WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.176
バリー・ハリス『ブレイキング・イット・アップ』(1958)
バリー・ハリス(p)
ウィリアム・オースティン(b)
フランク・ガント(ds)
1958年7月31日、シカゴ録音
曲目:
01.オール・ザ・シングス・ユー・アー
02.オーニソロジー
03.ブルージー
04.パスポート
05.アレンズ・アレイ
06.エンブレイサブル・ユー
07.SRO
08.ストレンジャー・イン・パラダイス
【アルバム紹介】
1.ビバップ系ピアニスト、バリー・ハリスの28歳初リーダー作
2.バド・パウエル直系のスタイルながらも極めてオーソドックスな解釈の演奏が魅力
3.スタンダード、パーカーのナンバー、そして自身のオリジナルによる楽曲構成
今回はシカゴのアーゴ・レーベルのピアノ・トリオ名盤のひとつであるバリー・ハリスの初リーダー作になります。
バリー・ハリスはバド・パウエル直系のビバップ・スタイルのピアノを聴かせるプレイヤーで、その正統派な演奏は数多くのミュージシャンと共演する機会にも恵まれました。また一方では教育者として知られ、多くの後進育成にも力を注いてきたことでも知られています。
本作のレコーディングの時、バリー・ハリスは28歳、そのビバップ・スタイルのピアノをトリオ編成で聴かせる逸品ですが、バド・パウエルのようなアクの強いプレイを前面に出すわけでもなく、極めてオーソドックスな解釈の演奏がその魅力といえる内容です。
ベースのウィリアム・オースティンとドラムスのフランク・ガントはマルチ・リード奏者のユセフ・ラティーフのコンボや、本作と同メンバーでのトリオでサックス奏者のソニー・スティットとの共演作などもある面々です。楽曲はスタンダード曲やチャーリー・パーカーのナンバーなどに加え、バリー・ハリス自身のオリジナル(3,4,7曲目)で構成されています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
情感溢れる名演“オール・ザ・シングス・ユー・アー”。
スタンダード名曲として知られる“オール・ザ・シングス・ユー・アー”は転調の多い展開が特徴の曲ですが、それがかえって曲にどこか心情の変化のような効果を与え、ロマンティックな雰囲気を感じさせます。
この曲は数々のジャズ・ミュージシャンに取り上げられてきており、テンポもそのミュージシャンの解釈で様々なところがありますが、バリー・ハリスはゆったりとしたリズムの上を情感豊かにリリシズムをたたえながらテーマを演奏してゆき、ソロに入ると歌心満点のフレージングで、曲のもつ美の世界を表現しています。
バリー・ハリスは生涯現役を貫いたジャズ・ピアニストですが、2021年12月8日に新型コロナウイルスによる合併症で惜しくもこの世を去ってしまいました。91歳でした。
こういった“いぶし銀”タイプの名ピアニストはどんなシチュエーションで聴いても、最高のジャズ・フィーリングを感じさせる演奏であるところが人気の秘密です。本作を聴けばそれが納得できるでしょう。
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タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2022年04月29日 10:00