Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)、約20年振りのカルテット作品『Come What May』
現代ジャズ・サックス界のイノベータ―、ジョシュア・レッドマン。ここ数年、JAMES FARMやTHE BAD PLUS、ブラッド・メルドーとのコラボレーションなど、様々な形で活動し、作品を発表している彼が、約20年振りに、アーロン・ゴールドバーグ(p)、リューベン・ロジャース(b)、グレッグ・ハッチンソン(ds)とのカルテット編成でニュー・アルバムをリリースする。
このカルテットによる作品は、2001年の『PASSAGE OF TIME』以来。この編成について、ジョシュアは最近、デンバーの新聞、Westword誌とのインタビューで以下のように語っている:「彼らは世界で一番好きなミュージシャンの何人かだ。何年も一緒に演奏し、たくさんのツアーやショウを行い、ステージの上からステージ以外の所でも一緒に過ごしてきたから、まるで同じ釜の飯を食ってきた仲間ならではの友愛や友情といったもの、互いへの純粋な愛情や理解が築き上げられているんだ。それは、つまり、自分にとっては音楽を作る上で理想的な環境だ。そこまでのレベルの信頼と共感を、音楽的な面でもパーソナルな面でも持つことができれば、心からリラックスし、自由にやることが出来るし、またそれこそが、”マジック”を起こす良い条件でもある」
アルバムからは先行トラックとして「How We Do」が公開されているが、サックスを縦横無尽に吹きまくるジョシュアの姿が目に浮かぶような、エキサイティングなトラックである。この1曲を耳にしただけでも、アルバムに対する期待が盛り上がるだろう。またジョシュアは、このカルテット編成でツアーを行うことも発表している。
互いを良く知る仲間たちとの、タイトで自由なパフォーマンスがまさしく聴きどころになる本作『COME WHAT MAY』。サックス・プレイヤー、ジョシュア・レッドマンを存分に堪能できる1枚になるであろう。
【収録曲】
01. Circle Of Life
02. I’ll Go Mine
03. Come What May
04. How We Do
05. DGAF
06. Stagger Bear
07. Vast
ボストンに生まれ、1990 年代初頭にニュースクールで音楽の才能を現すと共に、ハーバードおよび、タフト大学で学位を取得するという異色のキャリアももつアーロン。しかし再び96年にはNYに戻り、本格的に活動。ジャズ・アーティストとしての登竜門的なバンドであったベティ・カーターのバンドも経ての活躍は、現在では広く知られる通りでしょう。本作はそんなアーロンが、メンターの一人であるレオン・パーカーと共に結実させた音楽の結晶。
アーマッド・ジャマルの演奏によって有名な“ポインシアナ”をオープニングにして、伝統的なジャズのフォームに則りながら、輝きをもつトリオの演奏は正に白眉。パーカーのユニークなヴォーカルやボディ・パーカッションも効果的に響かせ、プリミティヴなものを見せる瞬間もあり、ハッチャーソン/ マッコイ・タイナーといったアーティストをリスペクトしながら、スリリングなインプロを聴かせる演奏あり。一方、チャーリー・ヘイデンの『ノクチューン』のオープニングでも蘇った“En La Orilla Del Mundo”は、深い情感が滲む感動的な演奏。慈しみ深く奏でられるピアノ・ソロはアーロン・ゴールドバーグの才能も物語ってやみません。一転、ブラジル音楽へも深い造詣をもつアーロンが、朋友ギジェルモ・クラインのアレンジで斬新に聴かせる“黒いオルフェ”ではプリパード・ピアノや、パーカーのヴォイスもフィーチャー。また2つの異なるオリジナルも魅力的。M2は、アンゴラの政治的な活動家であり、ラッパーであるLuaty Bei raoに捧げた崇高な美しさと芯の強さを感じさせるアーロンのコンテンポラリーな側面があり、ラストは、ズバリ、モダンな響きをもったブルース……このオリジナルの幅も興味深いところです。
それぞれの楽曲8 曲が独自の響きをたたえつつ、作品として物語も紡いでいく作品。長く共演を重ね、演奏を深めてきたトリオならではの表現。リューベン・ロジャース/エリック・ハーランドとのレギュラー・トリオとも、オメル・アヴィタル/マーク・ミラルタとのOAMトリオとも、アリ・ジャクソン・ジュニアをドラマーにしたYes Trio とも違う味わい。現代を代表するピアニストのまぎれもないマイルストーン的作品の登場です!
日本盤仕様:日本語帯、解説付
掲載: 2019年02月15日 10:17