ね、宏実はバンド演奏で新装した代表曲が多く並ぶニュー・アルバム『INCOMPLETE –Trace of 5 years-』を、CIMBAは「5年間の集大成」と語るオリジナル・アルバム『V』をほぼ同時期にリリースすることに。今回、宏実のアルバムに収録されたCIMBAとの“PARTNER”は4度目の共演とあって息もぴったり。甘やかなハピネスが薫るシルキーな名デュエットに仕上がっている。そんな二人ゆえにトークのハーモニーも抜群。出会いから互いの新作に対する印象、ラヴソングの作法までたっぷり訊いた。
CIMBA「初めて会ったのは“香水”の前の年だよね。俺が新宿に呼び出して」
宏実「長々と話したのは覚えてる。そのときから(CIMBAは)ライオンというよりハイエナだねって言ってて(笑)」
CIMBA「宏実さんが俺の知り合いのFRGと作った“L.O.V.E”を聴かせてもらったときにすげえと思って、〈いっしょにやりませんか?〉って呼び出したんだよね。その曲を聴いた時点で俺はもう宏実さんのファンになってたし」
宏実「え〜、本当〜(笑)!?」
CIMBA「だから、俺は“香水”を作りながらすごいテンション上がってたもん」
宏実「当時、私は超生意気だったからなぁ。人の作品なのにコーラスとかめっちゃ口出してて、CIMBAと(作曲した)T-SKはポカーンみたいな(笑)。言い過ぎたな……って“香水”を聴くたびに思い出す」
CIMBA「年齢はそんなに変わらないし、長い付き合いだけど、俺とT-SKはいまだに〈宏実さん〉って呼ぶでしょ。それはたぶんその現場があったからだよ(笑)」
宏実「CIMBAに参加してもらった今回の“PARTNER”は、聴いた人がふわーっと幸せな気分になる曲にしたかったんだよね。これは今年結婚した友達に結婚式を迎える心境とか、旦那さんになる人はどういう存在?っていう質問をいろいろしてインスピレーション湧かせて、彼女に捧げるつもりで書いた曲で。CIMBAには結婚式を迎える男性の気持ちを書いてもらった」
CIMBA「時間は超なかったけどね。レコーディングの前夜になって〈こういう曲にします〉っていう連絡が来て、〈あと何時間しかねぇけど……?〉みたいな(笑)」
宏実「CIMBAだからそのスケジュールでも大丈夫でしょ、みたいな(笑)。そこは阿吽の呼吸でなんとかしてくれると思って。いままでのコラボはCIMBAが作ったメロディーと詞で歌ってきたから、今回は私のメロディーと歌詞で歌ってもらいたかったんだよね。だけど、自分で歌詞を書きたいって言ってきて……」
CIMBA「これも阿吽の呼吸だと思うけど、宏実さんはこう書いてくるだろうなっていうのがわかってたんだよね。まず自分の存在があって、自分の夢を追いかけていく中であなたが必要不可欠だっていう女性像を歌うだろうなと。だったら、俺は一歩引いて、その女性を一生支えていくんだという気持ちを書けばガッチリはまるだろうなって思ってたから」
宏実「なるほどー。って、私の動きを読まれてたみたいでなんか負けた気分だなぁ(笑)。けど、結果、助かったからありがとう。メロディーは歌ってもらえたから嬉しい!」
CIMBA「今回の宏実さんのアルバムでは、“ラッキー★ガール〜恋のLA・LA・LA〜”が超好きだったな。いい意味でちょっと懐かしい感じがして、いままでの宏実さんとは違うし、これはこれで新しい路線じゃないかなと思った」
宏実「ありがとう。CIMBAのアルバムは“NAVIGATOR”がかっこいいよね。ああいうかっこいい曲をやれる男性シンガーって限られてると思うから」
CIMBA「俺はバラードも歌うけどアップも歌うからね。ヒップホップの人たちともやれば、今回はレゲエのleccaさんともやってて、振り幅を自分で決めないでやってきてる。今回はそんな5年間を総まとめじゃないけど、自分の振り幅を全部入れてみようと思ったんだ。歌詞もラヴソングがあれば、死について歌ってるもの、大袈裟に言えば世界平和をテーマにしたみたいな曲というふうに振り幅を持たせてるんだよね」
宏実「私にオススメは?」
CIMBA「“Little Lady”かな」
宏実「それ、スタジオで編集作業中に聴いたけど、その段階から素敵な曲だった」
CIMBA「ギター一本で歌ってる曲でかなり実験的な要素もあるし、メッセージも込めてられたし、我ながら新しいと思う」
宏実「私はラヴソングを作るとき、もがいてる気持ちを書いていても、必ずその先の幸せを見据えて歌ってるつもりなのね。これまでの曲でいうと、例えば“愛されたい”は、ただ単に〈私は愛されたいんです〉って歌うんじゃなくて、〈絶対いつかあなたは愛されるよ〉っていう想いを込めて歌ってる」
CIMBA「俺は相手の女性の髪型からメイクの種類から洋服から、とにかく設定をめちゃくちゃ細かく固めてから詞を書くかな。もちろん実際の言葉にはしないんだけど」
宏実「ハッピー系のラヴソングだったら、ガールズトークしてて、恋が始まりそうなときのキャピキャピした感じは〈いまのいただきー!〉みたいなフレーズが飛び出してくることもあるけどね」
CIMBA「〈ボーイズトークは〈あの女のケツがさー〉とかだからね。あんまり曲の参考にならない(苦笑)」
宏実「じゃあ、今度ガールズトークのネタを一個あげようか(笑)」
CIMBA「そしたら俺も“ラッキー★ボーイ”書けるかな(笑)?」
宏実「いいね! 書いてよ、書いてよ」
CIMBA「でも、俺の場合、さっき話したようにシチュエーションは想像したものでも、自分の身体を通じて記憶したことが歌詞になってるから。手を繋いだときの感覚とか、相手が涙したときの描写とか、そのへんはよく書いてしまっているかも」
宏実「私も手とかよく使っちゃう。あと声も。声フェチというか、男性の声に敏感で。だから記憶に焼き付いてる」
CIMBA「“香水”じゃないけど、匂いとかね。あと温もりとか体温もあるかな。目で見たものや耳で聞いたものは忘れがちだけど、女性に触れたときの柔らかさとか、髪が濡れてるときの肌触りとか、そういう触感はどうしても覚えてる」
宏実「でも、〈女性は耳で恋をして、男性は目で恋をする〉っていうよ」
CIMBA「それ、聞いたことある」
宏実「私の声は耳っていうことでしょ。だけど、CIMBAは目じゃなくて……」
CIMBA「手みたいね、俺の場合(笑)」
▼両者のコラボが聴けるアルバムを紹介。
左から、“香水”を収録したCIMBAの2007年作『PRIMEIRA』(DAY-TRACK)、CIMBAのペンによる“万華鏡”を収録した宏実の2008年作『True Colors』(babylicious)、“香水 Part2”を収録したCIMBAの2009年作『REPLAY』、“奇跡”を収めたCIMBAの2010年作『Words and Notes』(共にEXIT LINE)、宏実が客演したCIMBAのライヴCD+DVD『LAST MAN TOUR FINAL 2012 AT SHIBUYA O-EAST』(PHATSOUL/KSR)
▼両者の近作を紹介。
左から、宏実の2012年作『HONESTY』(Sugabee/KSR)、CIMBAの2011年作『LAST MAN』(PHATSOUL/KSR)