ティンパニの強打、金管の強奏の血の濃さ、テンポの動きの多用~近衞秀麿“新世界より”が復活!
ベートーヴェンへの情熱、そして深い共感を魅せた近衞秀麿。彼はまた、民族色溢れるドヴォルザーク、スメタナの音楽に対しても、見事な解釈を聞かせます。
ドヴォルザークの「新世界より」は、言うまでもなく彼の代表作であり、全ての音楽好きに愛される名曲です。曲の成立については、以前は「新大陸で生活するドヴォルザークの望郷の念が込められている」という説がありましたが、最近の研究では、ドヴォルザークがアメリカでオペラを構想するも、それは実現しなかったため、その素材を散りばめて交響曲にしたという説も出ています。かなりドラマティックな様相を持つこの作品、もちろん近衞はその説は知る由もなかったはずなのですが、彼の指揮は間違いなく曲の本質を的確に捉えているものです。
ボヘミアの大地を吹き抜ける風を思わせる「スラヴ舞曲」、その風とともに肥沃な大地を流れていく「モルダウ」、どの曲にも万感の思いが詰まっている名演です。
宇野功芳氏ライナーノートより
今回のシリーズにおけるベートーヴェンやシューベルトで、枯淡な解釈の妙を聴かせてくれた近衞秀麿が、この《新世界》ではボヘミアの土俗感を十二分に発揮し、さながら別人のような演奏を示しているのは、彼が音楽のスタイルというものを人一倍重視している結果であろう。
両端楽章におけるティンパニの強打はベートーヴェンなどでは絶対に見られぬところである。金管の強奏の血の濃さ、テンポの動きの多用とともに、民族主義の作曲家であり、当然後期ロマン派にも属するドヴォルザークの個性を最大限に生かしてゆく。
オリジナル、アナログマスターテープから 192kHz/24bit マスタリング、ダイナミック・レンジの幅が広く、楽器のテクスチャを細かく捉えた優秀録音(ステレオ)です。
(ナクソス・ジャパン)
アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)
交響曲 第9番 ホ短調 作品95《新世界より》
1. 第1楽章 Adagio - Allegro molto
2. 第2楽章 Largo
3. 第3楽章 Scherzo. Molto vivace
4. 第4楽章 Allegro con fuoco
5. スラヴ舞曲 第10番 ホ短調 作品72-2
ベドジフ・スメタナ(1824-1884)
6. 交響詩《モルダウ》
演奏:
読売日本交響楽団
近衞秀麿(指揮)
録音:1968年6月3、4日 世田谷区民会館 ステレオ録音
解説書本文 24 ページ
解説書筆者 福永陽一郎、菅野冬樹、宇野功芳、藤田由之
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2015年09月18日 20:30