ロベルト・オルサー・トリオのアルバム『DREAMSVILLE』
ジャズを聴き始めようと言う人に与えるリトマス試験紙のような演奏がある。Atlantic盤の二枚組、MJQのThe Last Concert(全然Lastじゃないんだが)A面ー曲目、Softly as in a Morning Sunrise…「朝日のごとくさわやかに」がそれだ。何故か?これを聴いて「ジャズもええやん」と思わなければ、彼か彼女は多分ジャズと縁が結べないから… と、古来(?)言われている。
その伝で行けば、このアルバムを聴いて「これダ!」と感じない人はサワノの音とは仲良くなれない人だ… 言い過ぎとお思いだろうか?逆に見るなら、Roberto Olzerの新作は前作同様に「これぞサワノのジャズ」を体現している、と感じる。澤野工房は日常に寄り添える、心地良く、そして質の高い音楽を皆様に提供し続けてきた。そう、自負している。そこそこの歴史も刻んできたが、その歩みの中で出会うべくして出会ったのがRoberto Olzerのピアノと世界観だった。
北国の森のただ中にひっそり清水を湛える湖のように、透明で深みがあり、そして、風に舞う紅葉のように、繊細で優美。しかも、聴きやすい。BGMとして邪魔にならず、聴きこめばそのクオリティに打たれる。蒼い炎のような静かな情熱が胸に泌み入る。まずはオープナーのNovembreー曲を聴いて戴けるだけで良い。あなたは必ず虜になる。そして心惹かれるまま導かれれば、そこは音楽のDreamsville(夢の街)だ。ジャケットと内容も完全一致。アトリエ・サワノ面目躍如の一枚である。
Text by 北見柊
Roberto Olzer Trio『DREAMSVILLE』
01. Novembre
02. Dreamsville
03. Beau Piece
04. Violin Concerto
05. Ferragosto
06. New Old Age
07. The Oldest Living Thing
08. Unlikely Taiko
09. Fragile
10. Com'è lunga l'attesa
11. Maybe Next Time
12. Morgen
Roberto Olzer - piano
Yuri Goloubev - bass
Mauro Beggio - drums
タグ : ジャズ・ピアノ
掲載: 2016年10月31日 14:40