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【vol.2】――河野マリナ

連載
二次元以上。〜brilliant sounds from 2D and over
公開
2014/01/23   16:50
更新
2014/01/23   16:50
ソース
bounce 362号(2013年12月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/森 朋之


自分の気持ちをエフェクター代わりに



河野マリナ_A



2011年のメジャー・デビュー以来、「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「化物語」などの音楽を手掛ける神前暁(MONACA)のプロデュースのもと、「Aチャンネル」のオープニング曲“Morning Arch”や、「夏目友人帳 肆」「〈物語〉シリーズセカンドシーズン『囮物語』『鬼物語』」のエンディング・テーマとなった“たからもの”“その声を覚えてる”といった高品質のアニメソングをリリースしてきたシンガー、河野マリナ。幼い頃からSMAPやモーニング娘。といったアイドル・ポップを好み、大学時代には軽音楽部で「ギターを練習して、the pillowsさんのコピー・バンドに参加してました」と語る彼女は、さまざまな音楽のなかでもアニソンを〈KING OF MUSIC〉と捉えているという。

「アニソンにはいろんなジャンルの曲──ポップスもロックもジャズも、いろんな音楽が詰まってると思うんですよね。ロックを愛する自分とアイドルさんを愛する自分を繋いでくれるのがアニソンだし、私にとってはいちばん心が落ち着く音楽なんです。自分自身の物語とアニメの物語を重ねることで、2倍も3倍も伝わっていく感じにも惹かれますね。神前さんの曲も、以前から大好きだったんですよ。特に『化物語』の曲は、よく聴いてました。悲しいときに聴くとその気持ちをクレッシェンドしてくれるし、嬉しいときもそうだし……。感情に寄り添って、作用してくれるのが素敵だなって」。

デビュー当初は「神前さんやスタッフの方々が自分に求めていることを考えて、模範解答を探す傾向にあったかも」という彼女だが、制作とライヴを重ねるごとに、「自由で、自分らしい」歌を少しずつ掴んでいった。これまでに担当したアニメソング7曲をすべて収録したファースト・アルバム『First Touch』からも、ヴォーカリストとしての豊かな表現力が伝わってくる。

「自分でもビックリするくらい、気持ちによって歌の表情が変わってくるんです。“MAGIC OF MUSIC”のレコーディングのときは〈歌うように、踊るようにいろんな人とお話できたらいいな〉という気持ちだったし、“Imperfect blue”は初めてのワンマン・ライヴの光景を思い描きながら歌って……。自分の気持ちが、ギターで言うエフェクターみたいな役割を果たしてるんだなって思いますね」。

アルバムの最後に収録されているバラード“この優しい世界のなか”も強く心に残る。特に〈これから何度だって はじまるひとつずつを/最高の出会いにできる〉というフレーズは、彼女のなかに芽生えたシンガーとしての決意とも重なっているようだ。

「“この優しい世界のなか”は、アルバムのエンディングであると同時に〈河野マリナのセカンド・シーズンのオープニング・テーマ〉というイメージもあるんですよね。いままでの私は〈ポニーテールで、笑顔で元気に歌う〉という服を着ていたようなものだと思うんです。これからはもっともっとありのままの河野マリナを表現したいなって。いま感じてることを歌に込めて、人間らしく、体温のある歌を歌っていきたいですね」。

「言葉で会話するよりも、歌ったほうがしっかり自分の思いが伝わると思ってるんですよ」と語る彼女。ヴォーカリストとしての高い技術と〈歌を通して、自分自身を伝えたい〉という切実な動機がひとつになった河野マリナの楽曲は、アニメ・ファンはもちろん、さらに多くのリスナーへと浸透していくことになりそうだ。 



▼河野マリナのファースト・アルバム『First Touch』(アニプレックス)
左から、CD+DVD+フォトブック・カレンダーが同梱の初回限定盤、CDのみの通常盤

 

▼河野マリナのシングル。
左から、2011年の“Morning Arch”、2012年の“たからもの”、2013年の“その声を覚えてる”(すべてアニプレックス)

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