カール・ズスケが率いる弦楽四重奏団が初来日時にビクタースタジオで録音したマスターテープから初SACD化。 既発作品から更に原音を追求し、磨き抜かれたカルテットの艶やかな音色を再現!当時の最高品位でのアナログ録音の音質に最大限拘り、原音を追求したマスタリングを実施
1973年5月に日本が東ドイツと国交を樹立した直後の11月。待望の来日を果たしたベルリン弦楽四重奏団の公演は、ピアノに永富和子、コントラバスに堤俊作を加え、東京朝日講堂の他各地で行われました。この音源は、従来より東欧アーティストのレコーディング実績があったビクターのスタジオで、ディレクター相澤昭八郎氏、エンジニア依田平三氏によって録音。SACD化において当時のサウンドを忠実に再現すべくアナログマスターまで遡り、袴田剛史氏(FLAIR Mastering)によってリマスタリングを施した美質溢れるサウンドをご堪能ください。
1973年11月の初来日以来、実演に、レコードに日本で高い人気を誇り続けた往年の名団体、ベルリン弦楽四重奏団の初来日時のビクターへのスタジオ録音を世界初SACD化した貴重なアルバムです。ベルリン弦楽四重奏団のリーダー、カール・ズスケ(1934~)は、戦後ヨーロッパを代表する名コンサートマスターの一人。そして、オーケストラ活動と並行して、ソリスト、室内楽のリーダー、ヴァイオリン教授としても世界的に活躍したことで知られています。
ベルリン弦楽四重奏団は、ズスケがベルリン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスター時代の1965年に、同歌劇場のメンバーを集めてズスケ弦楽四重奏団(Suske-Quartett)の名称で結成されました。その目覚ましい芸術的成果により結成僅か5年で東ドイツの国民賞3等を受賞し、同時にベルリン弦楽四重奏団と名乗ることを許されました。この名称は主に海外公演のときに用いられましたが、東ドイツ国内ではSuske-Quartettの名称を通し、1977年にズスケがゲルハルト・ボッセより名門ライプツィヒ・ゲヴァントハウス弦楽四重奏団のリーダーを禅譲されるまで活動を続けました(録音は1980年まで)。
(1/3)
タワーレコード(2023/04/12)
1973年11月のビクターによる録音曲目にシューベルトとハイドンが選ばれた理由は、ベルリン弦楽四重奏団の演奏が作品に相応しいという芸術上の理由とともに、彼らが東ドイツでモーツァルトの弦楽四重奏曲集を収録済みであったこと、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲録音が進行中だったことが挙げられます。結果として歌謡性に満ちた2曲が選ばれましたが、これは彼らの数多い録音の中でも、その美質がこの上なく発揮された1枚となりました。
シューベルトの《ロザムンデ》第1楽章から、彼らの特徴である確かな造形と様式感覚の中での艶やかな音色と磨き抜かれたアンサンブル、しなやかな旋律の歌、表現の抒情性が際立っています。彼らは旋律を隅々まで丁寧に歌わせながらも、ポルタメントやルバートを抑制して、テンポやリズムも乱すことなく、造形をキリリと引き締めることに成功。シューベルトが随所に織り込んだ痛切なアタックも、彼らの合奏には力強さと音色の深いコクがあり、絶妙な「歌」と見事なコントラストを描いています。展開部で曲想がどんどん高まってゆく部分(トラック1の4分10秒~)など、彼らの高い理想への飛翔に誰しも心奪われてしまうことと思います。
一方の《セレナード》は長年ハイドン作として親しまれた作品でしたが、1964年にロマン・ホフシュテッター(1742~1815)の作だったとの研究が発表されてから、近年ではほとんど演奏されなくなってしまいました。この愛らしい旋律美、屈託の無い歌、シンプルな造形、見事な起承転結は作者が誰であっても「名曲」に相応しいものであり、このベルリン弦楽四重奏団の名演復活を機に、演奏する団体が増えることを期待したいと思います。
(2/3)
タワーレコード(2023/04/12)
今回の復刻では、ビクターが温度管理も含め厳重に保管していたオリジナルの2chのアナログ・マスターテープを用い、録音当時も使用していたスチューダーのA-80で再生した音源をSACD層用にはDSDでダイレクトに、CD層用には同じくDSD化された音源を基に出来るだけ工程ロスを減らしたピュアな方法で44.1kMzに変換しています。製品化にあたってはスタジオでマスターテープと比較の上、DSD2.8MHz、DSD5.6MHz、DSD11.2MHz、PCMは44.1kHzから192や384等、可能な限りのレートで試聴を行った上で、DSD2.8MHzのダイレクトを採用しました。これは、SACDのフォーマットが2.8MHzのため工程で一番ロスが少ないこと(他のレートでは最終的に2.8MHzに変換するため工程が多くなる)で、弦楽器の質感や音色が一番アナログ・マスターテープに近かったことによります。もちろん、今回のテープの状態が非常に良くアナログ領域含め一切調整する必要が無かったこと、元々のマスターのバランスが非常に良いためEQ調整等を行う必要性も全く無かったことなど、良い条件が重なった結果です。従いまして、今回のSACD層は全くの未加工のため、限りなくアナログ・マスターテープそのものの音を再現できました。CD層もバランス等の調整は行っていませんが、44.1kHz/16bitに変換する際にエンジニアにより最小限の音色の管理は行っていますので、ほぼ無調整で原音のままと言えると思います(今回、全工程は広義な意味も含め「マスタリング」という言葉を使用しています)。当時のビクターによる録音技術の粋を集めた素晴らしい音源が、今回の復刻ではまさに蔵出し的な意味合いも十分感じられる出来に仕上がっていますので、現在の技術を用いたこの素晴らしい録音を最大限お楽しみいただけます。
尚、解説書には小石忠男氏によるLP初出時の解説と、新規で序文解説を掲載しました。また、ジャケットはLP初出時のデザインを使用しています。
(3/3)
タワーレコード(2023/04/12)