読売新聞の名物コラム「時の余白に」掲載!知られざる名ピアニストの唯一のCD『松岡三恵リサイタル』
松岡三恵(1937~2015)という知られざる名ピアニストのCDが脚光を浴びています。
松岡三恵は名古屋市出身。幼い頃からピアノを学び、小学校低学年のときにはJOCK(NHK名古屋)で演奏を披露するほどとなりました。ところが空襲で自宅が全焼し、自分のピアノを持つことができなくなりましたが、放課後に学校のピアノで練習を継続しました。1952年、15歳のとき桐朋学園女子高校音楽科の1期生として入学。1954年、17歳で自分のピアノを持たないまま第23回日本音楽コンクールに出場して第1位/特賞を獲得しました。ちなみに、この時の第2位は東京藝術大学在学中だった現在のフジコ・ヘミング(当時は大月フジ子)でした。
このコンクールに協賛していたヤマハの社員、石井宏氏は彼女の日本人離れした才能に驚嘆するとともに、彼女が自分のピアノを持っていないことを聞いて驚き、川上源一社長に直訴。川上社長は彼女にアップライトピアノを無償貸与するよう石井氏に命じました。
その後、フランス政府の給費留学生試験に合格し、パリ国立高等音楽院でマルセル・シャンピ(1891~1980)に就いて3年間学び、一等賞(プルミエ・プリ)を得て卒業。
マルセル・シャンピはリスト、ショパンの孫弟子にあたる名手。
息子は映画監督のイヴ・シャンピ。イヴ・シャンピは一時、
女優の岸惠子と結婚していたことでも知られています。
帰国後はNHK交響楽団や日本フィルと共演するなど活躍しました。1963年、石井宏氏(のちに音楽評論家に転身)と結婚すると、子育てと家庭を最優先し、徐々にステージから遠ざかり、ピアノ教育に情熱を注ぐようになりました。2015年6月、78歳で亡くなっています。
この録音は、「先生の録音はないのですか」という愛弟子の一言で、石井氏が彼女の遺品の中から探し出したテープをよみがえらせたものです。1986年11月末、東京・内幸町のイイノホールで開いたリサイタルの1週間後、スタジオを借りてリサイタルで演奏した作品を録音した音源をCD化しています。
このCDは2016年7月に発売され、レコード芸術誌で特選盤に輝くなど一部のクラシック愛好家の間で話題となりましたが、2019年2月23日、読売新聞のコラム『[時の余白に]気骨の人、魂のピアニスト…編集委員 芥川喜好』に取り上げられ、広く知られることとなりました。
現在、レーベルで在庫切れとなり、再生産を計画していますが、小規模なレーベルのためかなり時間がかかっているとのことです。3月5日時点で入荷予定日は決まっておりません(この状況はどのCD店でも同じです)。ご注文いただいたお客様には、たいへん申し訳ございませんが、今しばらくお待ちいただければ幸いです。
(タワーレコード)
【曲目】
1. シューマン:クライスレリアーナ Op.16
2. ショパン:幻想曲 Op.49
3. ショパン:バラード第3番 Op.47
4. リスト:ハンガリー狂詩曲第12番
【演奏】
松岡三恵(ピアノ)
【録音】
1986年11月28日
カテゴリ : ニュース
掲載: 2019年03月05日 00:00