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長きに渡りアンダーグラウンド・シーンで活躍を続けるシスターポール、オリジナル・アルバム再発記念インタビュー

東京のアンダーグラウンド・ロックシーンにて92年から活動を続けるシスター・ポール。幾度かのメンバー・チェンジを経て現在はススム(Ba.Vo.),Mackii(Dr.Vo.)という2人で活動。シンプルでありながらグラマラスで妖艶な雰囲気を放つアンダーグラウンド色濃い曲は熱狂的なファンを生んでおり、カルト・バンドと言っても過言ではないだろう。あの宮藤官九郎氏もシスター・ポールのファンであることを公言しており、作・演出の「春子ブックセンター」のOPテーマソングに彼らの曲“銀のレインコート”を使用している。今回、長らく廃盤になっていた2ndアルバム『THEEDGEOFTHEWORLD』(2000年)と3rdアルバム『HOWL!HOWL!』(2001年)が紙ジャケ仕様で再発されることになり、それを期にインタビューを行うことが出来た。再発盤のことを中心に色々訊いた。

インタビュー、写真:吾郎メモ

シスターポール

──結成が1992年と伺っているんですが、その頃っていうのは、今とメンバーが全然違いましたよね?

ススム:最初5人だったんですよ。編成がドラム、ベース、ギター、ギター、ギターでギターが3人居たんですよ。で、揃ったメンバーで、僕が一番へたくそだったんで、僕がフォークギターやりますって言って、あと2人、ダブル・リードで。

──その頃、92年頃ってガレージパンクとかハードコアとか、東京のシーンがぐちゃぐちゃっとしてて面白い時期だったと記憶しているんですが、シスター・ポールはその中にいて、どのような立ち位置だったんでしょうか?

ススム:あの、そのですね、その時点だと立ち位置もなにもなくて、とりあえずバンド結成して、、、92年の7月頃につくるんですけど、その年の暮れに一回解散になっちゃうんですよ。ライブハウスに持っていくのにちゃんとしたテープ作ろうってなって、まずは曲作ろうってなって、曲作るのに9月くらいからスタジオ入って録音して、で、スタジオ入ったことによって、ちょっと仲違いしちゃってそれが原因で解散しちゃって、シーンとかなんとかじゃなかったですよ。その時点では。で、一回しばらく休んで、その間僕は長い貧乏旅行に出るんですけど、で、帰ってきてからようやくシーンみたいなものに参加するという感じですよね。それがもう94年なんで、92年はほとんど知らないですよね。観に行くくらいはしていましたけど。自分としてはやってないに近いです。

──最初はどんなバンドに興味があったんですか?

ススム:最初はですね、もともと僕、育った世代が、というか、けっこうマセてまして、80年代にティーンエイジャーだったんですけども、小学校5年生くらいからバンドやってまして、お兄ちゃんの影響なんですけども。聴く音楽もロックのレコードが家にあったんで、70年代ロックのレコードをずっと聴いてて、土台はその時代のロックなんです。でも当然パンクも通り抜けて、レゲエとかスカとかも通り抜けて、好きなのは70年代のロックなんですけど、そのままやるんじゃ面白くないというのはあって、ちょっと変わったことしようとか、そんな感じでやってました。で、今やることと、今回出るこのアルバム(2000年/2001年作品)と、92年の段階でメンバーが多かったとかそういう差はありますけど、基本的な軸は変わってないです。一番最初の時から、2人で歌おうってことになって、僕はフォークギターだったんですけど、僕、高い声で軽やかに歌いたいなぁっていうのがあって、当時のベースの人と2人で全曲ハモってやってましたね。

──音楽だけを抜き出してみると、まっとうな、と言っていいんでしょうか、まっとうなロックンロールのような感じがするんですよね。ルックス的には、たとえばオートモッドとかの影響かな?と思ったこともあるんですけど、音を併せて考えると、例えばルー・リードのトランスフォーマー時代とかの感じもするんですよね。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァーもしているというのもあるし。

