秋のはじまりに4つの個性的な“四季”が登場!
J-POPの世界では昨今、ヒットの条件としてまず挙げられるのが、NHKの朝ドラのテーマ曲に選ばれることなのだそうです。確かに老若男女に幅広く親しまれている楽曲が多いですね。そして、その伝でいうなら、1975年から76年にかけて放送された「おはようさん」は、ヴィヴァルディの“四季”をお茶の間に届けて、バロック音楽の代名詞にしてくれた最大の功労者でしょう。“春”の冒頭の爽やかさは、一日のはじまりにぴったりでした。
しかし、これほど親しまれている割には、“四季”は不思議な来歴を持つ音楽です。この作品の題名を付けたのがヴィヴァルディ自身でなかったことはよいとしても、ファンなら内容をそらんじることができるあのソネットも実は、いったい誰の作品なのか判ってはおりません。今でこそ通奏低音に当たり前のようにチェンバロを使い、さらにはテオルボやギターまで繰り出して賑やかに掻き鳴らす演奏も現れていますが、音楽学の世界では、当時のヴィヴァルディが使用できたのは小型のポジティヴ・オルガンだけだったという説もあります。
そんな曖昧さが却ってアーティストの創造力を逞しくし、この21世紀に百花繚乱のごとく“四季”の演奏が咲き乱れているのかもしれません。ご存知のとおり、CDの種類はとても数え切れないほど。そんな過酷なバトルフィールドに、新たに加わった個性的な4枚をご紹介します。(タワーレコード)
タスミン・リトル弾き振り~ヴィヴァルディとパヌフニクの「四季」!
(SACDハイブリッド盤)Chandos主力の専属アーティストの一人、イギリスが誇る女流ヴァイオリニスト、タスミン・リトルが、ついにヴィヴァルディの「四季」を録音!これまで数々の知られざる作品を録音、発掘してきたタスミン・リトル。今回は、ヴィヴァルディの「四季」に、ロクサンナ・パヌフニクの「四季」をカップリングするという独創的なプログラム。
ロクサンナ・パヌフニク(b.1968)は、作曲家アンジェイ・パヌフニクの娘として生まれたポーランド系イギリスの女流作曲家。今回が世界初録音となる「世界の四季(Four World Seasons)」は、タスミン・リトルのために書かれたヴァイオリンと弦楽オーケストラのための作品。アルバニア、チベット、日本、インドのそれぞれの四季を描いており、「アルバニア」は父親に、残りの3楽章はタスミン・リトルへと捧げられています。タスミン・リトルが描くヴィヴァルディの傑作、そしてR・パヌフニクの新作という衝撃の新録音です!(東京エムプラス)
【収録曲目】
ヴィヴァルディ
ヴァイオリン協奏曲集“四季”Op.8 No.1-4
ロクサンナ・パヌフニク
世界の四季(アルバニアの秋、チベットの冬†、日本の春、インドの夏)世界初録音
【演奏】
タスミン・リトル(ヴァイオリン&指揮)
BBC交響楽団
グレアム・ブラッドショウ(チベットのシンギング・ボウル)†
デイヴィッド・ライト(チェンバロ)
【録音】
2016年1月4-6日、セント・ジュード・オン・ザ・ヒル教会、ロンドン
ヴァイオリニスト、ズヴェーデンを聴く!切れ味鋭い「四季」が復活
今では指揮者として有名なズヴェーデン。彼は1979年に若干19歳でアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサート・マスターに就任、以後1995年までそのポストを務め上げたヴァイオリンの名手でもあります。このディスクは古楽奏法を取り入れたモダン楽器によるアンサンブル、コンバッティメント・コンソート・アムステルダムとの共演で、1990年録音の再発売。針のように細く尖ったソロが印象的な、切れ味鋭い「四季」を聴かせています。ズヴェーデンが古楽演奏にも長けていたことが分かる貴重なディスクです。
カップリングはソロを持たない弦楽作品3曲。優しく柔らかなフーガを持つRV.130、半音階下降のバスによるシャコンヌを持つRV.157、ほら貝を思わせるユーモラスな「コンカ」 RV.163 を収録しています。(キングインターナショナル)
【収録曲目】
ヴィヴァルディ
ヴァイオリン協奏曲集“四季”Op.8 No.1-4
4 声のソナタ 変ホ長調“聖墓にて” RV.130
弦楽のための協奏曲 ト短調 RV.157
弦楽のための協奏曲 変ロ長調“コンカ” RV.163
【演奏】
ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン(ヴァイオリン)
ヤン・ヴィレム・デ・フリエンド(指揮)
コンバッティメント・コンソート・アムステルダム
【録音】
1990年2月19-21日、6月4日
佐藤俊介がドイツ古楽界のパイオニア的な団体コンチェルト・ケルンと“四季”を録音
「コンチェルト・ケルンと“四季”は、そのままで相性が最高なのですよ」と名門オリジナル楽器オケのコンサートマスターを務めている佐藤俊介は、そうインタビューに答えています。「でも、あらゆる瞬間に、常に何か新しさを求めてもいるんです」。
そう語る彼らのパイオニア精神は、選曲とその組み合わせにもよく表現されています。“四季”を「春」「夏」と「秋」「冬」の2つに分割し、それぞれのアタマに別の楽曲をもって来るというアイデアがそれ。さて、その効果のほどは?
1985年に正式発足し、実に30年を超える歴史を誇るコンチェルト・ケルンですが、なんと“四季”のレコーディングは初めてとのこと。楽曲と古楽器オケとの相性の良さを佐藤のソロがどんな風に繋いでくれるのか、興味津々の最新録音です。(タワーレコード)
【収録曲目】
ヴィヴァルディ
弦楽のための協奏曲 ト短調 RV.156
ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 RV.269「春」
ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV.315「夏」
シンフォニア ロ短調 RV.169「聖墓にて」
ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 RV.293「秋」
ヴァイオリン協奏曲 ヘ短調 RV.297「冬」
【演奏】
佐藤俊介(vn)
コンチェルト・ケルン
古楽ファンに絶大な人気を誇るレツボール、ついに“四季”を録音!
(SACDハイブリッド盤)オーストリアのバロック・ヴァイオリン奏者、レツボールによるヴィヴァルディの「四季」が登場。レツボールはムジカ・アンティクヮ・ケルンやクレマンシック・コンソートのメンバーとして活躍し、1995年に自らのアンサンブル、アルス・アンティクヮ・オーストリアを結成。古楽ファンに絶大な人気を誇るヴァイオリニストです。
「春」は速すぎないテンポ設定でじっくりと練り上げた演奏。通奏低音には柔らかな音のオルガンを用い、きびきびしただけの「春」とは違った作りこんだサウンドが印象的です。「夏」終楽章は一転、手加減なしの高速で弦が軋み火花散る熱演!「冬」第2楽章のヴァイオリン独奏も緩急自在で美しいです。
カップリングはヴィヴァルディの弟子でチェコの作曲家、フランティシェク・イラーネク(1698-1778)のヴァイオリン協奏曲。師の後期作品に近い作風で、熱気と独特な暗さを備えたカッコいい1曲です。(キングインターナショナル)
【収録曲目】
ヴィヴァルディ
ヴァイオリン協奏曲集“四季”Op.8 No.1-4
イラーネク
ヴァイオリン協奏曲ニ短調
【演奏】
グナール・レツボール(ヴァイオリン、指揮)
アルス・アンティクヮ・オーストリア
【録音】
2016年4月21-24日
カテゴリ : ニューリリース | タグ : SACDハイブリッド(クラシック)
掲載: 2016年09月26日 15:49