1988年生まれの新鋭、坂入健司郎と東京ユヴェントス・フィルによるブルックナー:交響曲第8番
当日のコンサート・チラシ
当日のコンサート印象記
2016年1月9日、坂入健司郎指揮、東京ユヴェントス・フィルハーモニー、すみだトリフォニーホールでの演奏会を、深い感動とともに聴きました。このコンビの演奏会は、2014年1月11日のブルックナー交響曲第5番(杉並公会堂、ALTL005でCD化済み)からずっと追いかけていますが、演奏技量、芸術性とも大きな進化と深化を遂げていると思います。ブルックナーの第5のときは、坂入さんの指揮の構想の大きさと理想の高さに、このアマチュア・オーケストラの若いメンバーが必死についてゆく姿も加わった感動でした。今回は坂入さんの楽曲に対する読みが更に深くなり、一部プロが加わった楽員たちもそれを更にしなやかに音にする技術とアンサンブルを有していました。すみだトリフォニーホールの素晴らしい音響効果も、演奏会成功の大きな力となりました。
前半はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。このコンビは作品の情景、空気感、様式感、時代精神、何れも見事に表現し、幻想的な“一場の夢”を体感することができました。“牧神”と“ブルックナー第8”の組み合わせは、ともにワーグナーの“トリスタンとイゾルデ”から影響を受けた作品であることが理由とのこと。このような指揮者の楽曲に対する確かな様式把握と、楽員たちの演奏技術の向上が手を結んだ名演と言えるでしょう。
後半はブルックナーの最高傑作、交響曲第8番。実力向上したオケを駆使した坂入さんの演奏は、終楽章に向かってエネルギーが集中するように設計されていて、事実そのフィナーレが圧巻の出来栄えとなりました。3つの主題の呈示は音楽的エネルギーを一貫させながら丁寧に行われ、突然の金管による「死の行進」も、音量とテンポのギアチェンジが効果的でした。第3主題が荒々しく展開された後、第1主題が次々に変容してゆく部分の、譜面のページをめくる毎に情景が変化していゆく美しさも最大限に生かされました。
第1主題の壮麗で輝かしい再現、第2主題の感慨に満ちた再現、コラール再現での美しいハーモニー。第3主題再現の弦楽器群の不安気な表情も絶妙。コーダ冒頭の神秘的な表情、胸高まるクレッシェンド、天空から差し込む光、何れも見事。ハ長調への転調してからの圧倒的なスケール感は実に感動的でした。
(タワーレコード商品本部 板倉重雄)
「これはまずい。いい音楽じゃないか。そのへんの本場よりよほど聴きごたえがあるじゃないか。この若者には才能があるのだ。」
音楽評論家 許光俊
「あふれ出るブルックナーへの愛、想い。祈りも烈しい情趣もお任せあれ。知情意兼ね備えた坂入健司郎渾身のタクト。尽くすオーケストラ。これぞライヴ、これがライヴ。いや、素晴らしい!」
音楽評論家 奥田佳道
注目の新人指揮者坂入健司郎(さかいりけんしろう)氏のブルックナーシリーズ第2弾は8番。大チェリビダッケもかくやの美しいハーモニーが聴く人を包みます。新人離れの悠揚迫らぬ風格あり。東京ユヴェントス・フィルもうまい。
(キングインターナショナル)
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(1890年改訂稿)WAB.108
坂入健司郎(指揮)、東京ユヴェントス・フィルハーモニー管弦楽団
ライヴ録音:2016年1月9日/すみだトリフォニーホール
坂入健司郎 プロフィール
1988年5月12日生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。これまで指揮法を小林研一郎、山本七雄、三河正典、井上道義各氏に、チェロを望月直哉氏に師事。
また、モスクワ放送響音楽総監督ウラディーミル・フェドセーエフ氏、元アルメニア国立放送交響楽団音楽監督井上喜惟氏と親交が深く、指揮のアドバイスを受け、アシスタントを務めている。
13歳ではじめて指揮台に立ち、2006年慶應義塾高校ワグネル・ソサィエティ・オーケストラの正指揮者に就任。
2007年3月東京芸術劇場で行なわれた定期演奏会ではチャイコフスキーの『交響曲第4番』をメインとしたプログラムで成功を収め、音楽現代2007年5月号において「クライマックスを作るのが実に上手く、白熱した名演となり未来の巨匠ぶりを存分に発揮していた。」と絶賛される。再び同誌9月号の特集「今、期待の若手指揮者に注目」では、将来を嘱望される新鋭と評された。
これまで、イェルク・デームス氏、舘野泉氏、小山裕幾氏など世界的なソリストとの共演や、数多くの日本初演・世界初演の指揮を手がけ、好評を博している。
東京ユヴェントス・フィルハーモニー
2008年「慶應義塾ユースオーケストラ」という名称で、慶應義塾創立150年を記念する特別演奏会のために慶應義塾の高校生・大学生を中心として結成されたオーケストラ。総勢約100名による編成。
2014年には、幅広い年齢層や出身のメンバーが集い、より広く門戸をひろげて文化活動に貢献する存在でありつづけることを願い、団体名称を「東京ユヴェントス・フィルハーモニー」に名称を変更し、より一層精力的な活動を続けている。
フルーティストの小山裕幾氏をソリストに迎えた創立記念演奏会(2008年12月16日)は成功を収め、その後も、イェルク・デームス氏をソリストに迎えた第2回演奏会や、ジャン・シベリウスの日本初演を行なった第3回演奏会、舘野泉氏をソリストに迎え2曲の協奏曲を演奏した第4回演奏会など、毎回独自の演奏会を企画し、数多くの世界初演・日本初演を手がけており、各方面から好評を博している。
(東京ユヴェントス・フィルハーモニーHPより)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2016年04月22日 18:30