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【vol.1】――夜桜四重奏 -ハナノウタ-

連載
二次元以上。〜brilliant sounds from 2D and over
公開
2013/11/27   18:00
更新
2013/11/27   18:00
ソース
bounce 361号(2013年11月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/森 朋之


田淵智也プロデュースのキャラソン集!



夜桜四重奏 -ハナノウタ-
©ヤスダスズヒト・講談社/ハナノウタ製作委員会



LiSA、戸松遥などへの楽曲提供を通し、アニメソング・シーンでも特異な才能を示しているUNISON SQUARE GARDEN(以下、USG)の田淵智也。このたび、アニメ「夜桜四重奏」のキャラクターソングのベスト盤とサウンドトラックから成る2枚組『桜新町の鳴らし方。』がリリースされるが、そのキャラソン・サイドにおいても、彼は全曲の作詞/作曲/プロデュースを手掛けている。田淵がアニソンに興味を持ったのは、2000年代に入った頃。「90年代前半のJ-Popにあった〈ポップで明るい曲〉がアニソンに移っていった印象があって。一時期はオープニング曲、エンディング曲からキャラソンまで片っ端から聴いていました。思わぬところに良い曲があるもんだなって」──そこで注目していた作家陣が今作にも名を連ねているそうだが、もちろんUSGで培った田淵自身のソングライティング・センスも、本作には強く反映されている。

「『夜桜四重奏』との関わりは、USGの“Kid, I like quartet”をOAD(コミックの単行本の限定版に付属するオリジナル・アニメDVD)のオープニングにしてもらったのが始まり。スタッフの方に冗談半分で〈次はキャラソンですかね〉と言ってたら、本当にオファーをいただいたという。〈夜桜〉の現場はすごく自由度が高くて、基本的には〈好きなようにやってください〉という感じなんです。既存の楽曲が10曲あったから、その半分くらいは新曲を入れたかったし、〈原作の先にあるものを楽曲に盛り込んだほうがおもしろい〉という自分なりの哲学もあって、それが良い形で表現できたんじゃないかな、と。ひとつのアニメ作品のキャラソンをすべてひとりの人が作るって、結構事件だと思ってるんですけどね、自分としては」。

新たに制作された新曲も、キャラソンとしての機能と音楽的な魅力、田淵自身の志向をバランス良く共存させたものばかり。例えば、新井弘毅(元serial TV drama)が編曲で参加した“holy sensation”(歌は声優の小野友樹)は、速弾きのギター・ソロが炸裂するロック・チューンだ。

「新井くんは数少ないバンドマンの友達のひとりで、バンドを解散した後の作曲家/ギタリストとしての動向も追っていたんですよね。僕からは〈とにかくギターを弾きまくる曲にしてほしい〉と言ったんですが、新井くんも〈やれることは全部やる〉という感じでアレンジしてくれて。ドラムは藍坊主の渡辺拓郎さんで、僕もこの曲だけベースを弾いてるんですよ。私情を挿みまくってますけど、〈夜桜〉ファンの期待を裏切らないという大前提は崩していないつもりです」。

さらに、ミト(クラムボン)が編曲したオープニング・ナンバー“種も仕掛けもありふれて”や、田淵が作詞で畑亜貴と、作曲で田代智一とコラボした“かしましかしまっ!”などにも、彼の明確な意図が込められているという。

「〈種も〜〉は渋谷系から派生したサウンドにしたいと思って、ミトさんにお願いしたんです。ミトさんも〈だったらストリングスのアレンジは長谷泰宏さん(中島愛、花澤香奈らの作品に携わる作/編曲家)だよね〉というアイデアを出してくれて。畑さん、田代さんは『涼宮ハルヒの憂鬱』の“ハレ晴レユカイ”を作った方々。僕自身が尊敬している人たちといっしょに曲を作るという、自分への挑戦の意味も込められてますね」。

アニメ・ファンのニーズに応えつつ、アニメを未体験のリスナーも心浮き立つポップソング集として楽しむことのできる本作。田淵智也の新たな一面を体感できる作品として、幅広い層の音楽好きに届いてほしいと思う。



▼『桜新町の鳴らし方。』に参加したクリエイター関連の作品。
左から、serial TV dramaの2011年作『パワースポット』(ソニー)、クラムボンの2013年のカヴァー集『LOVER ALBUM 2』(コロムビア)、アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンディング・テーマとなった2006年のシングル“ハレ晴レユカイ”(ランティス)

 

▼「夜桜四重奏 -ハナノウタ-」関連の作品。
左から、UNISON SQUARE GARDENのシングル“桜のあと(all quartets lead to the?)”、12月4日にリリースされるphatmans after schoolのニュー・シングル“ツキヨミ”(共にトイズファクトリー)

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