ススム:ルー・リード、大好きです。僕は半分くらいは誰もやってないと言うと大袈裟ですけど、勝手なことをやりたいというのがあるんですが、あとの半分はルーツに沿った、というか、いままで自分が励まされたというか、救われたというか、そういうロックに敬意を払いたいというか、忠実でありたいというか、そういうのが半分くらいあるんですね。で、その半分忠実なところが、聴き方によってはオーソドックスなロックだな、って思われるんじゃないかな。

──曲としてはオーソドックスなロックを踏襲しているようでいて、Mackiiさんのヴォーカルが加わるとものすごい独特なものになりますよね。

ススム:結局、やっぱり何もないところからは作れないですよね。やっぱり2人が聴いてきたものから出てきたところから何かできるわけで。あとは僕は自分がずーっと聴いて励まされたりとか救われたりとかいう音楽を意図的に取り入れることで、そういう音楽に対して恩返しがしたいんですけど、でもやっぱりそのままやるのは嫌で(笑)

──歌詞のことなんですけど、「僕」って一人称なんだけど、女の人が歌ってたりという面白さはあって、それと内容的には少年の視点、情景みたいなものを感じるんですけど、意識的にこうしている、とかはあるんですか?

ススム:わからないですけど、Mackiiちゃんが入ってきたときに、化粧した男の子みたいだったんですよ。少年みたいな。22歳だったんですけど、髪も短くて、お化粧を綺麗にして、すごいいいな、この子って。それで、ギタリストのFOXXの方が後から入ってきたんですよ。当時はFOXXの前のギタリストと僕がいて、で、ドラムがやめてMackiiちゃんが入ってきて、前のギタリストと僕と3人でやってまして、なんの話でしたっけ?

──歌詞の話です(笑)

Mackii:(笑)歌詞はススムさんが全部書いているんですよ。だからススムさんの世界なんですけど。

ススム:で、前は僕と前のギタリストと2人で歌ってたんですけど、ギタリストが抜けて、FOXXが入ってきて、最初FOXXと僕で1時間くらい歌ったんですけど、うーん、ちょっとな、うーん?ってなって、で、ちょっと歌ってみない?ってMackiiちゃんに歌ってもらったら、しゃべる声と全然違うんですよ。あの、CDなんかの録音物だと叩きながら歌ってないのでまたちょっと違うんですけど、ドラム叩きながら歌うと、気持ちのこもったいい声が出て、よかったですね。

Mackii:へたくそなんですけどね。

ススム:へたくそなんだけどね、そこは僕も人のこと言えないんですけどね、、、あまりあの、気持ちの底で上手にやりたいなぁ、という気持ちがないので、これぐらいでいいやっていうのがあるものですから。これぐらいでいいやって言うと語弊がありますが、これくらいの方がカッコ良いや、っていうのがありまして。歌詞、ですよね(笑)歌詞は、、、。

