ヤンソンス&バイエルンの新録音はドヴォルザーク第8と父アルヴィドが愛したスークのセレナード
ヤンソンスにとってドヴォルザークの第8はオスロ・フィル、ベルリン・フィル(来日公演映像)、ロイヤル・コンセルトヘボウ管と繰り返し録音してきた得意作品。またスークの弦楽セレナードは、父アルヴィド・ヤンソンスが東京交響楽団と演奏し、同団との録音も残した曲目。注目のカップリングです!
スークの弦楽セレナードとヤンソンス親子
マリス・ヤンソンスの父、アルヴィド・ヤンソンス(1914年10月24日~1984年11月21日)は旧ソ連の指揮者として活躍し、かのムラヴィンスキーとともに名門レニングラード・フィルの指揮者を務めたほか、1958年には東京交響楽団に初めて客演し、短期間でその演奏水準を向上させたことから「鉛を金に変えた」錬金術師の異名を取りました。東京交響楽団には亡くなる年まで断続的に客演を続け、同楽団は彼に永久名誉指揮者の称号を贈っています。
彼が1958年の初来日時に指揮したスークの弦楽セレナードは絶賛を博し、演奏会の後に急遽セッション録音され、翌年、新世界レコードより25センチLPとして発売されました。また、2014年11月30日の演奏会で東京交響楽団は、アルヴィド・ヤンソンスの生誕100年&没後30年を記念して、「氏が愛した作品」としてスークの弦楽セレナーデ第1楽章をアンコール演奏しています。
つまりマリス・ヤンソンスにとってスークの弦楽セレナードは、父アルヴィドと日本の愛好家を結ぶ作品にあたる訳です。ドヴォルザークの第8も楽しみですが、ぜひスークの弦楽セレナードの演奏にもご注目いただければ幸いです。
(タワーレコード)
ヤンソンスの「ドヴォルザーク8番」といえば、2007年にロイヤル・コンセルトへボウ管との録音を頭に浮かべる人も多いでしょう。一切のムダを配した筋肉質な響きの中にそこはかとなく漂う叙情性は、まさにヤンソンスならではの世界を表現したものとして、現在も評価の高い演奏です。
そのヤンソンスによるバイエルン放送交響楽団とのドヴォルザークは、昨年録音された「スターバト・マーテル」(900142)も素晴らしいものでした。全編を覆う深い悲しみと、最後にもたらされる暖かい希望。このコントラストが鮮やかに表現された演奏は、ヤンソンスとドヴォルザークの親和性をも感じさせる見事なものでした。
そして2016年に収録された「第8番」では、一層密度の濃いドヴォルザークを聞くことができます。彼の全交響曲の中で、もっともボヘミア要素が高いと評されるこの作品は、ト長調という明るい調性と、メリハリのある曲想が広く愛されており、とりわけ第3楽章の哀愁漂う旋律は一度聞いたら忘れられないほどのインパクトがあるものです。もちろんオーケストレーションも精緻を極めており、至るところに現れる対旋律の面白さや、終楽章のフルート・ソロのような、各々の楽器を際立たせるやり方も円熟期のドヴォルザークを示すものです。もちろんヤンソンスは全ての難関を易々とクリア。満足のいく演奏を展開していきます。「謝肉祭」は序曲「自然と生命と愛」の中の1曲。全編華々しく賑やかな明るさ全開の作品です。
珍しいスタジオ・レコーディングであるスークの「弦楽セレナード」は、やはりドヴォルザークに深い関連を持つ作品で、もともと「短調が支配する暗い曲」ばかりを書く傾向があったスークに「もっと明るい曲を書くように」と示唆したのが、後に義父となるドヴォルザークだったというエピソードがあります。
こちらは落ち着いた美しさと、ほっとする明るさを楽しめます。
(ナクソス・ジャパン)
1-4.アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904):交響曲 第8番 ト長調 Op.88
5-8.ヨーゼフ・スーク(1874-1935):弦楽のためのセレナード 変ホ長調 Op.6
9.ドヴォルザーク:序曲“謝肉祭”Op.92
演奏: バイエルン放送交響楽団/マリス・ヤンソンス(指揮)
録音 2016年1月29-30日 ミュンヘン ガスタイク ライヴ収録…1-4, 2016年1月25日 ミュンヘン スタジオ・レコーディング…5-8, 録音日明記なし…9
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2016年03月11日 19:30