ディック・エル・デマシアードのアート作品と音楽の共通点
さらに、同美術館では、奇天烈なデジタル・クンビアを奏で、来日公演も行っているディック・エル・デマシアードことディック・ベルドゥルトの、初のメキシコでの個展〈Poemas Feos Para Todos(ポエマス・フェオス・パラ・トードス:すべての人々のための醜い詩集)〉もオープニングを迎えていました(2013年12月7日~2014年3月2日まで開催)。
〈Poemas Feos Para Todos〉展示風景
ディックは、この展覧会のためにほとんどの作品をメキシコに滞在して制作したそうですが、陶芸からコラージュ作品、オブジェ、映像と光を使ったインスタレーションまであって、なかなかの充実ぶりです。もちろん、どの作品も彼の音楽同様に奇天烈であります。
〈Tengo Razon(僕は正しい)〉というメッセージの書かれたスケッチ集。
蛭子能収の世界を彷彿とさせる
会話吹き出しを使った作品
ほのぼのと不穏な絵画:1
ほのぼのと不穏な絵画:2
光と映像を使ったインスタレーション:1
光と映像を使ったインスタレーション:2
そのインスタレーションの一部。
エルヴィスとインターネットとアメリカ合衆国政府の絵が描かれている
作品の前でディックにポーズを取ってもらいました:1
作品の前でディックにポーズを取ってもらいました:2
ディックと陶芸作品と制作に協力したメキシコシティの工房、
Taller Azotea(タジェール・アソテア)の日本人陶芸家、奥野宏さん
ディックは2000年から音楽活動を始めたのですが、そのずっと前の74年から造形芸術を制作してきました。今回の展示は彼の作品を気に入ったメキシコ人キュレーターからの誘いがあって実現。メキシコの展示の後は、テキサス、サンフランシスコ、ボゴタ、マドリードでも同展覧会の開催が予定されています。その後はラテン・アメリカを巡回できるといいな、とディックは希望しているそう。
今回展示されていた、インパクトのある光と映像を使ったインスタレーションですが、オブジェにインターネットについての言葉が書かれている部分がいくつかあり、気になりました。それをディックに訊いたら、こんな答えが返ってきました。
「あの作品は〈鳥かご〉というタイトルなんだ。ある日、鳥かごにいた2羽の赤い小鳥がいっしょにさえずり、当然だと思った。そしてその2羽が連なって鳥かごから飛び出し、羽ばたいていって、それも当然だと思ったんだ。いわば……すごく当然だろう? インターネットはアメリカ政府のために開発されたもので、何の意味も、芸術的価値もないものなんだよ!!」
う、うーむ……。彼の発言は、私には理解できていない部分もあるのですが、インスタレーション内の映像からは、ラテン・アメリカの先住民への考察や、常に体制批判的な匂いを感じ、アンチ・キャピタリズムなメッセージを受け取りました。きっと彼の音楽のラディカルさは、そんな思想からきているのでしょう。