──たとえば、ここでいう「僕」っていうのは大人の感じがしないというか。

ススム:ああ、パーセンテージとしては判らないんですが、7割がたは歌詞の“ぼく”は僕ですね。僕はずーっと気を付けてきたのは、自分の気持ちを歌うようにしてきました。でないとライブのときに歌えないんですよ。気持ちが入らないので。ライブで自分の気持ちを込めて、こう、放り投げるんですね。で、放り投げたものを受け取れる人が何人かいて、それで気持ちが通じ合う。それがもし放り投げるものに気持ちが入ってないと、受け取る方も受け取ったとしても伝わらないし。なので、まずは自分の気持ちを込められないとどうしょうもないですよね。それで、大人の感じがしないというのは、20代半ばくらいに作った曲が多いんですね。いまだにライブで歌う曲がいっぱいあるんですけども、あのいまもう51歳なんですけども、いまだに歌えるんですよ。ひとつは僕が子供っぽいっていうのもあるんですけど(笑)それ以前に、当時の気持ちを歌ってますんで、気持ちは移ろっていくんですけども、当時の気持ちだっていうのは判るんで、気持ちを込められるんですよね。これはあのとき味わった気持ちなんで嘘じゃないぞって。生活自体当時から大して変わってないですし、30年近く。気持ちもあまり変わってないですね。質問に戻ると、単純にその頃作った曲が多いというのがありまして。たぶん、気持ちの伝わる人には伝わると思いますね。蒲池さんとも出版するにあたって話しましたけども、もう伝わらない人にどうこうしてもしょうがない、伝わる人を探しましょうって。なので、どうして今回(再発を)OKしたかというと、廃盤になったときに買い取ってまして、原盤を。だから製作費なしで、ジャケットは今回少しお金をかけてもらったんですけども、その分たくさん売れなくてもいいですよー、というのがあったので、まあ、迷惑かけたくないというか(笑)売れないなーってなるとお互い気まずくなってしまうのもアレなもんですから。命があれば、死ぬまでずっとやってますんで、長期間でしたら、数は掃けると思います。ただし、瞬発力はないですけどね(笑)

──シスター・ポールって、かなりカルト・バンドだと思うんですよ。なので、好きな人はすごい好きだし。そういう人が増えていけばいいのではないでしょうか。

ススム:出会えるかどうかだと思うんですよね。ずーっとそれで。最近だと一軒一軒コンコンコンってドア叩いて、そういう人と出会っていくのが生涯の仕事だと思ってます。一生で何人に出会えるかわからないですけど。それしかないですよね。ラジオ出たりとかテレビ出たりとかのチャンスは私たちには無いですから、地道にコンコンコンって。ライブで偶然観てくれた人に気に入ってくれた人がいれば10人の前で1人いたらバンザーイ、でまた10人ってやって。そうやって数多くやり続けることだろうなぁ、と思ってますね。いいなぁって思ってくれる人と出会うとすごい喜びです。嬉しいですよね。で、そういう人がミュージシャンだったりする場合がけっこうあって、出会った人と、すごいですねー、よかったですねー、なんて言われて話してみると、こんなん出してますよとか。で、ミュージシャンじゃなくてもイラストレーターとか、いろいろやる人と出会うことが多くて、いいですねー、って言ってくれる人がどんなのやってるのー?なんて作品聴いたり、イラスト見たりとかして、なんだこれ、面白いじゃーんっていうのがけっこうあったりして、けっこう通じ合えるんですね。それ喜びですよね。

──最近、オカザえもん(愛知県岡崎市のゆるキャラ)と絡んでるじゃないですか。これはどういった流れなんでしょうか?

ススム:オカザえもん、いい人ですよねー。一番最初は、オカザえもんの制作グループみたいなのがありまして、あの辺東海地方のアーティストが集まるアーティスト集団みたいな形なんですけど、オカザえもんを共同で広めようみたいなグループがありまして、そのオカザえもんの前から、その中の1人が、僕らが名古屋でやったときにたまたま観に来てくれてまして、その人はタウン誌の編集長なんですけど。その人がまた次の機会に別の人を連れて観に来てくれて、岡崎に呼んでくれて岡崎でライブやったりしてそういう付き合いがあって、2年くらい前にフェイスブックで繋がって、そしたらその呼んでくれた人のページがオカザえもんだらけで、オカザえもんばっかりなんですよその応援の最中で。で、眺めてるとだんだん愛着がわいてきて(笑)ハットリくんみたいですよね。かわいいし。で、眺めてると曲がわいてきて、曲やりたいなーと思って連絡してみて、こういう曲やりたいんでいいですか?ってラフを送って。で、いいですよ、ってなって、それが縁でそのあと名古屋でやったときにオカザえもんが来てくれて。で、せっかく来てくれるなら楽器演奏してもらおうと思って。でもオカザえもんって手がこう(いわゆる着ぐるみの手)なんですよ(笑)終わったあと判ったんですけど、おそらく楽器の素養のある人で、でも手がこうなんで、テルミンと、ボタンだけ押してひねるシンセサイザーでノイズをバーッと出してもらったり。それをすごい上手にやって。そのときのライブのときの音をPA卓を通して録ってあったんで、それを編集してCDにして発売したんですよ。楽しかったですね。最近もやってるんですよ。東京に来てもらったりして。

