「シティ・ソウル(City Soul)ディスクガイド」掲載作品から小渕晃氏の書き下ろしコメントでオススメCDをご紹介 最終回(定期更新:全7回)
『シティ・ソウル ディスクガイド』
~シティ・ポップと楽しむ ソウル、AOR&ブルー・アイド・ソウル~
「80sリヴァイヴァル~ブギー/ディスコ・ブーム」と、「国内のシティ・ポップ人気とも関連する、世界的なクロスオーヴァー・ポップス人気の高まり」。『シティ・ソウル ディスクガイド』は、いまの音楽シーンにおけるこの二大潮流を踏まえ、1970年代~2010年代のソウル、AOR&ブルー・アイド・ソウルの名盤およそ600枚をあらためて紹介するディスクガイド本です。「シティ・ソウル」を、クロスオーヴァーな洗練されたポップ・ミュージックで、ヒップホップ以降も通じるある種のグルーヴを備えた作品とゆるやかに定義。音色とBPM(テンポ)にこだわって、いま聴いて心地いいと感じる名曲/名盤をセレクトしています。
『シティ・ソウル ディスクガイド』
(DU BOOKS刊)
・編著者
小渕 晃(元bmr編集長)
・著者
梶本 聡(ベイビー・レコーズ)
駒木野 稔(diskunion / Kissing Fish Records)
関 美彦(SUNDAY GIRLS)
高木 壮太(CAT BOYS / 井の頭レンジャーズ etc.)
高橋 一(思い出野郎Aチーム)
林 剛(R&Bジャーナリスト)
福田 直木(BLUE PEPPERS)
・インタヴュー・ゲスト
冨田 恵一(冨田ラボ)
クニモンド瀧口(流線形)
DJ JIN(RHYMESTER / breakthrough)
G.RINA
『シティ・ソウル ディスクガイド 』からCDが登場!
まずはディスクガイドを『シティ・ソウル ディスクガイド~シティ・ポップと楽しむ、ソウル、AOR &ブルー・アイド・ソウル』をリアルに体感するコンピレーションCDが小渕晃氏の選曲で完成。ヒップホップ以降、50年近くに及ぶシティ・ソウルの系譜を受け継ぐ、ソウル、AOR&ブルー・アイド・ソウルなどをクロスオーヴァーしながら“今”の音楽シーンにフィットするサウンドを余すところなく収録。
さらに12月にはストレート・リイシュー第1弾として、AORやフリー・ソウルファンにも絶賛されたラチュール『ラチュール』が紙ジャケット仕様で発売決定。ラテン~アイランド・フレイヴァーたっぷりに、AORやディスコもブレンドした極上のグルーヴをご堪能下さい!
入手可能な作品の中からオススメCDをご紹介。
コメントは小渕晃氏の書き下ろしで、読めるのはタワーレコードだけ!
【Part 7 2009-2018】
「2010年代のキング・オブ・ポップ」のデビュー作
Bruno Mars / Doo-Wops & Hooligans
・オススメ曲
Just The Way You Are
Our First Time
いまと同様にポップ・ソウル流行りだった1980年前後、カラパナを始めハワイの歌い手たちが大人気でした。そして、再びポップ・ソウル全盛の2010年代、天下を取ったのはやはりハワイ出身のブルーノ・マーズ。コアなサウンドが流行った後にハワイ発の王道ポップスが流行るのは必然のようです。”Our First Time”始めハワイ流レゲエ曲も人気の秘訣。
2010年代の最重要アルバムは、サウンドも超高品質
Daft Punk / Random Access Memories
・オススメ曲
Get Lucky
Fragments Of Time
ナイル・ロジャーズやネイザン・イーストといった「ホンモノ」たちと、80年前後のディスコ、AOR/フュージョンをアップデイト。ポップス界最高峰の超高品質サウンドも絶品で、盛り上がりつつあったブギー/AOR流行りを全世界で加速させたさすがの傑作です。『Sunlight』期のハービー・ハンコックが最大の影響源でしょうか、1音たりとも聴き逃せません。
ブラジルの才人による2010年代AORの傑作
Ed Motta / AOR
・オススメ曲
Dondi
Simple Guy
ブラジルの大物を叔父に持つサラブレッドにして、米国のAOR、日本のシティ・ポップを心底愛するエヂ・モッタ。タイトルもズバリな2013年の話題作は、一聴してスティーリー・ダンを思わせるメロディアスでジャジーなメロウ・グルーヴ秀曲が満載。デイヴィッド・T・ウォーカーのギターも冴える”Dondi”や、これぞAORと言いたくなる”Simple Guy”など絶品です。
