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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.170

ユタ・ヒップ『ザ・ユタ・ヒップ・クインテット』(1954)

YH

ユタ・ヒップ(p)
エミール・マンゲルスドルフ(as)
ヨキ・フロイント(ts)
ハンス・クレッセ(b)
カール・ザンナー(ds)

1954年4月24日、ドイツ、フランクフルトにて録音

曲目:
01.クレオパトラ
02.ドント・ウォーリー・バウト・ミー
03.ゴースト・オブ・ア・チャンス
04.モン・プチ
05.ホワッツ・ニュー
06.ブルー・スカイズ
07.ローラ
08.ヴァリエーションズ

【アルバム紹介】
1.ブルーノート初期のドイツ人女性ピアニストの秀逸作
2.スタンダード中心の選曲の中、オリジナル曲も2曲収録
3.欧州の名プレイヤーをフロントにしたクインテット編成

ブルーノート・レーベルがモダン・ジャズ期にリリースした数々の名盤はほぼ男性プレイヤーによる演奏ですが、初期の頃には一人だけ女性プレイヤーのアルバムもリリースしていました。
ドイツのピアニスト、ユタ・ヒップがその人でした。

1925年にライプツィヒで生まれた彼女は9歳からピアノに親しみ、50年代に本国ドイツで音楽活動を始めました。やがて音楽評論家のレナード・フェザーの手引きで、1955年にアメリカに移住し、活動の拠点を移しました。そんな少し前の1954年にドイツでレコーディングされたセッション音源をブルーノートからリリースしたのが本作です。

取り上げた楽曲はスタンダードが中心となっていますが、オリジナル曲はメンバー(1曲目)や自身のもの(4曲目)が2曲収録されています。また、8曲目はスタンダード曲“ティー・フォー・トゥー”のコード進行を使用したインプロヴィゼーション・ナンバーのようです。
参加メンバーはヨーロッパのジャズ・シーンで名を馳せた名プレイヤーであるアルト・サックスのエミール・マンゲルスドルフ(トロンボーンのアルバート・マンゲルスドルフの兄)や、テナー・サックスのヨキ・フロイントらによるクインテット編成になっています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
ヨーロピアン・テイストなビバップ・ナンバー“クレオパトラ”。

ブルーノート・レーベルのアルバムはイメージとしてブルージー、アーシーといった形容が似合うものが多いですが、本作はドイツ録音、全員ドイツのジャズ・ミュージシャンゆえ、ヨーロピアン・ジャズの空気感が漂う1枚です。
1曲目のこの曲はテナー・サックスのヨキ・フロイントによるオリジナル曲になりますが、アメリカのウェストコースト系ジャズのサウンドに似たライト感覚あふれるビバップ・ナンバーでスムースなフレージングが続く軽快なソロが心地よいナンバーです。
この他、ユタ・ヒップのピアノ・トリオ編成の快演で聴かせるスタンダード2曲、“ドント・ウォーリー・バウト・ミー”、“ホワッツ・ニュー”は本人のプレイを存分に堪能できますが、クインテットでのアプローチを知る1曲目をあえて選んでみました。
さて、モダン・ジャズ期のブルーノート初にして唯一の女性プレイヤー、ユタ・ヒップは本作のあと、アメリカでのレコーディングによるアルバムをブルーノートから3枚リリースしますが、1956年には早々に引退し、その後音楽活動に関わることなく、2003年、ニューヨークで78歳の生涯を閉じました。

国内盤CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2022年03月18日 10:00