圧倒的な存在感を放つブルックナー中期の大作。
シュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者、ザルツブルク復活祭音楽総監督を歴任し、名実ともにドイツ音楽の世界的巨匠と目されるクリスティアン・ティーレマン。今やウィーン・フィルにとっても最重要指揮者の一人であり、2024年の作曲者生誕200年を目指しこのコンビが続けているビッグ・プロジェクト「ブルックナー:交響曲全集」にも大きな注目が集まっています。
第5弾は、ブルックナーの中期交響曲の中で個性的な存在感を持ち、近年人気も高まっている第5番。ブルックナーの特徴であるトレモロの原始霧ではなく、ピツィカートの歩みで開始され、ロジックによる構築感が他の交響曲よりも際立っています。中でもソナタ形式とフーガとを独自に融合させた第4楽章は、金管のコラールが響き渡る集結部分が圧倒的。ティーレマンの得意曲でもあり、既に3種類のソフトが発売されているほど。ここではウィーン・フィルの豊潤かつ濃厚なサウンドを生かした、ティーレマンのスケール雄大な解釈が聴きものです。
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発売・販売元 提供資料(2022/07/22)
ティーレマン/ウィーン・フィルのブルックナー交響曲全集
当アルバムはティーレマンとウィーン・フィルが進めている「ブルックナー:交響曲全集」の第5弾。この全集は、ブルックナーの生誕200年となる2024年までにヘ短調(習作)、第0番ニ短調も含む交響曲をすべて演奏し、映像収録と録音が行われる予定です。ウィーン・フィルによるブルックナーの交響曲録音は数多く、モノラル時代から1人の指揮者が複数の交響曲を録音している場合も多々ありますが(ハンス・クナッパーツブッシュ:第3・4・5番、カール・シューリヒト:第3・7・8番、カール・ベーム:第3・4・7・8番、カルロ・マリア・ジュリーニ:第7・8・9番、ヘルベルト・フォン・カラヤン:第7・8番、ベルナルド・ハイティンク:第3・4・8番、クラウディオ・アバド:第1・4・5・7・9番など)、全集は1965~74年にかけて6人の指揮者でデッカが完成させたもの(ただし第1~9番のみを録音)があっただけで、ティーレマンによる全曲録音完成の暁には、ウィーン・フィルが全11曲を単独の指揮者で演奏・録音した初めての全集となります。
ティーレマンは、2000年10月にR.シュトラウスの「ばらの騎士」組曲と「アルプス交響曲」を指揮してデビュー以来、ウィーン・フィルとは緊密な関係を保ち、定期演奏会、特別演奏会や音楽祭、演奏旅行など、数多く共演を重ねてきています。中でも、2008年~2010年にかけて行われたベートーヴェンの交響曲全曲演奏は、オーストリア放送協会とユニテルによって映像・音声収録されたこともあって、世界中で放映されたのみならず、パリ、ベルリン、東京、モスクワでも時期を置いて開催され、音声・映像ソフトとしても発売されたことで相性の良さが世界規模で認知されました。2010年には、ウィーン・フィルの創設者であるオットー・ニコライの生誕200年を記念して生地カリーニングラードで開催されたガラ・コンサートの指揮を任されています。
ティーレマンがウィーン・フィルでブルックナーの交響曲を取り上げたのは、2003年11月、サヴァリッシュの代役として東京で指揮した第7番が最初で、2007年3月の第7回定期演奏会およびヨーロッパ・ツアーでの第8番、2013年8月ザルツブルク音楽祭での第5番(これはウィーン・フィルが毎年リリースしている自主制作CDで発売済み、現在でもウィーン・フィルのオンラインショップで購入可能)が続きました。
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そして2019年4月の第9回定期演奏会で第2番が取り上げられ、結果としてこの演奏がユニテル、ソニークラシカル、ウィーン・フィル、ORFの共同制作によって行われる交響曲全曲の映像と音声の収録の第1弾となりました。その後、2019年11月には、リリース順としては第1弾となった第8番が、2020年8月にはザルツブルク音楽祭で第4番「ロマンティック」が収録。2020年11月の第3番、2021年1月のウィーン稿による第1番、2月の第5番、3月のヘ短調と第0番ニ短調は、いずれもコロナ下のため無観客で演奏・収録されました。また2021年のザルツブルク音楽祭では交響曲第7番が、2022年4~5月にはウィーンで第6番の収録が終わっています。2022年のザルツブルク音楽祭での第9番をもって、ヘ短調から第9番までの一通りの収録が終わる予定です。並行して収録されている映像の放映も始まっており、日本ではNHKを通じて第3番と第8番がすでにOAされました。さらに2022年7月からは「ブルックナー11」として、C Majorによる映像ソフトの発売が開始され、第1弾として第5番とヘ短調・ニ短調、第2弾として第7番・第1番がすでに発売されています。
ティーレマンはミュンヘン・フィル首席指揮者(2004-2011)就任時の最初の演奏会で交響曲第5番を取り上げ、さらに2012年9月、シュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者就任記念の演奏会でも第8番を取り上げるなど、ブルックナーの交響曲を自らの大事な節目で演奏してきました。それ以前の2009年9月、当時の首席指揮者ファビオ・ルイージが病気でキャンセルしたシュターツカペレの定期演奏会で、代役として指揮した演目もブルックナーの交響曲第8番で、この時の演奏の圧倒的な印象がシュターツカペレ首席指揮者就任へのきっかけとなった。シュターツカペレとは2012年から2019年にかけて交響曲全曲を演奏しており、第5番は2013年9月8日と9日、ドレスデンのゼンパーオーパーでライヴ収録された映像がC Majorから発売されています。
チェリビダッケの薫陶を受け20世紀のブルックナー演奏の極点に到達したミュンヘン・フィル、16世紀に遡る450年の歴史を誇るシュターツカペレ・ドレスデンという2大オーケストラのブルックナー演奏の伝統を吸収しつつ、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルとの演奏でもやはりブルックナーを数多く取り上げているティーレマンは、今やブルックナー交響曲演奏の本流をなす存在といえましょう。すでに発表されているウィーン・フィルの2022/23年シーズンでは、2023年2月に第8番の再演が予告されており、ティーレマン=ウィーン・フィル=ブルックナーの絆がますます深くなっていくようです
[ソニークラシカルの資料による]
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This is conductor Christian Thielemanns second go-round with Bruckners Symphony No. 5 in B flat major, WAB 105, following on an earlier reading with the Munich Philharmonic. Thielemann is about two minutes faster this time, but his basic approach is similar; he offers cool, Apollonian Bruckner that avoids the over-the-top quality inherent in the gigantic double fugue finale. The chief attraction here is the Vienna Philharmonic Orchestra, which has this music in its bones and delivers a magnificently smooth Adagio movement that arguably only this orchestra and this conductor could have achieved. It is a marvel, and Thielemanns sculptor-like approach also serves the big first movement well. After that, things may be more a matter of taste. The technical perfection Thielemann can draw from the orchestra is what has made this conductor a star, and it continues to be in evidence. There is a mighty climax at the end, but the fugue has a restrained quality, with the entrances not strongly marked, and the Scherzo has been done many times with greater intensity. It depends on how one looks at Bruckner, on whether one finds the density of the counterpoint or the sheer extremity of his music more important. Thielemann inclines toward the former, and those who are there with him will appreciate this wonderfully recorded performance a great deal. ~ James Manheim
Rovi