2010年代のジャジーなネオ・ソウル代表作
Moonchild / Voyager
・オススメ曲
Cure
Run Away
南カリフォルニア大学同窓生が組むムーンチャイルド。絶好調なアメリカ西海岸新世代ジャズ・シーンで、「静」を受け持つ彼らは、90年代ネオ・ソウルを深化させたサウンド&リズムを聴かせます。女性Vo.も含めどこまでもメロウな”Cure”や、揺れるビートで酔わせる”Run Away”など。アンビエントR&Bとも共振するメロウで奥深い音世界をご堪能ください。
「2010年代のスティーヴィ・ワンダー」の最高傑作
PJ Morton / GUMBO
・オススメ曲
Claustrophobic
How Deep Is Your Love
抜群のポップ・ソウル・センスを買われマルーン5の正式メンバーにもなっているPJ・モートン。40年の時を経て、もはや遠慮なく70年代スティーヴィ・ワンダーの作風を継承。圧倒的なソングライティングのウマさと人懐っこいソウルフルな歌声で、聴くものを必ずや魅了します。全9曲を聴けば感動すら覚える本作は文句なしの最高傑作。わたし、いち推しです。
いまのNo.1シティ・ポップ・バンドのデビューEP
Prep / FUTURES EP
・オススメ曲
Who's Got You Singing Again
Cheapest Flight
AOR的なソングライトの才と、2010年代のサウンド・メイクに特に秀でた、いまのベストなシティ・ポップ・バンドのひとつがプレップ。このロンドンっ子たちは、ネッド・ドヒニー似のヴォーカルを武器に、切ないメロディが冴えるなんとも琴線に触れる曲を聴かせます。5曲+アルファのEPながら、満足度はとても高いデビュー作。この国でこそ愛されるはず。
女性Vo.版Rhyeの、万人におすすめしたい流麗な秀作
Quadron / Avalanche
・オススメ曲
LFT
Sea Salt
ライ(Rhye)のサウンドも担う才人、ロビン・ハニバルが故郷デンマークで女性Vo.と組むクアドロン。こちらではシャーデーに加えバーシアなど80年代ファンカラティーナAORもフォロー。普遍的な、心地いいグルーヴの秀曲が続く中、ラテンのリズムがいいアクセントに。軽やかに弾む”LFT”から、メロウ極まる”Sea Salt”まで、万人におすすめします。
2010年代ならではのディスコ・ブギー名盤
Social Lovers / Enjoy The Ride
・オススメ曲
Lover's Theme
Enjoy The Ride
米西海岸の音楽マニアである男女数人が集い、いままた最もオシャレな音楽でもあるディスコ・ブギーを聞かせるソーシャル・ラヴァーズ。音色とテンポにとことんこだわった「抜け感」の強いビートは、古いようでいて新しく、いまの時代の心地よさを凝縮。シンセでジワジワと盛り上げていく技は、簡単に出来そうで、しかし実際は唯一無二。いつ聴いてもオモシロイ。
2010年代のヴィンテージ・ソウル最人気の1枚
The Jack Moves / The Jack Moves
・オススメ曲
Doublin' Down
Joyride
人種混成のふたり組、ジャック・ムーヴズ。地元ニュージャージー特産のスウィート・ソウルや、サザン・ソウルからディスコまでを、いまのドラム・サウンドなど用いてアップデイト。メイヤー・ホーソーンが火をつけたソウル・リヴァイヴァルをさらに盛り上げます。グルーヴィな”Doublin' Down”や、甘〜い”Joyride”など、ファルセットもキマった好曲揃い。
2010年代シティ・ソウルを代表する名盤
Young Gun Silver Fox / West End Coast
・オススメ曲
You Can Feel It
See Me Slumber
英国の星ママズ・ガンのVo.アンディと、米国出の奇才ミュージシャン、ショーン・リーが組むユニットの1st。80年前後の米西海岸AORを、圧倒的なソングライトとアレンジの才で誰よりもキャッチーに表現。冒頭”You Can Feel It”から100点満点の名曲が続き、全10曲があっという間です。新旧のAOR〜シティ・ソウル・ファンの皆さん、まずはこの1枚を。