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日本を代表する名ベーシスト、松永孝義の未発表ライヴCD。マスタリングを手がけた高橋健太郎からの特別寄稿掲載

日本を代表する名ベーシスト、松永孝義の未発表ライヴCD

日本を代表する名ベーシスト・松永孝義(享年54)が惜しまれつつも逝去してから2014年で早くも2年が経つ。その三回忌にあわせて、未発表ライヴCD 『QUARTER NOTE』がリリースされた。『QUARTER NOTE』のマスタリングを手がけた高橋健太郎からの特別寄稿をこちらのページに掲載しています。ご覧ください。

【『QUARTER NOTE』収録曲】
01. Momma Mo Akoma Ntutu
(Yao Boye, Nathaniel Akwesi Abeka)
02. Jazzy
(Willie Colon)
03. Caminando Despasio
(大原裕)
04. Two-Step
(松竹谷清)
05. Pua Lililehua
(Mary Kawena Pukui, Kahauanu Lake)
06. Malaika                    
07. Dali Ngiyakuthanda Bati Ha-Ha-Ha
(George Sibanda)
08. よろしく
(大原裕)
09. Walk Slowly
(大原裕)
10. メンバー紹介
11. Africa
(Rico Rodriguez)
12. Hip Hug Her
(Cropper, Dunn, Jackson, Jones)
13. Two-Step
(Astro Hall 2004)
14. La Cumparsita
(Gerardo Matos Rodríguez)
15. Momma Mo Akoma Ntutu
(Shinsekai 2011)

Performed and Recorded at:
名古屋 CLUB QUATTRO, 2005年10月4日 (track 1, 2, 4, 9, 11, 12)
渋谷 CLUB QUATTRO, 2005年10月6日 (track 3, 6, 7, 8, 10 )
原宿 ASTRO HALL, 2004年7月16日 (track 5, 13, 14)
西麻布 音楽実験室 新世界, 2011年3月25日 (track 15)

Recorded and Mixed by 藤井暁(puff up)
Track 15 Live Mix by 桜井冬夫(sereza)
Mastering and Re-mix (track13. 15) 高橋健太郎at Memorylab


【松永孝義 The Main Man Special Band 参加ミュージシャン】

・松永孝義(Ba)

・桜井芳樹(Gt)
- ロンサム・ストリングス、小松亮太

・増井朗人(Trb)
- ex THE MAN、ex KEMURI、ex THE THRILL、ex MUTE BEAT

・矢口博康(Sax,Cl)
- ガストロノミックス、ex 東京中低域、ex リアルフィッシュ

・福島ピート幹夫(Sax)
- KILLING FLOOR、ex 在日ファンク

・エマーソン北村(Key, Cho)
- シアターブルック、ex JAGATARA、ex MUTE BEAT

・井ノ浦英雄(Drs, Per)
- 海の幸、ex サンディ-&ザ・サンセッツ、ex久保田麻琴と夕焼け楽団

・ANNSAN(Per)
- THE MANDOLIN BROTHERS、東京TOWERS

・松永希(宮武希)(Vo, Cho)
- ex RING LINKS

・ayako_HaLo(Cho)

・田村玄一(Pedal Steel, Cho):track 5
- K I R I N J I、ロンサム・ストリングス、LITTLE TEMPO

・今井忍(A.Gt):track 5
- アーリータイムス・ストリングス・バンド

・松竹谷清(E.Gt):track 13
- ex トマトス

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松永孝義「QUATER NOTE」が開くドアの向こう側
高橋健太郎

松永孝義というミュージシャンを知ったのは、多くの人と同じように、ミュート・ビートのベーシストとしてだったと思う。1980年代の半ばから、たくさんのライヴで、あるいはレコードで、その演奏を耳にしてきた。1990年代の半ばからは、僕が関わるレコーディンの仕事をお願いするようにもなった。そして、どんな時にも松永さんは「あの音」を聞かせてくれた。

 松永さんの「あの音」。あれは何だったのだろう?と今になって考える。好きなベーシストはたくさんいるけれども、あんな音を出す人は他に知らない。松永さんの愛用のフェンダー・ジャズ・ベースをスタジオで弾かせてもらったこともあるのだが、もちろん、僕が弾いても、あんな音はしなかった。

