ロト&レ・シエクル、「動物の謝肉祭」初のピリオド楽器演奏!
これまで聴いたことのない響きが超新鮮な驚きの世界!!
快進撃を続けるロトとレ・シエクルがサン=サーンス「動物の謝肉祭」のピリオド楽器演奏を実現させました。彼らは2010年に交響曲第3番「オルガン付き」とピアノ協奏曲第4番の画期的なアルバムを録音してもいますが、今回10年を経てサン=サーンス名作集の誕生となりました。
2枚組で、1枚目には4篇の交響詩をやはりピリオド楽器ですべて収録。名作「死の舞踏」の独奏ヴァイオリンもノン・ヴィブラートで、オーケストラの音色ともに、この曲が実はおどろおどろしくないことを示してくれます。もともとサン=サーンスは古楽と古楽器復興に注力した人物でもあり、ロト自身「レ・シエクルの創設者のひとりといえる」と述べています。歌劇「サムソンとデリラ」のバッカナールも異国的でものものしいイメージが払拭され、パステル画のような色彩となり、これぞサン=サーンスのイメージしていたものと納得させられます。
なにより興味深いのが2枚目の「動物の謝肉祭」。これまで聴いたこともない響きに驚かされます。作品には2台のピアノが用いられますが、ここでは1928年プレイエル製のダブル・ピアノが用いられているのも注目。一台のピアノの両端に鍵盤のついた対面型楽器で、シテ・ド・ラ・ミュジーク音楽博物館が1983年にプレイエル本社展示品を購入し、演奏可能な状態にしていました。1台の楽器ゆえ響きは美しく均一で、別々の2台では出せない世界を作り上げています。ジャン・スギタニとミヒャエル・エルツシャイドによりますが、技巧的な「ロバ」を颯爽と弾くかと思えば、「ピアニスト」ではド下手にわざと間違えるなど爆笑の演奏を繰り広げています。
ノン・ヴィブラート奏法ゆえ「雄鶏と雌鶏」や「耳の長い登場人物」はまさに動物の鳴き声に聴こえます。また「象」のコントラバスの重くない洒落気、「水族館」の木製ハーモニカ、「化石」のシロフォンなど古い楽器なのに非常に新しい音色として響きます。
単に時代考証で終わらないのがロトの凄いところ。リズム感のよさとサン=サーンスに不可欠な早く精力的な動きはもちろん、子供たちをも大喜びさせるようなユーモアは誰にも真似できません。史上初の映画音楽だった「ギーズ公暗殺」もLSOとサウンドトラックの仕事で鍛えたロトの感覚が光ります!
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2023/09/27)
ロトとレ・シエクルの"オルガン付き"の録音は色鮮やかな名演だった。この交響詩は作品としては地味な存在だが、煌めく音色や畳み掛けるドラマに驚かされる。"ファエトン"は終盤でワーグナーを聴くような迫力を感じさせ、"ヘラクレスの青年時代"はピアニシモからフォルテまでスピード感に満ちた弦楽が縦横無尽に鳴らされる。"死の舞踏"バッカナール"は熱気をはらみながら緻密さを兼ね備えている。そして滅法面白い"動物の謝肉祭"!本当に獣が唸るようなサウンドから、白鳥の刹那さ、ユーモアが表現されて、あっという間に大円団の終曲になってしまうことだろう。
intoxicate (C)雨海秀和
タワーレコード(vol.167(2023年12月10日発行号)掲載)