近衞秀麿が1962年筑摩書房のフォノシートのために録音した“運命”がCD初復刻!
筑摩書房 昭和37年3月発行「世界音楽全集別巻4」の表紙写真
近衞秀麿、渾身の「運命」
近年新たな情報も次々と公開され、注目の機運が高まっている近衞秀麿(1898-1973)。また新たな注目音源が発見されました。
本音源は筑摩書房から1962年に発刊された『世界音楽全集』に添付されたフォノシートのために録音されたもので、LPのような形では一切販売されませんでした。オリジナルのマスターテープは既に喪失したため、録音時期、場所を含む詳細データも見つかっていない、まさに幻の音源です。そのため今作では現存する数少ない未使用のフォノシートから慎重に採取し、あえてノイズリダクションはあまり施さず、原盤のエネルギーを損なわないよう細心の注意を払いました。
フォノシート5枚分、30分以内という制約のなか、一発撮りでの録音は大変な集中力が要求されますが、決して窮屈になる事なく軽快さすら感じられる演奏で、近衞の統率力がひしひしと感じられます。
近年の研究成果を踏まえた海外での活動年表付で、資料的価値も高い必聴の一枚です。(Fontec)
【収録内容】
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」〈近衞秀麿 版〉
近衞秀麿 指揮 近衞交響楽団(モノラル)
フォノシート(Phonosheet)とは
1958年、フランスのS.A.I.P.社によって開発された塩化ビニール製の極めて薄いレコード。当時のLPやEPなどのレコードと比べて音質は劣るものの、薄く、軽く、安価であることで、世界的に普及しました。柔らかく、しなる材質は本や雑誌の付録にぴったりで、現在のCD付きやDVD付きの雑誌などと同様のミックス・メディアとして用いられました。17センチ、33回転のフォノシート片面の収録時間は6分程度で、「運命」全曲を収めるためにフォノシート片面盤5枚を要しています。ちなみに1962年発行の筑摩書房「世界音楽全集別巻4」の定価は450円。同年の大卒初任給は17,130円に対し、当時のLPレコードの定価は25センチ盤で1,000円、30センチ盤で2,300円ほどと高価でした。
(タワーレコード)
復刻状態について
試聴用のCDRを聴く限り、想像以上の良好な復刻状態と感じました。フォノシート特有のサーフェスノイズは入っていますが、パチパチノイズはまったく無く、たいへん聴きやすい、まとまりの良いモノーラル録音となっています。上記、フォンテックのインフォにある「あえてノイズリダクションはあまり施さず、原盤のエネルギーを損なわないよう細心の注意を払いました」という言葉そのままのサウンドにより、演奏の生命力の豊かさや、音を足したり引いたりしながら楽曲が良く響かせ、かつ主題を引き立たせた近衞版の面白さがダイレクトに伝わってきます。
(タワーレコード)
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オリジナル、アナログマスターテープから 192kHz/24bit マスタリング、ダイナミック・レンジの幅が広く、楽器のテクスチャを細かく捉えた優秀録音(ステレオ)です。
(ナクソス・ジャパン)
宇野功芳氏ライナーノートより
近衞秀麿は楽器の性能を熟知し、オーケストレーションに精通していた。とくにベートーヴェンの交響曲については造詣が深く、生涯をかけてスコアの改訂に取り組んだ。木管や金管を単にだぶらせるだけではなく、時には4人、全部に別の音を吹かせるほか弦の奏法の改変、ティンパニの
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演奏:
渡辺洋子(ソプラノ)
長野羊奈子(アルト)
藤沼昭彦(テノール)
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二期会合唱団
読売日本交響楽団
近衞秀麿(指揮)
録音:1968年9月6.12.13日 厚生年金会館 ステレオ録音
解説書本文 24 ページ
解説書筆者 藤田由之、菅野冬樹、宇野功芳
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※初発売。ステレオ録音
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※解説:藤野竣介氏、前川公美夫氏(序文解説)、解説書合計8ページ
【収録曲】
1.ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 Op.21(近衞秀麿 版)
2.ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92(近衞秀麿 版)
【演奏】
札幌交響楽団
近衞秀麿(指揮)
【録音】
1963年9月6日 札幌市民会館、第22回定期演奏会ライヴ
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