 10年くらい前のフジロックだったか、森の中をオレンジ・コートに向かって、歩いていたら、「あの音」が空から降ってきたことがある。気持ち良いなあ、と思いながら歩き続け、オレンジ・コートに着いてみると、ハシケンのバンドで松永さんが弾いていた。ああ、やっぱり、と思った。

 どんな場所でも、どんな環境でも、なぜ、「あの音」がしたのか。なぜ、「あの音」しかしなかったのか。松永さんがいなくなってから、そのことの不思議さはよけいに染みるようになった。そんな特別な音を奏でるミュージシャンを知ることができたのは、そればかりでなく、幾つかの濃密な時間をともに過ごすことができたのは、本当に幸せだったと思っている。

 思いがけなく、松永孝義The Main Man Special Bandのライヴ音源があるということを知らされたのは、今年の始め頃だった。録音していたのは、昨年11月に急死されたエンジニアの藤井暁さんで、それをライヴ・アルバムとしてまとめよう、というアイデアを藤井さんはずっと抱いていたらしい。

 藤井さんとも僕は長年のつきあいがあり、どこでどうして知り合ったのかは、80年代のことでもはや憶えていないが、やはり、1990年代の半ばからレコーディングの仕事をお願いするようになった。スタジオで生楽器の録り方について、たくさんのことを教えてもらった恩師的なエンジニアだったと言ってもいい。

 松永さんの伴侶であったシンガーの松永希さん、バンドのメンバーであったキーボード奏者のエマーソン北村くん、ギタリストの桜井芳樹くんらによって、そんな藤井さんが録音していた松永孝義The Main Man Special Bandのライヴ音源が一枚のアルバムにまとめられようとしていた。そして、彼らからの依頼で、僕はそのマスタリング・エンジニアを引き受けることになった。

 思えば、松永さんも藤井さんも長い髪を伸ばしっぱなしにしていて、僕の中では「間違って地上に降りてしまった天使のような男」というジャンルに入っていたりした。その二人がともにいなくなってしまい、音源だけが残されている、というのは、分かっていても、なんだかピンと来なかった。スタジオでそれをプレイバックすれば、生命力に溢れた音がスピーカーから飛び出してくるのだから。

 アルバムは2005年のツアーを中心にしてはいるが、2003年のバンドの最初のライヴから、2011年の震災後の最後のライヴまで、たくさんの音源の中から絞り込まれ、並べられたものだった。残されたメンバーがたくさんの会話の後に辿り着いた、これしかない、という選曲、曲順であるのが、分かった。そして、5月のある日、先の三人が僕のスタジオにやってきて、丸一日かけて、アルバムのマスタリングをした。

 音源の録音状態は様々だったが、マスタリングは何の迷いもなく、進めることができた。それぞれの会場の真ん中くらいにいたら、このバンドはこんな風に聞こえるはず〜こんな風に聞きたい、ということだけを考えれば良かった。

 松永さんのベースを聞かせることは、考える必要がなかった。余計な音を少し削っていくだけで、「あの音」は必ず、輪郭を現す。松永さんのことを想い過ぎて、ベースをプッシュしたりしないように、むしろ、気持ちを抑えるようにした。音楽の中でベースはこの位置を占める、と松永さんなら考えるはず。そのためには、他のメンバーの演奏をどのように気持ち良く空間に響かせるか。それを考えて、マスタリングした。

 スタジオには四人の人間がいたが、一日の終わり頃には、なんだか四人だけではないような気がしていた。隣の部屋で、藤井さんと松永さんが「なんや、健太郎がやってるんや」「普通でいいよお」などと喋ってでもいそうな。

 三人にマスタリングを施した曲を聞いてもらうと、「これは本当に渋谷クアトロの音がする」「このへんに柱があるのが分かる」などと言ってもらえたのも面白かった。音が人や場所の記憶を呼び起こす。完成したアルバム『QUARTER NOTE』は多くの人に、そういう経験をもたらす作品になったのではないかと思う。