シスターポール

──今回再発されるアルバムの話をしたいんですが、これってFOXX(ギター)さんがいるときの音源じゃないですか。僕はその頃のライブも観てるんですけど、今、FOXXさん抜けてからかなり長いじゃないですか?

ススム:そうですね。もう10年以上たちました。

──いま2人でやってて、3人時代のものを再発するというのはどういういきさつなんでしょうか?

ススム:それはお話しを頂いたからですね。僕は出そうっていう気持ちは特にもっていなくて、(サザナミの蒲池氏は)ゴーグルエースのときからずっと仲良しで、レーベル立ち上げてからも気にしてくれてて、今年もつい3か月くらい前に連絡頂いて、なんか出しませんか?っていう話だったんですよ。で、そういえばこんなのありますよ、ってお蔵入りしたボーナス・トラック。これちょっと廃盤になってますよーって言ったら、あ、それいいじゃないですか、ってなってボーナス・トラック2つに分けて。その時点で僕もう忘れちゃうくらい全然聴いてなかったんですけど。でもこれ1年掛けて作ってますんで、録音に。曲作りの段階からしたら5年くらい掛かってるんですよね。たぶん出してもぜんぜん恥ずかしいもんじゃないだろうな、というのはあって、その場でこういうのありますよって聴かずにファイルにして送ったら、あ、いいじゃないですか、って話になって出ることになっただけで、僕はこれを特に出したかったわけではないんです。ただ、嬉しいです。こういう機会をもらえて。これをもう一回聴いてもらえて、今の僕らにたどり着いてくれる人がいたら最高ですね。

──これは中村宗一郎さんがマスタリングされてるんですよね。

ススム:ボーナストラックもマスタリングしてもらってますね。録音は自分たちでスタジオでMTRで録って、被せものはピース・ミュージックで被せて、ミックスからは中村さんにやってもらってます。で、今回のリマスターもまたお願いして。

──いい感じのアナログ感が出ててバンドに合ってるような気がします。

ススム:すごいいいのはですね、たぶん僕のカン違いかもしれないんですけど、(中村氏がシスター・ポールのことを)好いてくれてまして、で、あの、言いたいことがすぐ伝わるんですよね。なので、それもいいですし、で、ちょっと直したいっていうところがあると、なんでも聞いてくれて、ああ、いいよって何回でも何回でも嫌がらずにやってくれるんですよ。たぶん、どのバンドもそういうことじゃないと思うんですよ。僕たちだけじゃないとは思いますけど、僕たちからしてみればありがたいなと。愛情を感じますね。歳も近いですしね。もう長い付き合いでもあるから。

──最終的に、ギターを補充しないで2人でやって行こうってなったのはどういう心境だったんでしょうか?

