ケンドラ・モリスはカヴァー・ガール!?
「カヴァーをするのはずっと好きだったわ。それは自分がリスペクトしているものに新たな命を吹き込むことだからよ」。
そう宣言するのはケンドラ・モリス。昨年ワックス・ポエティックスからリリースされたファースト・アルバム『Banshee』が日本でもヴィンテージ・モダン好きなリスナーから愛された、現在NY在住のシンガー・ソングライターだ。そんな彼女が足早に選んだ次のステップは意外にもカヴァー集という形になったが、アーティストの自己表現という意味でソングライティングにも他人の歌の再解釈にも優劣があるわけではない。もちろん彼女はそれを心得ている。
「カヴァーの素晴らしい点は、そもそも自分が惹き付けられた部分を捉え直し、それをベースに独自の解釈を施すことができるということ。あるいはそれをはっきり打ち出せば、自分に聴こえていたものが何だったのか、他の人たちにもわかりやすくなるのよ」。
ライティングとは異なるクリエイティヴなプロセスを経て出来上がったのが『Mockingbird』だ。その色気に満ちたスモーキーな歌声に触れることによって私たちは、著名なオリジナル曲そのものを見るための、新しいアングルを獲得することになるだろう。「オリジナルとまったく異なるものにしなければ良いものにはならないと感じた」という意識がどのように反映されているのか、ぜひ原曲とも聴き比べてほしい。