 あるいは、生前の松永さんをまったく知らない人が、『QUARTER NOTE』を入り口にすることもあるかもしれないが、このアルバムからも当然のごとく聞こえてくる「あの音」に導かれていけば、豊かな音楽の鉱脈を幾つも見つけることができるのは間違いないと思う。数多くの録音作品ばかりでなく、ともに演奏した数多くのミュージシャンのこれからの音楽の中にも、松永孝義は生き続けているはずだ。クラシック、タンゴ、レゲエ、ロック、カントリー、ハワイアンなどを横断した彼の音楽家としてのスケール感は、僕にも到底、掴み切れないものがあるし、その意味では、『QUARTER NOTE』はドアの一つ。ドアの向こう側に歩いていくと、また思いがけないところで、僕も「あの音」に出会うのではないかという気がしている。

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●松永孝義 プロフィール

日本を代表する名ベーシスト、松永孝義の未発表ライヴCD

国立音楽大学時代はクラッシックを専攻。1980年代、東京ダウンビート黎明期、伝説的なDUBバンド“MUTE BEAT”で、それまでの日本では無かったドープなグルーヴを創造した名ベーシストであり、後にフィッシュマンズやリトルテンポといったフォロワー、チルドレンを生んだ。又時を同じくして“小松真知子とタンゴクリスタル”に参加。タンゴのベーシストとしても生涯活動し続けた。

彼は、あらゆるジャンルの実力派アーティストから信頼を置かれていたミュージシャンズ・ミュージシャンであった。ライブやレコーディングセッションなどで交流のあったアーティストをざっと挙げてみても~ジョー山中、篠原信彦、カルメン・マキ、高田渡、大原裕、トマトス、JAGATARA、篠田昌巳、ピアニカ前田、屋敷豪太、ヤン富田、いとうせいこう、高木完、上野耕路、原マスミ、ピチカート・ファイブ、UA、bird、畠山美由紀、くじら、LOVE JOY、近藤達郎、清水一登、芳垣安洋、勝井祐二、鬼怒無月、サンディー、ケニー井上、岡地曙裕、山内雄喜、ゴンチチ、BEGIN、平安隆、ハシケン、RING LINKS、土生剛、icchie、ロンサム・ストリングス、中村まり、小松亮太、千住宗臣、ミト、ハンバート ハンバート・・・・・・etc、その数は枚挙に いとまがない。

6/18にリリースされるCDは、唯一のソロ・アルバム『The Main Man』のリリースを契機に結成されたリーダーバンド”松永孝義 The Main Man Special Band”の未発表ライブ音源集となる。楽曲テイクの決定・選曲は、バンドメンバーが担当、ライナーノーツは、こだま和文(ex MUTE BEAT)が書き下ろし、アルバム・タイトルは、松竹谷清(exトマトス)が命名、フレンドシップあるベストメンバーによって制作された。

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●ライブ情報

~ 松永孝義 三回忌ライブ ~
松永孝義 The Main Man Special Band
『QUARTER NOTE』CD発売記念ライブ 

出演:
松永孝義 The Main Man Special Band:
桜井芳樹(Gt) / 増井朗人(Trb) / 矢口博康(Sax,Cl) / 福島ピート幹夫(Sax)
エマーソン北村(Key, Cho) / 井ノ浦英雄(Drs, Per) / ANNSAN(Per)/
松永希(宮武希)(Vo, Cho) / ayako_HaLo(Cho)

ゲスト:
松竹谷清(Vo, Gt) 、ピアニカ前田(Pianica)、
Lagoon/山内雄喜(Slack-key. Gt)、田村玄一(Steel. Gt)

会場:
西麻布 「新世界」 http://shinsekai9.jp/

公演日:
7月11日(金) 開場:19:00 / 開演:20:00

料金:
前売り予約:¥3,500(ドリンク別)

INFO・チケット予約・お問い合わせ先:
 西麻布 「新世界」
http://shinsekai9.jp/2014/07/11/the-main-man-special-band/

TEL:
03-5772-6767 (15:00~19:00)
東京都港区西麻布1-8-4 三保谷硝子 B1F

タグ : J-インディーズ

掲載: 2014年07月10日 12:00

更新: 2014年07月10日 12:00