デラン&レ・ヌーヴォー・キャラクテール~アンリ・デマレ:歌劇“シルセ”(2枚組)
リュリ亡き後の大人気作曲家の真価に迫る!フランス古楽シーン最前線の快挙
太陽王ルイ14世に愛された王室音楽総監督リュリが1687年に不慮の事故で世を去った後、ラモーが1733年に《イッポリトとアリシ》で衝撃のデビューを果たすまでの約半世紀、フランス・オペラの世界は決して不毛だったわけではありません。むしろその逆で、マラン・マレやカンプラなどが注目すべき傑作を折々に書く一方、他にも注目すべき作曲家が名を馳せていました。
中でもデマレは、礼拝音楽で台頭した同世代のド・ラランドと並ぶ実力で早くから注目され、1699年に恋人の父から糾弾されフランスを追われなければ、1歳違いのカンプラと並ぶ名声を博したかもしれません。実際、国を追われた後もスペイン王室やロレーヌ公の宮廷で重用されていますが、オペラの全曲録音がなされるようになったのはようやく21世紀に入ってからのこと。
まだフランスにいた1694年の《シルセ》はリュリ風の抒情悲劇の作法を完璧に使いこなした傑作で、部分録音で垣間見えていた作品像の全貌に触れられる全曲録音は待望というほかありません。
フランス宮廷流の大小ヴィオラ3パートを含む5部編成の弦楽に撥弦・擦弦・鍵盤からなる通奏低音勢が多彩な音色を使い分け、各一対のトラヴェルソとバスーン(リコーダー持替)、オーボエに打楽器も加わる総勢33人の器楽勢の傍ら、合唱も22人と充実した編成がフランス宮廷の豪奢な音楽生活を彷彿とさせます。
ジャンス、ヴィダルといった有名歌手たちが深い情感表現に満ちたデマレの旋律を鮮やかに歌い上げ、俊才続々の器楽陣営を率いる才人デランの指揮も実に精妙。今後デマレのさらなる再発見に期待が募る注目リリースです。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
アンリ・デマレ(1661-1741):《シルセ》~序幕付き全5幕の音楽悲劇(1694年パリにて初演)
台本: ルイーズ=ジュヌヴィエーヴ・ジヨ・ド・サントンジュ(1650-1718)
【演奏】
シルセ…ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)
ユリス…マティアス・ヴィダル(テノール)
エオリー…カロリーヌ・ミュテル(ソプラノ)
ポリート、ファンタス…ロマン・ボクレール(バリトン)
エルフェノール…ニコラ・クルジャル(バス)
愛の神アムール(アモーレ)…セシル・グランジェ(ソプラノ)
ニンフ…マリー・ピコー(ソプラノ)
商業神メルキュール(メルクリウス)…ピエール・デレ(テノール)
幸運な恋人、ギリシャ人、夢の精…マチュー・モンターニュ(オートコントル〔高音テノール〕)
水の神、神官の長、悪夢の神フェベトル(ポベトル)…アルノー・リシャール(バス=バリトン)
レ・ヌーヴォー・キャラクテール(声楽&古楽器オーケストラ)
コンサートマスター…クリストフ・ロベール(ヴァイオリン)
セバスティアン・デラン(指揮)
【録音】
2022年1月10-12日、ヴェルサイユ宮殿王室歌劇場
収録時間: 155分
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年02月16日 00:00