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2020年度 第58回「レコード・アカデミー賞」決定!受賞ディスク一覧

レコード・アカデミー賞2020

レコード・アカデミー賞は、音楽之友社が1963年(昭和38年)に創設したもので、1年間に国内のレコード会社から発売されたクラシック・レコードのうち、『レコード芸術』誌「新譜月評」で高い評価を得たものの中から部門ごとに演奏や録音などの最も優れたディスクを選定し、発売レコード会社を表彰するものです。2020年度の大賞はエラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラ他によるベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》(HMF)、大賞銀賞はガーディナー指揮イギリス・バロック管弦楽団他によるヘンデル:オラトリオ《セメレ》(SDG)、大賞銅賞はエラス=カサド指揮マーラー室内管弦楽団他によるファリャ:バレエ音楽《三角帽子》、同《恋は魔術師》(HMF)がそれぞれ選ばれました。
(タワーレコード)

2020年度 第58回「レコード・アカデミー賞」受賞ディスク一覧

大賞 交響曲部門
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》,合唱幻想曲
パブロ・エラス=カサド指揮 フライブルク・バロック・オーケストラ,チューリヒ・ジング=アカデミー,クリスティアン・ベザイデンホウト(fp)他
[ハルモニア・ムンディ D KKC6234(2枚組)](11)

大賞銀賞 声楽曲部門
ヘンデル:オラトリオ《セメレ》
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イギリス・バロック管弦楽団,モンテヴェルディ合唱団,他
[SDG D KKC6257~9(3枚組)](12)

大賞銅賞 管弦楽曲部門
ファリャ:バレエ《三角帽子》全曲,同《恋は魔術師》全曲
パブロ・エラス=カサド指揮 マーラー室内管弦楽団,他
[ハルモニア・ムンディ D KKC6127](2)

その他の受賞盤は以下の通り
(ページ下方の「関連商品」も併せてご覧ください)

協奏曲部門
ベートーヴェン:序曲《コリオラン》,ピアノ協奏曲第4番,《プロメテウスの創造物》序曲
パブロ・エラス=カサド指揮 フライブルク・バロック・オーケストラ,クリスティアン・ベザイデンホウト(fp)
[ハルモニア・ムンディ D KKC6264](12)

室内楽部門
J.S.バッハ:音楽の捧げ物,他
鈴木雅明(cemb) バッハ・コレギウム・ジャパン団員
[BIS D KKC6158]CD&SACD (7)

器楽曲部門
J.S.バッハ/オルガン作品集-3
鈴木雅明(org)
[BIS D KKC6157]CD&SACD (8)

オペラ部門
バルトリ/神の声(ファリネッリのためのアリア集)
チェチーリア・バルトリ(Ms) ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 イル・ジャルディーノ・アルモニコ,他
[デッカ D UCCD1478](2)

音楽史部門
ビーバー:ロザリオのソナタ
グナール・レツボール(vn,指揮) アルス・アンティクァ・アウストリア
[パン・クラシックス D KKC6182(2枚組)](7)

現代曲部門
ハンニガン/受難
〔ハイドン:交響曲第49番《ラ・パッシオーネ(受難)》,グリゼ:境界の彼方への4つの歌,他〕
バーバラ・ハンニガン(S,指揮) ルートヴィヒ室内管弦楽団
[アルファ D NYCX10136](6)

特別部門  吹奏楽/管・打楽器
シューベルト:歌曲集《冬の旅》
栃尾克樹(Br-sax) 高橋悠治(p)
[パウ D PAU8003](2)

特別部門  ビデオ・ディスク「コンサート&ドキュメンタリー」
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲全集
ベルチャ四重奏団
[ユーロアーツ D KKC9586~9(4枚組)]BD (11)

特別部門  ビデオ・ディスク「舞台&劇作品」
アダン:歌劇《ロンジュモーの御者(郵便配達人)》全3幕
ミシェル・フォー(演出) セバスティアン・ルラン指揮ルーアン・ノルマンディ歌劇場管弦楽団,同合唱団,アクサントゥス,マイケル・スパイアーズ(T) フローリー・バリケット(S) フランク・ルゲリネル(Br) 他
[ナクソス D NYDX50098] BD (10)

特別部門  録音
東京交響楽団/LIVE from MUZA!(観客のいない音楽会)
〔ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲,ラヴェル:ピアノ協奏曲,サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》〕
大友直人指揮 東京so,黒沼香恋(p) 大木麻理(org)
[EXTON D OVCL00726]CD&SACD (6)

