アーロン・ゴールドバーグ(Aaron Goldberg)4年振りとなる最新トリオ・アルバム『At the Edge of the World』
ボストンに生まれ、1990 年代初頭にニュースクールで音楽の才能を現すと共に、ハーバードおよび、タフト大学で学位を取得するという異色のキャリアももつアーロン。しかし再び96年にはNYに戻り、本格的に活動。ジャズ・アーティストとしての登竜門的なバンドであったベティ・カーターのバンドも経ての活躍は、現在では広く知られる通りでしょう。本作はそんなアーロンが、メンターの一人であるレオン・パーカーと共に結実させた音楽の結晶。
アーマッド・ジャマルの演奏によって有名な“ポインシアナ”をオープニングにして、伝統的なジャズのフォームに則りながら、輝きをもつトリオの演奏は正に白眉。パーカーのユニークなヴォーカルやボディ・パーカッションも効果的に響かせ、プリミティヴなものを見せる瞬間もあり、ハッチャーソン/ マッコイ・タイナーといったアーティストをリスペクトしながら、スリリングなインプロを聴かせる演奏あり。一方、チャーリー・ヘイデンの『ノクチューン』のオープニングでも蘇った“En La Orilla Del Mundo”は、深い情感が滲む感動的な演奏。慈しみ深く奏でられるピアノ・ソロはアーロン・ゴールドバーグの才能も物語ってやみません。一転、ブラジル音楽へも深い造詣をもつアーロンが、朋友ギジェルモ・クラインのアレンジで斬新に聴かせる“黒いオルフェ”ではプリパード・ピアノや、パーカーのヴォイスもフィーチャー。また2つの異なるオリジナルも魅力的。M2は、アンゴラの政治的な活動家であり、ラッパーであるLuaty Bei raoに捧げた崇高な美しさと芯の強さを感じさせるアーロンのコンテンポラリーな側面があり、ラストは、ズバリ、モダンな響きをもったブルース……このオリジナルの幅も興味深いところです。
それぞれの楽曲8 曲が独自の響きをたたえつつ、作品として物語も紡いでいく作品。長く共演を重ね、演奏を深めてきたトリオならではの表現。リューベン・ロジャース/エリック・ハーランドとのレギュラー・トリオとも、オメル・アヴィタル/マーク・ミラルタとのOAMトリオとも、アリ・ジャクソン・ジュニアをドラマーにしたYes Trio とも違う味わい。現代を代表するピアニストのまぎれもないマイルストーン的作品の登場です!
日本盤仕様:日本語帯、解説付
【収録曲】
1. Poinciana (Nat Simon, Buddy Bernier)
2. Luaty (Aaron Goldberg)
3. Isn't This My Sound Around Me (Bobby Hutcherson)
4. When You Are Near (Bobby Hutcherson)
5. Effendi (Mccoy Tyner)
6. En La Orilla Del Mundo (Martin Rojas)
7. Black Orpheus (Manha De Carnaval)
(Luiz Bonfá, Antonio Maria/arranged by Guillermo Klein)
8. Tokyo Dream (Aaron Goldberg)
【メンバー】
Aaron Goldberg(p), Matt Penman(b), Leon Parker(ds, vo, perc, embodirhythm)
タグ : ジャズ・ピアノ
掲載: 2018年10月31日 18:10