ススム:いろんな言い方ができると思うんですが、1つとしては、予感がありました。(FOXXが)抜けたときに、たぶん4、5回は抜けた状態でライブやったんですけど、それはもうメタメタでした(笑)。メタメタというほどでもないんですけど、中域じゃないですか、ギターって。それが抜けるともうほんとに寂しい感じになってしまって、、、ただ、考えてみると、その寂しいのがいけないのか?寂しくてもいいじゃないか?という風になって、例えばギターがあったときに聴こえなかったものが聴こえるんじゃないか?とか、リズムがすごい強力なんで、ギターが洋服だったとして、洋服が脱げたとしたら、骨と皮を見せればいいじゃないか、ってそうやって、もう裸になっちゃえ、髪立てちゃえ(笑)みたいなのが1つですね。で、予感があったっていうのは、実験的な、誰もやってないようなことが出来そうな気がしたんですね。いろいろやって楽しかったですよ。中域が無くなった分の中域を補充してみようと思って、ギター・アンプにベース・アンプも通してみたんです。でもただ通しただけではギターみたいな音はぜんぜん出ないんで、エフェクターで工夫してギター・アンプに突っ込んで。たとえばAC/DCだと、ギターとベースがずっと同じリフを延々とやってるとかいっぱいあるわけですよ。それだと思えばもうぜんぜん問題ないじゃないか、とか。あと、そこに至る以前にですね、たまたまお店で発見して、エレクトーンの足踏み部分を。それをMIDIで繋いで足で踏むとメロディーがボーっと出るのがあって、あー、これ使えるじゃないか!と思ったら、重さが10キロあるの(笑)これはちょっと荷物がいっぱいあって運ぶのが現実的じゃないなぁってなって、もっと軽いやつで、MIDIのオルガンを歯抜けにして足で踏めるように、わざわざ壊して(笑)スタジオに持ってったんですよ。そうしたらあれは踏んづけるようにはできてないんですね。壊れちゃった(笑)ポロポロとれちゃって、もう1回きりですよね。高いお金使いました。

──リチャード・ストレンジ(ドクターズ・オブ・マッドネス)とやったじゃないですか(2003/2004年)?あれはどういう経緯でやったんですか?

ススム:僕ラブ・コールして、、、すごい好きで。それこそこの人、いろいろ調べたんですけど、当時日本盤で3,000枚くらい売れた人らしくて、僕全然知らないんですけど、詳しい人に訊くと3,000枚売れると当時の70年代ではぜんぜんオッケーといいう枚数らしくて、その規模なら行けるか、でもちょっとなーって全然腰が引けてたんですけど、友達でロックの本書く詳しい人がいまして、頼んで話つけてもらったら、二つ返事でOKもらって、で、いろいろ相談して、ギャラとか飛行機代とかホテル代とかいろいろありまして、で、1人で来てくれるのが望ましいです、ってことになって、でも、バイオリンのやつだけ、いま一緒にやってるので、ちょっと若いやつなんだけど(デヴィッド・クールター(元ザ・ポーグス))、そいつだけ連れていっていいか、ということになって、はい、いいですって。それで回って、本当に幸せな日々でした。大変でしたけど。あれ、6か月トレーニングしました。曲全部覚えて。CD3枚分。何の曲ををやるか、全然連絡が来なくて(笑)なにも連絡こないな、どうしようかな、となって、でもやるからには本当にちゃんとやりたいな、というのもあったんで、全曲やろうってことになって。FOXXもいたんですけど。で、2年連続で呼んで、40万円赤字出しました(笑)それで、メンバー3人で12万、12万、12万で、その時のFOXXの彼女が4万円出してくれました。もうちょっと赤字出なければ続けて呼べたんですけどね、赤字が出るとなかなか大変で、そのあと皆でアルバイト一生懸命してね(笑)楽しかったですね。

──パンクの前の世代のUKアンダーグラウンド、ホークウィンドとかピンク・フェアリーズとかの辺がすごい好きな感じですか?

ススム:そうですね。パンクの前の世代が好きですね。ホークウィンドにしてもドクターズ・オブ・マッドネスにしても、売れたと言ってもマニアックな存在というか。例えば、僕スティーヴィー・ワンダーとかウィリー・ネルソンだとかのカントリーなんかもね、70年代のあの時代のはまんべんなく聴きましたけどね、でもホークウィンドにしてもドクターズ・オブ・マッドネスにしても、あの独特なシビレる感じありますよね。僕はジョブライアスとか凄いシビれますよね。大好きですよね。

──グラムからのUKアンダーグラウンドみたいな感じがど真ん中?