特別部門  企画・制作
J.ウィリアムズ/ライヴ・イン・ウィーン
ジョン・ウィリアムズ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,アンネ=ゾフィー・ムター(vn)
[グラモフォン D UCCG40106(CD+BD)]MQA-CD (10)
[グラモフォン D UCCG40107]MQA-CD (10)


特別部門 特別賞
ブルーノ・ワルター全ステレオ録音SA-CDハイブリッド・エディション(全6集+特別編)
[ソニー・クラシカル SM SICC10279~84,10285,10286~94,10301~6,10306~11,10312~6,10316~20,19046~8(分売)]CD&SACD (1)(2)(3)(4)(7)



特別部門 歴史的録音(録音の新旧を問わず、歴史的に意義のある録音等を表彰するものです)

アルバン・ベルク四重奏団/ワーナー録音全集
アルバン・ベルク四重奏団
[Warner Classics SD 9029.538517(62枚組+8DVD)](海外盤)〔9月号で記事掲載〕

※カッコ内の数字はレコード芸術誌月評掲載月号。

2020年度・第58回「レコード・アカデミー賞」総評

レコード・アカデミー賞選定委委員長
金子建志

部門賞が決まった時点で、票が割れるということは予想できた。指揮のエラス=カサドが3部門、鈴木雅明が2部門に名を連ねており、しかもカサドに関してはさらに複雑。「交響曲部門」と「協奏曲部門」にベザイデンホウトが関わっていたからである。
筆者が「交響曲部門」を1位に選ぶ際、ベザイデンホウトをどう評点に加えるか迷った。厳密には《第九》のみを対象にすべきなのだが、《合唱幻想曲》もすばらしい出来。《第九》の原曲としての位置づけは、既出盤でも充分に理解していたつもりだったが、曲の成否を握る前半のカデンツァ的なソロからフォルテピアノに惹き込まれた。ナチュラルホルンの呼びかけに「歓喜の主題」が応える部分や、《第九》の「vor Gott」と同じ転調(和音)で繰り返される「und Kraft」を聴くと、20年近くの時を超えても、社会的メッセージを訴えようとしたベートーヴェンの毅さにうたれる。それらを総合的に評価した。
 「協奏曲部門」の第4番も、アルペッジョで弾き始める冒頭から、長いほうを選んで、ソナタばりの雄弁さで弾き切ってみせるカデンツァまで、実に見事。管弦楽によるレチタティーヴォの先駆けとなる第2楽章の弦を、かつてないほど鋭く弾かせたのは、「時が分断した」というシラーの詞に示される時代の重さを強調したかったからではあるまいか。
大賞銀賞に輝いた「声楽曲部門」の《セメレ》は、40年ぶりに再録音したガーディナーの執念が咲かせた大輪の花。第3幕で客席からの笑いが舞台と呼応するあたりはブッファのよう。演劇の国でハンデル(ヘンデル)氏のオラトリオが大衆的な人気を博した理由も、よく判る。
カサドのダブル受賞となった「管弦楽曲部門」ファリャは、曲の価値を再認識させる。《三角帽子》でファゴットを民衆の代弁者にしたのはベートーヴェン譲りで、「運命主題」も代官を一刺し。グラナダ生まれの血が騒ぐだけでなく、地産地生の声楽も濃厚。《恋は魔術師》の地声によるシャーマニズムは、レブエルタスの《センセマヤ》等にも繋がる。
「オペラ部門」は『神へのささげもの』の続編。伝説的カストラート『ファリネッリのためのアリア』で、バルトリ=アントニーニのコンビは一段と刺激的に。鈴木は、チェンバロを弾きながらアンサンブルをリードして《音楽の捧げ物》に挑戦(「室内楽曲部門」)。《ゴルトベルク変奏曲》の〈アリア〉を組み入れるあたりも慧眼。「器楽曲部門」ではジルバーマン・オルガンの豊かな響きを満喫させてくれる。現在、こうした二刀流では、明らかに世界のトップだろう。
「現代曲部門」のハンニガンはソプラノと指揮の二刀流。「今日のキャシー・バーベリアン」的に聴くならならノーノとグリゼだけでも充分だが、ハイドンの《受難》が絵解きとして、上手く納まっている。「音楽史部門」のレツボールが弾き振りで聴かせてくれる《ロザリオのソナタ》は、華麗な装飾に彩られたソロはもちろんのこと、白玉の音符がタイで連なるだけの単純な持続低音の楽器選択も秀逸。

カテゴリ : Classical キャンペーン

掲載: 2020年12月01日 00:00