ドラフォルジュ&アンサンブル・イル・カラヴァッジョ~『フランス・バロック声楽作品に描かれる女性たち』
本場ヴェルサイユ発。イタリア風味のフランス音楽を通じて描かれる女性たち
フランスの古楽シーン最前線をゆく若き俊才たちが、解像度の高いフランス・バロック解釈を聴かせてくれる声楽作品集。フランス語の詩や台本の持ち味を最大限生かしながら、そこにイタリア由来の音楽様式を接ぎ木して生まれたルイ14世時代のフランス宮廷音楽様式。そうしたルーツをふまえつつ、イタリア語の作品も交えてその魅力を探るプログラムが興味深く起伏に富んでおり、長めのカンタート(フランス式カンタータ)でも短い歌曲でも、演奏は深い味わいに満ちています。
歌い手は、ル・ポエム・アルモニークやレ・クリ・ド・パリなど一流アンサンブルに加わり着実に実績を上げてきたヴィクトワール・ビュネル、レザ―ル・フロリサンやピグマリオン、カペラ・メディテラネアなどの注目公演で存在感を発揮してきたアンナ・レイノルト、古楽に縛られない歌劇界での活躍も目立つギレム・ヴォルムスの3人。
さまざまなアンサンブルで活躍する古楽器奏者たちが集うアンサンブル・イル・カラヴァッジョも古楽器それぞれの音色をよく生かして声を支え、団体名の由来となった画家の作風にも通じるコントラスト鮮やかな解釈で耳を惹きつけてやみません。
選曲のテーマは「女主人公たち」。運命に翻弄されながら自らの人生を選び取ってゆく伝説上の女性たちから酒飲み男の恋慕の歌まで、描き出される女性像の多彩さも魅力の一つ。作曲家たちそれぞれの個性がよく際立つ選曲にもなっており、フランス古楽を聴き深めてゆく上でも参考になる学びの多い1枚と言ってよいでしょう。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
1. ジャン=バティスト・モラン(1677-1745):Ouverture (L’Himen et l’Amour) 序曲(カンタート「結婚の神と恋の神」序曲より序奏部分)
2-8. ルイ・アントワーヌ・ドルネル(1680-1765):Le tombeau de Clorinde, Cantate à une voix et symphonie 独唱と合奏のためのカンタート「クロリンダの墓標」
9. ニコラ・ラコ・ド・グランヴァル(1676-1753):J’ai languy sous vos dures lois (Airs sérieux et à boire) あなたの容赦ない掟の数々により(『真面目な歌、酒の歌』〔1709〕より)
10-15. ジャン=バティスト・リュリ(632-1687):Plainte d’Armide (Ballet des amours déguisés) アルミードの嘆き(『姿を偽った恋人たちの舞踏劇』〔1664〕より)
16-19. エリザベート・ジャケ・ド・ラ・ゲル(1665-1729):Céphale et Procris 抒情悲劇《セファルとプロクリス》より
16. Air des Athéniens アテネの人々のエール
17. Lieux écratés (air de Procris) プロクリスのエール「人里を離れて」
18. Les Rossignols (Air de l’Aurore) 暁の女神のエール「夜啼鶯たちは、夜明けとともに」
19. Bourrée ブーレ
20. 作者不詳:Une fillette de quinze ans (chanson béarnaise) 齢15の少女がひとり(南仏ベアルン地方の伝承歌)
21-28. ミシェル・ピニョレ・ド・モンテクレール(1667-1737):La morte di Lucretia, Cantate à une voix et Symphonie 独唱と合奏のためのカンタート「ルクレツィアの死」
29. 作者不詳:Nos esprits libres et contents(Ballet de la Reine) 縛られず満たされた私たちの魂は(『女王の舞踏劇』〔1609〕より)
【演奏】
ヴィクトワール・ビュネル(メゾ・ソプラノ)
アンナ・レイノルト(メゾ・ソプラノ)
ギレム・ヴォルムス(バス=バリトン)
アンサンブル・イル・カラヴァッジョ(古楽器使用)
ロクサナ・ラステガル、ピエール=エリック・ニミロヴィチ(ヴァイオリン)
ロナルド・マルティン・アロンソ(バス・ド・ヴィオール〔ヴィオラ・ダ・ガンバ〕)
バンジャマン・ナルヴェ(テオルボ、バロックギター)
カミーユ・ドラフォルジュ(クラヴサン〔チェンバロ〕、指揮)
【録音】
2021年12月17-19日 ヴェルサイユ宮殿「マレンゴの間」
収録時間: 58分
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年04月21日 00:00