アフリカと鹿児島がぐるぐる出会う、サカキマンゴーの親指帝国宣言!
このところリンバ・トレイン・サウンド・システムなるユニットを率いてアルバムを発表していたサカキマンゴーだが、2年振りのこの新作は個人名義。新曲もあるが、毎年恒例のフェス『スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド』でのライヴ音源や既発曲のダブ・ヴァージョンなども含んでいて、どちらかといえば番外編的なミニ・アルバムといったところか。しかしその内容は、単に番外編といって素通りしてしまうには、あまりに濃い。今後の展開を予感させるアイデアに満ちていて、将来、彼の歩んできた道を振り返ったときに、重要作として語られるようになる作品かもしれない。
これまでも、親指ピアノのエレクトリック化など、彼は新しい表現方法を模索してきたが、例えば新曲《Chabakke》での、自身が「空間系親指ピアノ」と呼ぶサウンドなどは、もう一段階上のステージに進んだことを強く感じさせるものだ。今年7月に亡くなったジンバブウェの女性親指ピアノ奏者チウォニーソをはじめとする、アフリカ勢や南米のミュージシャンと共演したライヴ音源も、コラボレーションする相手や演奏する場によって変化し進化する彼の音楽の柔軟性、懐の深さを示している。前作収録の《茶わんむしのクンビア》をデジタル・クンビア化したというのも、常に未開の領域に挑戦し続ける彼の真骨頂だ。
さらに興味深いのは、今回は歌詞がすべて鹿児島弁になったという点。前作のインタヴューで、鹿児島弁での表現を究めたいと語っていたが、その思いは変わっていないようだ。ブックレットに掲載された解説もすべて鹿児島弁(標準語訳付き)というのだから、徹底している。加えて、南九州地方に伝わる板三味線、ゴッタンの演奏も収録。いわば音楽のローカル化を進めているわけだが、ローカル性を突き詰めることによって逆にインターナショナルな普遍性を獲得するのが、ワールドミュージックの面白さであり醍醐味でもある。この作品は、まさにそれを体現している。