ススム:えーとですね、どの辺から始まるのかなぁ。今の自分の状況からすると、さっき言ったウィリー・ネルソンとかはルーツじゃないですよね。聴いたってだけで。いいなーなんてしみじみ思いましたけど。今の自分に繋がってくるものを当時に辿っていくと、マーク・ボランだとか、ニューヨーク・ドールズとか、あの辺ですよね。当時はいろいろある好きなもののひとつとして聴いて、段々好きなものがハッキリしてくるじゃないですか。ウィリー・ネルソンは別に今の自分の音楽には全く関係ないですよね。しみじみするなーなんて思いましたけど。(笑)

シスターポール

──アルバムの話に戻るんですけど、シスター・ポールって、むちゃくちゃ有名な曲(ベイ・シティー・ローラーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ボブ・ディラン、キッスなど)をカヴァーするじゃないですか。その辺の選曲の意図みたいなのはありますか?

ススム:それはライブ先行だからでしょうね。ライブだと、30分くらいしかできないですよね。ライブハウスで4バンドとか5バンドで。その中で全部自分達の曲で通すこともできるんですけど、知らない人が殆どなので、半分以上初めて観る人の中で演奏するときに、あ、これ聴いたことある!っていうのが1曲あると、嬉しいじゃないですか。自分もそういうとき嬉しかったりしたんで。だけど、そのままはやりたくないんです。なので、コピーではないですよね。

──たしかに、あれ?これ聴いたことあるな、なんだっけな?なんだっけな?ってなってあー、ってカヴァーだと気付く感じですね。

ススム:ぜんぜん、崩して、違う感じで。僕としてはあの、尊敬なんですけど、例えばルー・リードにしても。向こうからしたら冒涜かもしれないです(笑)このやろう!ってなるかもしれないです。でもいいです。向こうが聴いたりすることないでしょうからね。楽しいですよね。カヴァーはね。こんどはビートルズのカヴァーをまたでたらめにして演ろうと思って今スタジオでやってるんですけどね。

──そういうこともあるから、アルバムの中でもカヴァーが違和感なく存在しているのかもしれませんね。

ススム:そうですか。アルバムの中でも1曲知った曲があると、おそらく、あ、いいな、と思う人は思うと思うんですよね。

──今の立ち位置みたいな話すると、いわゆるアンダーグラウンドじゃないですか。

ススム:はい、そうですね

──ずーっとアンダーグラウンドにいるっていうことについてはどう思いますか?意思を持ってそこにいる、という感じもするのですが。

Mackii:ふふふ

ススム:それ、難しい質問なんですけど。望んでずーっとアンダーグラウンドでやってきたわけではないですね。でも、普通、そのいわゆるオーバーグラウンドっていうのは、人気を獲得して、大勢のお客さんの前でやったりとか、大勢のお客さんに受け入れられるっていう意味じゃないですか。例えば、ぜんぜん違う商売だとして、商品があって、それを誰かに買ってもらおうと思ったら、どんなものが喜ばれるかなー?とか、どんなものが役に立つかなー?とかみんな考えて作ると思うんですけど、そういうことはして来なかったですね。そういうことは考えたことが無くて、自分のやりたいことは何か?あとは自分たちで、、、メンバーはどんどん変わっちゃうんだけど、やれることは何か?というのを考えて、それがみんなに受け入れられればいいなぁ、とは思ってやってますけど、結果的にそうじゃなかったってだけのことで、今はもうずっとやり続けてまして、そう強くは「オーバーグラウンドに行きたいな」とか、「自分はアンダーグラウンドだな」とかどっちの意識も持ってないですね。続けてやっていくだけだな、と。

