ジョン・バリー、香り高い名作待望のCD化『白いドレスの女』
またひとつ、ファンの間で実現不可能と思われていた音源がCD化となる。
ジョン・バリー音楽による1981年作品『白いドレスの女』のサウンドトラック音源。 1960年代のロンドンのスタイリッシュなロックの洗礼を受けつつ、007シリーズでのダイナミックなサウンドの娯楽性と、その間にも『ナック』『野生のエルザ』『約束』『真夜中のカーボーイ』『美しき冒険旅行』『フォロー・ミー』などさまざまな人間ドラマを、独特の陰りをもった美しいメロディで、作品をユニークな香りを付加してきた映画音楽作曲家としてのジョン・バリー。
過去にも、『ベッツィー』や『ナイト・ゲーム』など、大人の色香がモチーフになった作品を担当していなかったわけではない。ハリウッドの気鋭の脚本家ローレンス・カスダンが初めて自身が監督する、大人のサスペンス『白いドレスの女』の音楽をジョン・バリーが担当したことは、自然なことでもあり、ドラマにおける美しいメロディを常に聞かせてきたバリーが、決して美しいだけでは終わらない危険なサスペンスにどんなサウンド、メロディをつけるのか、意外ではなく、それは自然な刺激であった。そしてその答え。映画ファン音楽ファンの支持を直ちに得ることとなり、スタンダード的位置にそのジャジーなメインテーマはつくことになった。
映画音楽ファンの多くが知る『白いドレスの女』のサントラ。だが、しかし、サントラ音源が、今まで容易に入手できる環境になったことはなかった。LPリリース、そしてCD化もされているが、いずれも限定プレス。後に、ヴァリース・サラバンド・レコーズがスコアを新たに録音してのアルバムをリリースした。ということで、サントラ音源は今回、初めてではないが、極めて貴重なリリースとなる。
今回、収録されるのはフィルム用マスターと、ソース・ミュージック(劇中のラジオから流れたり、サロンのBGMで流れている設定など、いわゆる"劇伴"とは意味を正確には異ならせる音楽。既成曲のカヴァーがされることも多いが、アレンジをスコア担当の作曲家が行うことがほとんどで、その点で興味深い音源となることが多い)、過去に限定でリリースされた貴重なアルバムのマスター、そして、さらに貴重な、テーマのデモ録音の10ヴァージョンだ。
今回、この渾身の企画を実現させたフィルム・スコア・マンスリーのCDシリーズは、まもなく最終企画を迎える。最終作品近くに迫り『天国の日々』『ベン・ハー』『グレムリン』『フランティック』『悪魔の赤ちゃん』と、サントラ・ファンなら誰しも待望作とわかる最後の大物的タイトルばかりを丁寧に発表しているフィルム・スコア・マンスリー。サントラ復刻シーン全てを総括しても渾身の代表仕事的な今回の『白いドレスの女』は、サントラ・ファンなら待望中の待望作だし、入り口として、もし聴くのであれば、あまりも贅沢な名作(名盤)の登場である。
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2012年08月24日 17:25