マイリス・ド・ヴィルトレ&クララ・イザンベール~ソフィー・ガーユとフランス第一帝政期のハープ伴奏歌曲
古楽器ハープの音色から紡ぎ出される、儚き時代の繊細な音楽の味わい
近年フランスでバロック作品を中心に歌劇シーンを賑わせているマイリス・ド・ヴィルトレが、古楽器ハープの弾き手クララ・イザンベールと提案するプログラムのテーマは第一帝政期、つまりナポレオンの時代。
18世紀末にマリー=アントワネットが女性を中心とした文化談義の場を華やがせ、その中心でハープという楽器の立場を大きく向上させた後、ナポレオンがフランス皇帝となった時代にもハープは「太古から存在する楽器」として古代帝国への憧憬をつのらせる文化人たちを魅了。楽器製作者の息子ナーデルマンや名手ボクサら数多くの俊才たちの妙技が人々を虜にするとともに、繊細な恋歌のための伴奏楽器としてもハープは大きな人気を獲得しました。ヴィルトレとイザンベールは革命期から10代で作品を発表しはじめた早熟の女性作曲家ソフィー・ガーユの作品を中心に、この曲種にすぐれた手腕を発揮したジャダン兄や「愛の喜び」で知られるマルティーニ、ハープ奏者たちや歿後間もなく国際的名声を博したモーツァルトなど、19世紀初頭のフランスで動乱に戸惑う多くの人々の心を慰めた調べの数々を入念に選び、じっくり味わわせてくれます。
使用されているハープも当時のもの。ケルビーニの救出オペラやベートーヴェンの交響曲の影で歴史に埋もれていったままにしておくには惜しすぎる、繊細そのものの音楽世界をじっくりご堪能ください。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
1. ルイ=エマニュエル・ジャダン(1768-1853):コラス、コラス、どうか誠実に慕って
2. ソフィー・ガーユ(1775-1819):わかっている、若い頃には(第1・2連)
3. フランソワ=ジョゼフ・ナーデルマン(1781-1835):西風がやさしく吹き寄せてくれようと*
4. ガーユ: それは彼女とは違う
5. ジャン=ポール・エジード・マルティーニ(1741-1816)/ナーデルマン編: 愛の喜び*
6. ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791):クロエに K. 524
7. ガーユ: 期待
8. F-J. ナーデルマン: ソフィー・ガーユの「おお漁師よ」の調べによるハープのための幻想曲*
9. ガーユ: 悪魔の円舞
10. ガーユ: ミラノの司祭の歌、別名「間に合わせの食卓」
11. L-E. ジャダン: ウェルテルの死
12. ジャン=ルイ・アダン(1758-1848): ウェルテルの墓を訪れたシャルロット(第1・2連)
13. ガーユ: もはや死ぬほかない
14. フランソワ=アドリアン・ボワエルデュー(1775-1834):思い出*
15. J-L. アダン: 後悔
16. モーツァルト: ラウラに寄せる夕べの思い K. 523
17. ガーユ: 夕暮れのひととき
18. モーツァルト: 鳥たちよ、年ごとに K. 307
19. ニコラ=シャルル・ボクサ(1789-1856):モーツァルトの「わたしの心は溜息をつく」によるハープのための変奏曲*
20. ガーユ: わたしの心の機微がわかる人は
21. J-P-E. マルティーニ: 涙を流す人
22. ガーユ: 愛しきフロンタン
*ハープ独奏
【演奏】
マイリス・ド・ヴィルトレ(ソプラノ)
クララ・イザンベール(ハープ)
使用楽器: パリのジョルジュ・ブレシェール1800~20年頃製作によるオリジナル楽器(A=430Hz)
【録音】
2021年10月5-8日、ブロス教会(フランス中東部ブルゴーニュ地方)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2022年09月07日 00:00