──フェイスブックを見ていると、とにかく「バンド」をやりたいんだ、という強い気持ちみたいなものをすごく感じるんですよね。

ススム:ほかにやることがないんで(笑)。(バンドが)無くなっちゃったらどうなっちゃうかしら、って。大げさですね。実際にはほかにやること探すでしょうけど、現時点で取り上げられちゃったらもう腑抜けの人みたいな感じになると思いますね。僕ね。あとは、望んで忙しくしちゃうタイプなんでしょうね。のめり込んじゃうというか、なんでもやりだすととことんやっちゃうタチで。この再発の音源もこの間15年ぶりくらいに聴いたんんですけど、もうかなり作り込んでましたよね。

──長くやっていると、だんだん擦り減ったり、だんだんやる気がなくなったりとかってあるじゃないですか、その中で、とにかくバンドをやりたいんだという気持ちが持続しているというのはすごいなと思ったんですよね。

ススム:あのー、、、たまにありますよ。どうしようかなぁー、とか、どうしてこんなこと、とか。たまにありますよ。でも、そういうのは誰にでもある話だと思うんですよね。ライブの最中だけとっても、ちっちゃいダメな瞬間っていうのはいっぱいあるんですよ。だけど、大きく見て、よし、ってなったらもうちっちゃいことは忘れる(笑)大きいことがよしだったらよしにしようって取決めがあって、自分の中で。それで続けていけてますよね。コツです(笑)

──キャッチコピーで「ゲイ・ロッカー」って書いてあるんですけど、これは自分で名乗ってる感じですか?

ススム:ああ、はい。言わされているわけではないです(笑)このアルバムを出した15年前には、こんなのはあからさまに言うような話ではないですから、これを聴いたりライブ見た人が、どうなのかな、そうなのかな?と思ってくれるくらいの方が素敵だなって。で、今回の再発にあたって聴き直してみると、そうだと言ってしまった方が自分たちの音楽は理解されやすいのではないかと思ったんですね。それで今、そう言うことに決めたんです。ちょっと話すと長くなっちゃうんですけど、左耳をダメにして。それが去年の夏なんで、1年半くらい経つんですけど、ずーっと「ジー」っていう馬鹿でかいノイズが鳴ってまして、聴こえることは聴こえるんですけど、低音と高音が全然聴こえなくて、でも一か所聴こえる位置があって、そこも正常な人よりは低いんですけど、そこで聴いちゃうんで、音楽聴くとメロディが変わって聴こえちゃって。そこに引っ張られちゃうようで。で、メロディが上がったり下がったりしてやりづらいところがあって。そこを耳栓でつぶして、つぶしても頭蓋骨から聴こえるんですけど、できるかぎりつぶしてまともな片っぽだけで音楽やるんですけど、その片っぽのほうも、僕達は激しいライブやるんで、ライブ自体が激しい運動しているようなもので、たまにこっち側(聴こえる方)も詰まっちゃうことがあって、訳わからなくなって。で、そういう目に何回も遭うと、これ、いつまでできるのかなぁというのがあって。だいぶ落ち着きましたけど、さっきも言いましたけどずーっとやるぞっていう気持ちはあるんですけど、いつまでもできないなぁ、っていうのが違うところであって、そうなるとジワジワジワーってみんなに浸透していくよりも、もう単刀直入にグサッと気持ちに突き刺さるような言動とか行動とかをとりたいな、と強く思うようになって。それでこんど「東京ゲイ・ロッカーズ」ってイベントやるんですよ。初めて。なかなかバンドも難しいですけど、面白くなると思うんですよね。

──なかなか思い切った言葉だな、とは思いましたね。

ススム:あとはね、僕さっきも言いましたけど、ルー・リードが好きでね、ルー・リードが、こっちのダメな方の耳元でいっつもつぶやいてるんですよ「ワイルドサイドを歩けよ、お前」って。その影響もありますかね。「どぎついことやれよ、お前」って。ずっと言ってますね、悪い方の耳元で。

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『オカザえもんロック』収録曲

『夢遊病者の夢 II』収録曲

タグ : J-インディーズ

掲載: 2015年12月05日 14:21