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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.270

ユタ・ヒップ『ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ』(1957)

YH

ユタ・ヒップ(p)
ズート・シムズ(ts)
ジェリー・ロイド(tp)
アーメド・アブダル・マリク(b)
エド・シグペン(ds)

1956年7月28日、ニュージャージーにて録音

曲目(LP初発売時):
01.ジャスト・ブルース
02.コートにすみれを
03.ダウン・ホーム
04.オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ
05.ウィー・ドット
06.トゥー・クロース・フォー・コンフォート

【アルバム紹介】
1.ドイツ出身の女流ピアニスト、ユタ・ヒップのブルーノート・レーベルでのリーダー・アルバム
2.名テナーマンのズート・シムズをむかえたラスト・レコーディング作
3.メンバーのオリジナルあり、スタンダードありの充実した楽曲群

クインテット編成の名盤、今回はドイツ出身の女流ピアニスト、ユタ・ヒップのブルーノート・レーベルでのリーダー・アルバムを取り上げます。

ユタ・ヒップはドイツのライプツィヒに生まれ、50年代に数枚のレコーディングを残しただけの幻の名ピアニストですが、本作は中でも、名テナーマンのズート・シムズをむかえたクインテット編成で聴かせる逸品です。ハードバップ・テイストの強いブルーノート・レーベルの中にあって、どこかウエストコースト・ジャズを思わせるライト感覚を持ち合わせたアルバムでもあります。また本作はディスコグラフィー上ではユタ・ヒップの最後のレコーディング作にあたります。

メンバーはテナー・サックスにズート・シムズの他、トランペットにジェリー・ロイド、ベースにアーメド・アブダル・マリク、そしてドラムスには名手エド・シグペンが参加しています。
楽曲は、1曲目はズート・シムズによるオリジナル・ブルース、2曲目はスタンダードの名バラード、3曲目はトランペットのジェリー・ロイドのオリジナル、4曲目はスタンダード、5曲目はJ.J.ジョンソンとレオ・パーカーのオリジナル、そして6曲目はスタンダードという構成になっています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
名スタンダード・バラード“コートにすみれを”。

この曲はスタンダードの名バラードとして名高い1曲ですが、作曲をしたのはシンガーでありピアニストでもあるマット・デニスです。フランク・シナトラやビリー・ホリディの歌唱が有名で、テナー・サックスの名演として知られているのはジョン・コルトレーンの演奏したものと、本作のズート・シムズのプレイが抜きんでた演奏といえるでしょう。
リリカルなピアノのイントロダクションに導かれ、ズート・シムズの情感をたたえたテナー・サックスがテーマを奏でてゆきます。テーマ提示後は、ユタ・ヒップのピアノ・ソロに移りますが、エレガントなアプローチで見事なフレーズを繰り出します。ソロが落ち着くと、再びズート・シムズのテナーが戻ってきて、ロマンティシズムに満ちたプレイを披露します。そして曲もエンディングに近くなったところにきて、ようやくジェリー・ロイドのトランペットが現れ、そのままストレートにエンディングをむかえます。
ユタ・ヒップは本作のレコーディングの後、一切の演奏活動から身を引き、その理由は性格が内気なせいであったとか、舞台恐怖症であったとも言われています。そして、音楽以前に興味のあった絵画へと志向が移ってゆきました。
残されたレコーディングを聴く限り、才能あふれるピアニストであったのがわかりますが、60年代になっても演奏活動を続けていたら、どんなアルバムを残していただろうと思わせられるピアニストでもあります。

国内盤SHM-CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2024年04月05日 10:00