〈カワイイ〉をキーワードとする原宿発のガールズ・カルチャーが国内外に拡大し続け、その媒介役である〈青文字系ファッション誌〉といったタームも注釈なしで広く受け入れられつつある2013年。この界隈の中心で存在感を発揮してきたファッション・アイコンがアーティスト・デビューを果たす。彼女の名はUna(ユウナ)。シンガーとして一発目にキックする作品が、シングル“JUICY JUICY”だ。
もともと原宿のショップ店員としてカリスマ的な人気を得ていた彼女が、モデル業へと本格的にシフトチェンジしたのは2012年のこと。そこから一気に目覚ましい活躍を見せるようになり、程なくして青文字系モデルの第一線に躍り出る。先日パリで開催されたジャパニーズ・カルチャーの総見本市〈JAPAN EXPO〉へCDデビューに先駆けて出演し、ライヴ・パフォーマンスを披露。原宿カルチャーを体現するアーティストとして、スポークスマンとして、ワールドワイドにその名を知らしめたというわけだ。
このように〈カワイイ〉を巡るムーヴメントを牽引する一方で、ある意味では対照的と言えるクールな表情も持ち合わせているのが、Unaというモデルの突出した魅力であり、武器だろう。実際のところ、彼女の活動領域は青文字系の枠に留まらない。ストリートからモードまで、さまざまなファッション性を軽やかに横断し、その異なるフィールドをさらりと結び付けてしまえるバランス感覚の持ち主なのだ。
そして8月にリリースされるデビュー・シングル“JUICY JUICY”は、そんなUnaの多面的なキャラクターを的確に掴んだナンバーとなっている。昂揚感たっぷりの弾けるようなポップ・チューンだが、そのキャッチーなメロディーを支えているのはEDMマナーのトランシーなシンセ・サウンドであり、USヒップホップとシンクロするバウンシーなビートだ。キュートにしてエッジーなトラック、そしてどこまでもポジティヴなリリックは彼女の第一歩に相応しい。
また、パワフルなリード曲から一転して、カップリングの“LONELY FLOWER”は静謐でメランコリックなバラードに仕上がっている。ここでUnaが見せる可憐な表情は、本作の裏ハイライトかもしれない。チルなR&Bやトラップの意匠を何気なく織り込んだサウンドも聴きどころだろう。さらに、フランスのエレクトロ・シーンにおけるキーマン、テキ・ラテックスによる“JUICY JUICY”のリミックスも収録される。
今回、この2曲のサウンド・プロデュースを務めたのは80KIDZ。シンガーを手掛けるのは今回が初ということだが、エレクトロ以降のダンス・シーンとリンクしてきた彼らが、自身の作風とは異なるアプローチでポップなプロダクトを仕立て上げたことに驚かされる。彼らにとっても新境地を拓いた意義深い仕事であっただろうし、このタッグの続きにも期待したいところだ。
さて、Unaは今後どんなスタイルを見せてくれるのか? デビュー・シングルを堪能したばかりのところでそう考えてしまうのはせっかちすぎるかもしれないが、何しろまだ2曲。もっと聴きたい!と思ってしまうのも仕方ないだろう。まあ、どんなナンバーであっても彼女は巧みに乗りこなし、キュートとクールを快く交錯させてUnaの世界を作り上げてくれるに違いない。そう思わせるだけのポテンシャルが、この“JUICY JUICY”には詰まっている。
PROFILE/Una
91年、沖縄生まれのシンガー。原宿のセレクト・ショップのスタッフだった2010年、ファッション誌・Zipperのスナップ・ページに掲載されたことがきっかけでモデル・デビュー。2012年から活動の軸をモデルに移し、そのZipperやKERA!をはじめとする数々の雑誌に多く起用され、原宿カルチャーを担う存在としてますます人気を博す。2013年からは本格的に音楽活動をスタート。今年7月にパリで行われた〈JAPAN EXPO〉でのファッション・イヴェント〈HARAJUKU KAWAii!! in Paris 2013〉において、初めてライヴ・パフォーマンスを披露。そして、本人出演のTVCMソングにもなっているファースト・シングル“JUICY JUICY”(ユニバーサル)が8月14日にリリースされる。